評     価  

 
       
File No. 1170  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2010年03月06日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   松山 博昭  
       
上 映 時 間   133分  
       
公開時コピー   究極の騙し合い、勝つのは誰だ。待望の最終章。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   戸田 恵梨香 [as 神崎直]
松田 翔太 [as 秋山深一]
田辺 誠一 [as 仙道アラタ]
鈴木 浩介 [as 福永ユウジ]
荒川 良々 [as 西田二郎]
濱田 マリ [as 坂巻マイ]
和田 聰宏 [as 江藤光一]
関 めぐみ [as 武田ユキナ]
秋本 祐希 [as 百瀬ノリカ]
永山 絢斗 [as 久慈サトシ]
鈴木 一真 [as ヨコヤノリヒコ]
松村 雄基 [as 五十嵐衛]
吉瀬 美智子 [as エリー]
渡辺 いっけい [as 谷村光男]
 
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あ ら す じ    バカ正直で人を疑うことを知らない女子大生神崎直の元に、ある日ライアーゲーム Final Stageへの招待状が届く。本来直に送られるはずのないその招待状は、ファイナルに出場するはずだったヨコヤノリヒコが棄権したために急遽送られてきた物だった。そして、直を待ち受けていたライアーゲーム事務局の谷村光男から、今回のファイナルでは秋山深一は直の助けがないと勝てない、秋山を助けるためにも出場して欲しいと懇願された。
 ファイナルの会場に集められたのは、直の他に天才詐欺師で今までも直を助けてくれた秋山深一、銀行マンの仙道アラタ、2回戦から直を何度も騙しながらいつしか仲間となっていた福永ユウジ、雑貨店を経営する西田二郎、手品師の坂巻マイ、板金工の江藤光一、実業家の武田ユキナ、雑誌ライターの百瀬ノリカ、高校生の久慈サトシ、それにヤクザの五十嵐衛というセミファイナルを勝ち抜いた11名だった。そして、彼らに課された最後のライアーゲームは“エデンの園”というゲームだった。
 “エデンの園”ゲームは信じる心がテーマであり、プレイヤー全員が互いを信じることさえできれば、全員が大金を手にして帰れるという。ゲームの内容は、ゴールド、シルバー、そして赤の3色のリンゴを1個ずつ投票し、全員が赤ならば全員にプラス1億、赤とゴールドまたはシルバーが混在すれば赤のプレイヤーはマイナス1億で赤以外のプレイヤーにプラス1億、赤が1個だけの場合は赤のプレイヤーはマイナス10億でそれ以外のプレイヤーはプラス1億、赤のプレイヤーがいない場合はシルバーとゴールドうち投票数が多い方がプラス1億となり少ない方はマイナス1億、この投票を13回繰り返すというものだった。
 早速直は全員で赤を投票するように呼びかけた。他のプレイヤーも賛同してくれて投票した第1回の結果は、しかし赤のリンゴを投票したのは直を含めたったの4名だった。赤いリンゴを投票する者がいる限り、ゴールドかシルバーのリンゴを投票すれば確実に1億が手に入るためだった。次に坂巻マイが秘かに福永ら5人とチームを組んで同じ色に投票するが、秋山の講じた策によって彼らの結束は脆くも崩れてしまう。その後もプレイヤーたちは様々な手段を講じるが、そのたびに裏切り者がいて必勝法を見いだせないままに投票は進んでいく。やがて彼らは、11人の中に最強の刺客“プレイヤーX”が送り込まれていることに気づくが時既に遅く、正体不明のXによってトップのプレイヤーはことごとく沈められていく・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    戸田恵梨香が目当てで内容にはあまり期待はしていなかったのだが、もちろん戸田恵梨香は相変わらず可愛くて彼女を観ているだけで退屈しないのに加えて、作品自体も予想に反して面白かった。お陰でてっきり100分程度の尺にしか感じられず、観終わって確認したら133分という長さだったことが信じられなかった。ラストがすべてハッピーエンドとはちょっと出来過ぎで残念だし、あまりに戸田恵梨香扮する直と松田翔太扮する秋山にとってご都合主義な展開だとも思う。けれども、13回にわたって繰り広げられた頭脳戦は十二分に堪能させてもらった。私はこういう相手の考えを読んでその裏をかくような頭脳戦が大好きなのだ。
 実は私はテレビシリーズの『LIAR GAME』は全く観たことがなく、1年以上も前に戸田恵梨香主演のドラマだと知ってDVDをダビングしておきながら、それすら観ないままに劇場版に臨んでしまったのだが、予備知識なしでも充分に楽しめる内容になっていたのはいい。鈴木一真扮するヨコヤノリヒコという人物がどういった位置づけにあるのかは気になるが、その点に関しては今度こそDVDを観て確認したい。そして、私がこの作品を気に入った大きな理由はもうひとつあって、それは作品の原作となるコミックの著者が甲斐谷忍であることを知ったからだ。私が甲斐谷作品に初めて出会ったのはビジネスジャンプに連載された『ワンナウツ』で、その特徴のある細い線と主人公の冷たく鋭い目に強いインパクトを受け、以来甲斐谷作品には特に注目するようになったのだ。そして、『ワンナウツ』の主人公・渡久地東亜が勝負師として無敵の才覚を持ち、動揺やプレッシャーとは無縁の冷徹さ、悪魔的な洞察力、そして相手の心理を操作する術に長けているというそのキャラクターは、今考えるとこの作品の秋山に通じるキャラクターだったのではないだろうか。
 その秋山だが、天才詐欺師というからには当然ながら善・悪のいずれに属するかといえばおそらくは悪の部類に入る人種だろう。そんな彼だから、もっと私利私欲に走るのかと思ったら、自らの身を顧みずに今回のファイナルでは常に直やその他のプレイヤーのことを優先して行動するのにはちょっと肩すかしを食った感がある。しかも、ラストでは手に入れた54億という大金を全て手放してしまうのだ。せめて、全員のことを考えながらも最後はちゃっかり大金を手にするくらいの設定の方が彼らしかったのではないだろうか・・・・・と思ったのはTVのドラマを観る前のことで、ドラマをSeason2まで観てファイナルに至るまでの経緯がわかってみると、秋山が決して私利私欲のために詐欺をはたらいたわけではなく、母親を死に追いやった組織を潰すための詐欺だったこと、ライアーゲーム事務局を潰すことがかれの目的だったことがわかり、彼が直をはじめとする他のプレイヤーを助けようとした言動もすべて必然だったことを納得できた。やはりこの手の作品は土台となるドラマを観なければ、とんでもない誤解を招いてしまうようだ。
 東宝が配給の作品だから、地元のTOHOシネマズを利用する機会が多い私は何度も予告編を見せられたのだが、この作品の予告編では実際にない台詞が編集されて流されていたのがちょっと気になった。「あなたの負けです、秋山さん」という直の台詞がそれで、大事な場面を見せないのは当然のことなのだが、架空の台詞を流すのは作品の内容を大きく誤解させかねないのでいかがなものかと思うのだが。