評     価  

 
       
File No. 1202  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2010年04月17日  
       
製  作  国   フランス  
       
監      督   ラデュ・ミヘイレアニュ  
       
上 映 時 間   124分  
       
公開時コピー   寄せ集め楽団が巻き起こす奇跡の物語。
沸き起こる拍手に温かい涙が溢れる、笑って、元気をくれる感動作。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   アレクセイ・グシュコブ [as アンドレイ・フィリポフ]
メラニー・ロラン [as アンヌ=マリー・ジャケ]
フランソワ・ベルアレン [as オリヴィエ・デュプレシ]
ドミトリー・ナザロフ [as サーシャ・グロスマン]
ミュウ=ミュウ [as ギレーヌ・ドゥ・ラ・リヴィエール]
ヴァレリー・バリノフ [as イワン・ガヴリーロフ]
あんな・カメンコヴァ [as イリーナ・フィリポワ]
リオネル・アベランスキ [as ジャン=ポール・カレル]
アレクサンドル・コミサロフ [as ヴィクトール・ヴィキッチ]
ラムジー・ベディア [as “トゥル・ノルマン”のオーナー]
 
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あ ら す じ    かつてはロシア・ボリショイ交響楽団で主席を務めた天才指揮者と呼び声の高いアンドレイ・フィリポフは、今は劇場の清掃員として働く冴えない毎日を送っていた。30年前の共産主義の時代に、国がユダヤ人排斥政策を強行した折り、ユダヤ人演奏家の排斥を拒絶した彼は解雇の憂き目にあったのだった。
 ある日オーナーの留守中に部屋を掃除していたアンドレイは、1枚のFAXが受信されたのに気づく。それは、パリのブレイエルでの演奏が取りやめになったサンフランシスコ交響楽団の代わりに、ボリショイ交響楽団に演奏を依頼してきたものだった。FAXを見た瞬間アンドレイは、常軌を逸したとんでもない考えを思いつく。それは、彼と同様に落ちぶれてしまったかつての仲間を集めて偽のオーケストラを結成し、ボリショイ代表として夢のパリ公演を実現させようという突拍子もない計画だった。
 FAXの受信記録を削除したアンドレイは、早速昔の楽団仲間で今は救急車の運転手のサーシャ・グロスマンに話を持ちかけた。そして、渋るサーシャを連れて楽団の交渉役を頼みに行った相手は、あろうことかかつてアンドレイに引導を渡した張本人でもある、共産党員のイワン・ガヴリーロフだった。イワンは思いのほか快く頼みを聞き入れてくれ、アンドレイたちは本格的にモスクワのあちこちに散らばった昔の仲間たちの説得を始めるのだった。
 パリでの演目をチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲に決めたアンドレイは、そのためにどうしても招聘したいヴァイオリニストがいた。若いが著名な女性演奏家アンヌ=マリー・ジャケで、アンドレイはアンヌ=マリーにチャイコフスキーの協奏曲のソロ演奏を依頼するのだが、代理人のギレーヌに門前払いを食わされてしまう。ところが、アンドレイとギレーヌの電話でのやりとりを聞いていたアンヌ=マリーは、かねてから憧れていた巨匠・アンドレイの依頼とあって、客演を快諾してくれる。そして実は、アンドレイには今回のヴァイオリン・ソロがアンヌ=マリーでなければならない強い理由があった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    もっとお堅い作品かと思っていた私の予想を裏切って、非常に楽しいそれでいてラストの盛り上がりは半端じゃない秀作だった。『敬愛なるベートーヴェン』でもそうだったが、この作品でもチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の盛り上がりには鳥肌が立ち、胸が熱くなるのを抑えられなかった。私はヴァイオリン協奏曲といえば何といってもメンデルスゾーンがお気に入りなのだが、チャイコフスキーも負けず劣らずに好きで、というより、自分が習っていたこともあるのだが、ヴァイオリンの音色がとにかく好きなのだ。ただし、それはあくまで上手いヴァイオリンに限っての話で、下手なヴァイオリンには逆の意味で鳥肌が立ってしまうが(笑)。
 この作品でヴァイオリンのソロ奏者を演じたのは、『イングロリアス・バスターズ』で一躍有名になったメラニー・ロランだ。無条件に好みのタイプとは言いかねる彼女だが、美人なのは間違いなく、この作品でのヴァイオリンはもちろん吹き替えだろうが見事な熱演を見せてくれて、好感度は『イングロリアス』の時よりもかなり上がった。それにしても、彼女は生粋のパリっ子なのにもかかわらず、『イングロリアス』でもユダヤ人を演じこの作品でも両親がユダヤ人とは、何か因縁でもあるのだろうか?
 とあるサイトでこの作品に対して酷評している意見(30年もブランクがあってチャイコフスキーは演奏できないという主旨だった)を目にしたが、確かに現実的にはそれは正しい。もしも楽団員が全員ド素人ばかりを集めたというならば、私も諸手を挙げてその意見に賛同しただろう。けれども、ブランクはあっても皆一流の演奏家だったワケだし、せめて仮想現実である映画の中だけでも、それくらいの「あり得ない事」が起きてもいいし、それがなければ映画など観るのをやめてどっぷりと現実世界に浸っていればいいと思う。現実ではない体験ができるからこその映画であって、だから現実では味わえない感動も生まれる・・・・・それでいいんじゃない?