評     価  

 
       
File No. 1174  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2010年03月13日  
       
製  作  国   フランス  
       
監      督   グレン・フィカーラ  
       
上 映 時 間   97分  
       
公開時コピー   この一言のために、懲役167年  

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
キ ャ ス ト   ジム・キャリー [as スティーヴン・ラッセル]
ユアン・マクレガー [as フィリップ・モリス]
レスリー・マン [as デビー・ラッセル]
ロドリゴ・サントロ [as ジミー・ケンプル]
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
あ ら す じ    自らを養子に出した母親を探すために警官になったIQ169のスティーヴン・ラッセル。警官を辞めて事業で成功を収めたスティーヴンは、妻デビーと一人娘の3人でごく普通の幸せな家庭を築いているかのように見えた。しかし、彼は自分がゲイであることを隠していたのだった。ある日、自動車事故で瀕死の重傷を負ったスティーヴンは、自分に正直に生きようと決意し、デビーに自分がゲイであることを打ち明けた。そして、それからは家族と離れて恋人のジミーと暮らし始めた。
 愛するジミーに不自由な生活をさせまいとするスティーヴンは、ある日スーパーマーケットで自分が撒いたサラダ油で転んで賠償金を得たことを手始めに、次々と詐欺を繰り返すようになる。そして、ついに保険金詐欺の罪で投獄されしまったスティーヴンは、獄中で出会った心優しいフィリップ・モリスに一目惚れしてしまった。やがて出所した2人は念願の2人きりの生活を手にしたが、愛するフィリップとの生活を充実させようと、スティーヴンはフィリップにも内緒で再び詐欺を繰り返してしまう。
 再び逮捕されたスティーヴンは、それ以来投獄と脱獄を繰り返すが、スティーヴンが自分を騙していたことを知ったフィリップは会うどころか話すら聞いてもくれない。どうしてもフィリップに「愛してる!」と伝えたいスティーヴンは、ついに一世一代の大勝負に打って出るのだが・・・・・。
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
たぴおか的コメント    まず意外だったのは、この作品が今まではホラーとアクションだけだと思っていたリュック・ベッソンのヨーロッパ・コープ作品であること。主役のジム・キャリーとユアン・マクレガーはもちろんハリウッド俳優で、舞台もアメリカであるにかかわらず、だ。そして、この作品が実話であるとはにわかには信じ難い。ショーン・ペンがオスカーの主演男優賞を獲得した『ミルク』も実在のゲイが主人公だったが、アメリカという国では日本など比較にならないほどゲイが市民権を得ているようだ。
 ジム・キャリー曰わく、『トゥルーマン・ショー』と『エターナル・サンシャイン』、そしてこの『フィリップ、きみを愛してる!』の3作品は製作にお金を出してでも出演したかったとのことで、その言葉を裏切らない迫真の演技を見せてくれている。しかし、ジム・キャリーひとりの熱演だけでは作品は成り立たないワケで、この作品でもうひとつ凄いと思ったのはユアン・マクレガーが演じたフィリップだ。彼はスティーヴンと同じゲイといっても相手の保護欲を喚起するタイプで、その柔らかな物腰や手つき、そして時折見せる怯えた表情など、ついつい本物の女性だと錯覚してしまうほど上手いのには驚いた。そして、こんな言い方をすると失礼に当たるのか、あるいは賛辞になるのか判断に苦しむが、フィリップがあまりにキュートで間違いなく可愛い。
 それにしても驚くべき天才詐欺師が実在したもので、この天才が己の欲のためではなく愛するフィリップのためだけに詐欺と脱獄を繰り返したというのが切なく憐れですらある。愛の力とは、それがゲイであっても実に偉大なものなのだ。そして、スティーヴンが考え出した一世一代の大勝負には、まるで『スティング』の大どんでん返しのように見事なまでに騙されてしまった。さすがIQ169だけあって、考えることがフツーじゃない(笑)。
 申し訳ないが、私はどうしてもゲイの気持ちを理解することはできない。しかし、この作品のスティーヴンとフィリップを見ていると、愛は歳の差だけでなく性別すらも克服できるものだと認めざるを得ない。移送されるスティーヴンを追って、彼の名を叫びながら嫌いだった中庭を疾走するフィリップが強く印象に残っている。私には断じてそのような嗜好はないが(クドい?)、実に愛すべきゲイたちを描いた作品だった。