評     価  

 
       
File No. 1165  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2010年02月27日  
       
製  作  国   韓  国  
       
監      督   パク・チャヌク  
       
上 映 時 間   133分  
       
公開時コピー  
この愛、赦し給え
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ソン・ガンホ [as サンヒョン]
キム・オクビン [as テジュ]
シン・ハギュン [as ガンウ]
キム・ヘスク [as ラ夫人]
オ・ダルス [as ヨンドゥ]
パク・イナン [as 車椅子の老紳士]
ソン・ヨンチャン [as スンデ]
 
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あ ら す じ    敬虔なカトリックの神父サンヒョンは、病院で重症患者達が亡くなっていくのを看取ることに疲れ果て、自分の祈りが神に届かないという無力さに打ちひしがれていた。そんなサンヒョンは、自分の身が少しでも人助けに役立てばと思い、感染者を確実に死に至らしめるという謎のエマニュエル・ウィルスを研究するアフリカの研究所で行われている人体実験にに自らの体を提供した。
 実験が開始されて間もなくサンヒョンは発病するが、正体不明の輸血を受けて奇跡的にウィルスを克服した。帰国したサンヒョンは奇跡の生還を果たした神父として人々から崇められる一方で、他人には言えない秘密を抱えて苦しんでいた。その秘密とは、エマニュエル・ウィルスと輸血された血液の影響で、彼の体は人間の血液を欲するヴァンパイアと化してしまったことだった。
 サンヒョンが祈ると病が治る、そんな風評を聞きつけてひとりの女性が彼を訪ねてくる。彼女はサンヒョンの幼なじみであるガンウの母ラ夫人で、癌に冒されたガンウを助けて欲しいとサンヒョンに懇願するのだった。サンヒョンはラ夫人の依頼に応えて祈りを捧げると、信じられないことにガンウの癌が消えてしまった。そして、それがきっかけでサンヒョンはガンウ宅に招かれるようになり、ガンウの美しい妻テジュと運命の出会いを迎えるのだった。
 あどけなさの中に蠱惑的な魅力を秘めたテジュの前に、神父として自らを厳しく律する理性はまったくの無力で、サンヒョンはたちどころにデジュに心を奪われてしまう。一方のデジュもまた、心ない夫のガンウと未だに彼女を使用人程度に扱うラ夫人に抑圧された日常から逃れたい気持ちも手伝って、強くサンヒョンに惹かれていく。互いに相手を強く求める2人はやがて体を交えるのだが、そこから2人は人の道を踏み外して悲しい結末へと坂道を転げるように落ちていくのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    何なんだろうね、これは・・・・・。望まずにヴァンパイアになった男(まぁ、フツー望んでヴァンパイアになる人間はいないだろうが^-^;)が、愛する人をもヴァンパイアにせざるを得なくなった悲劇なのか、それとも喜劇というべきなのか?全編がキム・ギドク作品のような重苦しい雰囲気に覆われる中、ソン・ガンホの演技力はさすがで、彼の持っている根本的な資質というかキャラクターが、幸か不幸か悲劇をも喜劇に変えてしまうほどに強い影響力を持っていて、行き詰まるような雰囲気の救いにはなっている。
 この作品を観てまず気づいたのは、ソン・ガンホってこんなに細かったかな?ということ。その点に関しては、この役柄に臨むにあたって体重を10kgも落としたとのこと。今や彼なしでは韓国映画は語れないと言っても過言ではないという評価も頷ける。そして、相手役のテジュを演じたキム・オクビンの美しさが光っている。なんでも、韓国のインターネット美人投票で優勝して芸能界入りしたという彼女の美貌は、若い頃の浅野温子に通じるものがある。彼女が演じるテジュは子供っぽい可愛らしさと妖艶さ、女神と魔女というミステリアスな二面性を持っていて、この作品の最大の注目すべき点だと言える。その彼女が惜しみなく全裸を披露する濡れ場が何度もあるこの作品は、日本ではR-15指定の年齢制限が設けられているが、海外ではR-18指定らしい。この作品を観ることができる日本の高校生は幸せ・・・・・なのか?(笑)
 この作品でのソン・ガンホ扮するヴァンパイア神父のサンヒョンは、人を殺して血を奪うようなことは決してしない。けれども、血を摂取しなければやがて体中が水疱だらけになり、やがては吐血して死んでしまう。十字架に弱いかどうかは不明だが、太陽光には弱い。そんなヴァンパイアが生まれたきっかけは、エマニュエルという名の正体不明のウィルスの人体実験で、彼がなぜこのウィルスの実験に我が身を提供しようと思ったのか、その動機は今ひとつハッキリしない。だが、結果的に人体実験から生還した代償かヴァンパイアと化してしまい、そこから神父としての理性とヴァンパイアとしての本能の葛藤が始まる。生きていくために人間の血液が必要な彼は、自らが存在すること自体が罪なのであり、かといって教義では自殺という行為は他人の生命を奪うよりも重い罪だとされている。そして、愛するテジュを死なせないために自分と同じヴァンパイアにせざるを得なくなり、さらに彼の苦悩は深まるのだ。
 その苦悩の末に彼が向かう先はおおよそ見当がついてしまうのだが、このラストシーンがちょっとコミカルになっている。なんとしてもサンヒョンの意図から逃れたいテジュと、そうはさせまいとするサンヒョンのやり取りには、この作品を通じて初めて観客の笑い声が場内に巻き起こった。とは言っても、やはり悲しく切ない結末であることには間違いない。