評     価  

 
       
File No. 1167  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2010年02月27日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ジョン・リー・ハンコック  
       
上 映 時 間   128分  
       
公開時コピー   あなたの人生史上、最高の実話  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   サンドラ・ブロック [as リー・アン・テューイ]
ティム・マッグロウ [as ショーン・テューイ]
クィントン・アーロン [as マイケル・オアー]
キャシー・ベイツ [as スー夫人]
リリー・コリンズ [as コリンズ・テューイ]
ジェイ・ヘッド [as S・J・テューイ]
レイ・マッキノン [as バート・コットン]
キム・ディケンズ
キャサリン・ダイアー
アンディ・スタール
トム・ノウィッキ
 
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あ ら す じ    実業家の夫ショーン・テューイに娘のコリンズ、そして息子S・Jの4人で幸せに暮らす裕福な白人家庭の夫人リー・アン・テューイは、ある凍てつくような真冬の夜にひとり寂しくTシャツと短パンで歩いている巨漢の黒人少年に目を止め、声をかける。彼の名はマイケル・オアー、父親の顔も知らずに育ち、母親とは引き離され、住む場所や学校も転々とする劣悪な境遇に置かれていた。マイケルを放っておくこおができなかったリー・アンは、家族4人にとっては広すぎる豪邸へ彼を招き入れることにした。
 最初は憐れみけでマイケルを保護したリー・アンとその家族だったが、やがて彼らは逆にマイケルからすべてに感謝しながら生きることを教えられていく。そして、それまでは今のソファで寝ていたマイケルに部屋とベッドを与え学校に通わせたばかりか、彼の後見人となって、改めて家族の一員としてマイケルを迎え入れるのだった。
 最初はマイケルを警戒していたコリンズやS・Jがやがてマイケルに心を開きなついていったのは、マイケルの仲間を危険から守る保護本能に優れた心ゆえで、学校の成績は悪い彼も保護本能だけは極めて高い評価を受けていた。リー・アンはそんな彼にアメリカン・フットボールの才能があることに気づく。アメフトを始めたマイケルは、最初こそその優し過ぎる性格のために才能を発揮することができなかったが、やがてその隠れた素質が開花した彼はたちまち周囲から注目される選手に成長していった。
 マイケルの元へ有名大学から入学の誘いが殺到し、アメフト部のスカウトが次々とテューイ宅へ訪れるようになった。しかしそんな中、彼の成績が推薦入学の基準に及んでいなかったために、リー・アンはスー夫人をマイケル専属の家庭教師として雇い入れる。その甲斐あってマイケルの成績は及第点に達し、あとはどの大学へ入学するか進路を決めるだけとなった時、マイケルはリー・アンが自分を引き取った理由に疑問を抱き、リー・アンとの口論の末に家を出て行ってしまう・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    主演のサンドラ・ブロックがゴールデングローブの主演女優賞を獲得し、オスカー戦線でも主演女優賞の最有力候補に挙げられることとなった、実話を基に描かれた作品。私はアメフトには興味がなく、従ってマイケル・オアーなる選手の存在もまったく知らなかったのだが、どうやらアメリカではかなり著名な選手のようで、そんな彼の成功の裏にこんな美談隠されていたことに驚きを感じると同時に、彼がリー・アンの目に留まらなければ今の彼は存在していなかったことを考えると、人生はほんの些細なきっかけでどう転ぶかわからないものだということを改めて思い知らされた。
 1993年にスタローンと共演した『デモリションマン』で初めて知って以来サンドラ・ブロックという女優のファンになった私にとって、彼女のオスカーノミネートは実に喜ばしい出来事であり、またそうあって当然だとも思っている。日本では今ひとつ知名度の低い彼女ではあるが、本国での人気はかなりのものらしく、その演技力はもちろんのこと、美人なのに恥ずかしい演技にも体当たりで取り組む(それは『デンジャラス・ビューティー』を見れば明らかだ)ところや、その姉御肌で気っぷのいいところに好感を抱くファンは多く、おそらくは同性・異性を問わず幅広いファンから支持されているようで、私はそのことを知ってオスカーノミネート以上に嬉しく思えた。ちなみに、私にとっては彼女の主演作の中では未だに『あなたが寝てる間に・・・』が不動のナンバーワンで、この作品もそれには一歩及ばず星の数も9個にしてみた。
 今までずっと持ち前のブルネットで通してきたサンドラが、この作品では初めて髪の色をブロンドに染めていたのには、正直最初は違和感を感じたのも事実(もっとも、最初に感じていた違和感も、ストーリーが進むにつれて気にならなくなっていたのだが)。そして、エンド・クレジットで本物のマイケル・オアーやリー・アンの静止画像が背景に映されたのを見て、実際のリー・アンの髪がブロンドのであるために、サンドラも髪を敢えてブロンドにしたのだとわかった。もちろん髪の色以外にも、今回のサンドラはリー・アンを徹底的に調べて本物に近づこうとしたとのことらしい。とにかく今回の彼女は・・・・・いや、今回も彼女もリー・アンという女性を実に生き生きと作り上げていて、彼女の魅力が遺憾なく発揮されていることは間違いない。
 それにしても、何の縁もゆかりもない黒人少年を家に連れ帰り、服を買い与えて部屋をあてがい、車を買い与え、家庭教師を雇って果ては後見人にまでなるとは、もちろん敬虔なクリスチャンであるが故の度量の広さがあってこそだが、経済的に裕福であるという土壌なくしてはできないことであり、その意味では偶然裕福なテューイ家の目に留まったマイケルは僥倖の極みだったと言わざるを得ない。リー・アンがかれに「そこまでするか?」と言いたくなるほどに尽くしたのは、黒人に対する白人の優越感の表れだとか、美談の主になって自己満足に浸るためなどと解釈する者もいるだろう。しかし、彼女の行動がそのような不純なモチベーションに発しているのではないことは、マイケルを大学に送り出す日に家族が彼とハグする中、彼女はひとりマイケルを素っ気なくあしらって車に乗り込んでしまったシーンを見れば一目瞭然だ。そして、私がこの作品の中でもっとも感動したのもそのシーンだった。