評     価  

 
       
File No. 1171  
       
製作年 / 公開日   2008年 / 2010年03月06日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   キャスリン・ビグロー  
       
上 映 時 間   131分  
       
公開時コピー   永遠を思わせる戦場。
刹那を生きる男たち。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ジェレミー・レナー [as ウィリアム・ジェームズ二等軍曹]
アンソニー・マッキー [as J・T・サンボーン軍曹]
ブライアン・ジェラティ [as オーウェン・エルドリッジ技術兵]
レイフ・ファインズ [as 請負チームリーダー]
ガイ・ピアース [as マット・トンプソン軍曹]
デヴィッド・モース [as リード大佐]
エヴァンジェリン・リリー [as コニー・ジェームズ]
クリスチャン・カマルゴ [as ケンブリッジ大佐]
 
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あ ら す じ    2004年のイラク。アメリカ軍爆発物処理班がいつものように爆弾を処理していたところ、近くにいた市民が携帯電話を使ったためにその電波に反応して爆弾が爆発してしまう。そして、直接に当たっていた中隊のリーダーであるマット・トンプソン軍曹が、防爆スーツを着用していた甲斐もなく命を落としてしまう。
 殉死したトンプソンに代わって新しくリーダーに着任したウィリアム・ジェームズ二等軍曹は、まるで死に対する恐れがないかのような男で、防爆スーツを脱ぎ捨てて爆弾処理にあたることさえあった。そんなジェームズに対して、彼を補佐するJ・T・サンボーン軍曹や技術兵のオーウェン・エルドリッジらは、徐々に不安を募らせていく・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    公開初日に観たかったのだが、千葉の某シネコンでは木曜日がメンズデーで\1,000円のため、公開から5日過ぎた木曜のレイトショーに臨んだ。予想通りいつもでは考えられないような客の入りで、やはりオスカーのもたらした影響は大きいようだ。タイトルの“HURT LOCKER”とは、「行きたくない場所=棺桶」を意味するイラクの兵隊用語らしい。そして、率直な感想を言えば、決してつまらない作品ではないものの、予想以上でも以下でもなく、思った通りの内容であり出来だったと言える。
 元夫婦ということでとかく比較されがちな『アバター』のジェームズ・キャメロンと本作のキャスリン・ビグローだが、両者の作品はオスカーではキャスリンの圧勝に終わったものの、そもそもベクトルが異なる2作品を同じ土俵で競わせること自体無理がある。作品賞に限って言えば、他にも『マイレージ、マイライフ』など評価の高い作品がノミネートされていたにもかかわらず、まるで『アバター』と『ハート・ローッカー』の一騎打ちのように扱われていたのは、オスカー戦線を盛り上げようというコマーシャリズムの表れなのだろうか。もはや純粋に作品を評価するという軌道から逸脱しているかのように感じた今年の受賞だった。
 娯楽大作の『アバター』に対して「知的」という評価が目立つ本作だが、面白いのは掲示板等を見ていると、女性はおおむねこの作品を高く評価しているのだが、男性陣には批判的な意見が少なくない点だ。そして、私もやはりこの作品を知的な作品だなどとは思わないし、ましてアカデミー賞を6冠も受賞するにふさわしいとはとても思えない。だからこそ、今までオスカーの作品賞受賞作に「面白い」と感じる作品が少ないのだろう。
 自分が撮りたいと思う作品を撮ったキャスリン・ビグローに対し、ジェームズ・キャメロンが『アバター』で目指したのは自分ではなく多くの観客を満たすことだったと言える。そのことは、『アバター』が『タイタニック』を抜き興行成績歴代1位となったことからも明らかだ。そして私は、あくまでも観客を楽しませようという意図がストレートに伝わってくる『アバター』の方が断然好きだ。
 確かに爆発物処理という特殊な任務に就く男たちが置かれた異常な状況の描写には長けているし、特に荒野での銃撃戦の緊迫感はたまらない。けれども、ストーリー性のない描写に終始する映像は、観終えた後に満足感を感じることもなければ何も残さない。あたかも戦場にいるような臨場感を味わうにはまたとない作品なのだろうが。