評     価  

 
       
File No. 1187  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2010年04月03日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   安藤 モモ子  
       
上 映 時 間   107分  
       
公開時コピー         

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   満島 ひかり [as ハル]
中村 映里子 [as リコ]
永岡 佑 [as 了太]
光石 研 [as リコの父]
根岸 季衣 [as リコの母]
志茂田 景樹 [as リコの祖母]
津川 雅彦 [as 田中正]
かたせ 梨乃 [as 山城陶子]
 
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あ ら す じ    夢や目標もなく、恋人の了太との関係もただ会ってセックスするだけ、毎日を無為に過ごすそんな大学生のハルは、ある日カフェで見知らぬ女性に声をかけられた。彼女の名はリコ、病気や事故で体の一部を失った人たちのための精巧なパーツを作るメディカルアーティストだった。ハルを見て素敵だと思ったから声をかけたというリコは、気が向いたら電話してと呆気にとられるハルに携帯の番号を渡して消えていった。
 リコのことが気になるハルは、渡された番号に電話をかけると、ハルからの電話に大喜びのリコは仕事も切り上げてハルをデートに誘った。ハルはリコに、会ったときから抱いていた疑問を投げかけた。「本当に女の子が好きなの?」。リコはハルの疑問に対して、「相手が男だ、女だなんて関係ない。ハルちゃんだから好きなの」と言う。そんなリコに次第に惹かれていくハルは、了太との関係に疑問を感じるものの、誘われればまた会って関係を続けてしまう。そんなハルに対して苛立ちを募らせていくリコは、ついにハルと大喧嘩をしてしまう。
 ついにハルは迷っていた了太との関係に終止符を打つ決心をし、「好きな人ができたから」と別れを告げた。リコに近づいては離れる不安定な気持ちのハルは、まだリコのように堂々と「愛してる」と言うことができない・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    昨年の『プライド』『愛のむきだし』で映画各賞を総なめした感のある、私の今年一押し女優・満島ひかりの主演最新作。どうしても彼女の実物を見たくてユーロスペースの初日舞台挨拶にいそいそと出かけていった。登壇者は安藤モモ子監督、満島ひかり、中村映里子、永岡佑、そしてかたせ梨乃の5名だった。そして、間近で見た実物の満島ひかりは、思っていたよりもさらに細くて華奢な女の子で、髪を短く切っていたためにパッと見誰だかわからなかった。ちなみに、髪を切ったのはキムタク主演の月9ドラマ出演に備えてのことらしい。
 『愛のむきだし』もそうだったが、この作品でも風呂場での全裸シーンを筆頭に結構過激なシーンがあったが、どんな場面でも全力投球の彼女の演技には頭が下がる。この作品では彼女の演技を抑えるために、安藤監督は彼女に一切演技指導をせずに、敢えて一種の放置状態に置いていたとのこと。その甲斐あってか、今までにない悶々とした彼女の演技を観ることができる。
 そんな満島ひかりに負けず劣らずの熱演を見せてくれたのが、積極的にハルにアプローチを試みるリコを演じた中村映里子だ。そもそも監督が2人に対して抱いたイメージは、満島ひかりがリコ役で中村映里子がハル役だったらしいのだが、敢えてイメージとは逆の役柄を演じさせたら面白いかもしれないという発想の元に、満島ひかりのハルと中村映里子のリコが誕生したそうだ。そして、放置された満島ひかりとは対照的に、みっちりと監督の演技指導を受けたのが中村映里子だったようだ。
 端的に言ってしまえばハルとリコの同性愛の物語なのだが、女性特有のジメジメした陰鬱な雰囲気が感じられないのは好感が持てる。それどころか、ハルに対するリコのひたむきさには、心を打たれるものがあった。何のためらいもなくストレートにハルを求めるリコと、そんなリコの気持ちに応えたいがまだリコのように女性を心から愛することにためらいを感じるハル。そんな2人を体当たりで演じた満島ひかりと中村映里子の演技と、それを映像に引き出した安藤監督の手腕が光る作品だった。