評     価  

 
       
File No. 1162  
       
製作年 / 公開日   2007年 / 2010年02月13日  
       
製  作  国   イタリア / フランス / スペイン / ド イ ツ  
       
監      督   アンジェロ・ロンゴーニ  
       
上 映 時 間   133分  
       
公開時コピー   この身は愛するために、
命は描くために。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   アレッシオ・ボーニ [as ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ]
エレナ・ソフィア・リッチ [as コンスタンツァ・コロンナ侯爵婦人]
ジョルディ・モリャ [as デル・モンテ枢機卿]
パオロ・ブリグリア [as マリオ・ミンニーティ]
ベンヤミン・サドラー
クレール・ケーム
マリア・エレナ・ヴァンドーネ
マウリツィオ・ドナドーニ
シモーネ・コロンバリ
セイラ・フェルバーバウム
ルベン・リジーロ
 
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あ ら す じ    ミラノで絵の修行に励んでいたカラヴァッジョは、芸術の都ローマで画を描くために幼い頃から恋い焦がれてきた美しいコスタンツァ・コロンナ公爵夫人の援助を受けて、憧れの都へと訪れる。そしてそこでカラヴァッジョは、生涯の友というべき画家のマリオ・ミンニーティと知り合い、彼の紹介でダルピーノの工房に入った。そして、夜の街に繰り出したカラヴァッジョは、美しい高級娼婦のフィリデに目を奪われた。しかし、娼婦の元締めは街の権力者ラヌッチョ・トマッソーニで、到底カラヴァッジョの手の届く女ではなかった。
 食べるものにも困る生活を続けていたカラヴァッジョだったが、やがて救いの手が差し伸べられた。彼の評判を聞きつけたデル・モンテ枢機卿が宮殿の一室を提供し、生活を援助してくれることとなったのだ。そして、かねてから想いを寄せていたのフィリデが忘れられず、彼女をモデルにする権利を賭けてラヌッチョにテニスでの対決を挑み、見事勝ちを収めた。長い間恋い焦がれたフィリデとの暮らしだったが、娼婦として生きざるを得ない彼女を理解できないカラヴァッジョとフィリデとの間にやがて亀裂が生じ、彼女はカラヴァッジョのもとを去ってしまう。
 いつしか教会内はスペイン派が多勢を占め、フランス派のデル・モンテ枢機卿はもはやカラヴァッジョを擁護する力を失っており、カラヴァッジョは宮殿を辞して街の娘レナと暮らすようになった。初めて心の安らぎを得たカラヴァッジョだったが、レナとの平穏な生活も長く続くことはなかった。
 デル・モンテ枢機卿に依頼されて新教皇に献上する画『ロレートの聖母』のモデルに庶民のレナを使ったことで、カラヴァッジョは教会の非難にサラされることとなる。しかも、何者かにレナが暴力を受けて傷を負ったことに逆上したカラヴァッジョは、ラヌッチョの仕業だと決めつけて決闘を申し込み、挙げ句の果てに彼を刺し殺してしまう。重傷を負いコロンナ公爵夫人邸に運び込まれたカラヴァッジョに届けられたのは、非情な死刑宣告だった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    どうもこの手の伝記的な作品はあまり得意な方ではなく、しかも主人公がこの作品で初めて存在を知ったカラヴァッジョという画家であるという悪条件が重なり、仕事帰りの身にはかなりの苦行を強いられる羽目になった。途中で意識がおぼろげになりながらも何とか乗り切っての感想はと言えば、主人公カラヴァッジョの人生が画家であることの苦悩、つまりは自らの画に対する行き詰まりや画が描けなくなるような苦悩よりも、生きること自体に対する苦悩に満ちた人生だったということだ。
 カラヴァッジョを演じたアレッシオ・ボーニはもちろん初めてお目にかかる俳優なのだが、ヒュー・ジャックマンとロバート・ダウニー・Jrを足して2で割ったようなイケメンで、そのことが少なからず私の意識を保つ助けになっていた気がする。もしも主役がハビエル・バルデムだったりしたら、間違いなく私は意識を失っていただろう(笑)。  作品中で観たカラヴァッジョの描く写実的な画は、抽象画が苦手な私にとっては非常に受け容れやすい画風だった。そして、彼の作品が多くの後進の画家たちに少なからず影響を与えている点を考えると、「天才画家」という称号もどうやら過大評価ではないようで、これほどの画家を今まで全く知らなかったことの方が不思議に思える。しかしながら、中世に生まれた数多くの天才たちの例に漏れず、カラヴァッジョもまた生まれた時期が早すぎたようだ。ローマ教会が絶対的な権力を誇る時代に、自らが気に入ったモデルならば庶民であろうが娼婦であろうが関係なく描いた彼の画が、教会に受け容れられるとは考えられない。もともと誰に媚びることもなく自らの率直な意見を口にしたカラヴァッジョのこと、己の真髄とも言うべき絵画に関しては妥協はあり得なかっただろうと容易に想像できる。天才ゆえに夭折したのか、あるいは夭折した結果天才と呼ばれるに至ったのか、いずれにしても画に関する希有の才能の持ち主だったことだけは間違いない。