評     価  

 
       
File No. 1207  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2010年05月14日  
       
製  作  国   フランス / アメリカ / スペイン / イギリス  
       
監      督   ポール・グリーングラス  
       
上 映 時 間   114分  
       
公開時コピー   114分間、あなたは最前線へ送り込まれる。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   マット・デイモン [as 米国陸軍上級准尉/MET隊隊長 ロイ・ミラー]
グレッグ・キニア [as 国防総省情報局 クラーク・パウンドストーン]
ブレンダン・グリーソン [as CIA マーティ・ブラウン]
エイミー・ライアン [as ウォール・ストリート・ジャーナル記者 ローリー・デイン]
ハリド・アブダラ [as フレディ]
ジェイソン・アイザックス [as 米国陸軍少佐 ブリッグス]
 
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あ ら す じ    米国陸軍上級准尉であるMET隊隊長ロイ・ミラーは、イラクで大量破壊兵器の探索という極秘任務に就いてた。ところが、手に入れた情報を元に訪れた場所にはことごとく破壊兵器など見当たらず、焦燥に駆られる隊員を率いながら、ミラーは今まで入手した偽情報の背後に何らかの陰謀が渦巻いているのではないかと疑念を抱いていた。
 ミラーの隊の行く先々で、手がかりを奪う国防総省情報局のクラーク・パウンドストーンの動きもまた、ミラーには不審に思えてならなかった。そこで彼は、同じ疑念を抱いていたCIAのマーティ・ブラウンと手を組んで、部隊を離れて単独での調査を開始した。そしてミラーは、バウンドストーンへの情報提供者が“マゼラン”と呼ばれる謎の人物であるとの情報を、ウォール・ストリート・ジャーナルの女性記者ローリー・デインから得た。
 正体不明の“マゼラン”を追う過程で、ミラーの中では一つの疑惑が次第に膨れあがっていく。それは、そもそもイラクに大量破壊兵器があるという情報自体が偽情報ではないかという疑念だった。その疑念はすなわちアメリカという国家が巨大な陰謀を企てているということにつながり、その事実のインパクトは全世界をも激震の渦に巻き込みかねなかった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    オスカーを総なめにした感のある『ハート・ロッカー』に続いて、イラクに対するアメリカのあまりにも独善的かつ強引な内政干渉を描いた作品を見ることとなったが、何のストーリー性もなくただ淡々と爆弾処理をする光景を描いたまるでドキュメンタリーのような『ハート・ロッカー』と比較すれば、こちらの作品の方が「面白さ」という点では一枚上手だ。しまし、いくら同じポール・グリーングラス監督×マット・デイモンの組み合わせだからといって、この作品と『ボーン・アルティメイタム』を比較するのはアントニオ猪木とモハメド・アリ(ネタが我ながら古い!)のどちらが強いか?というのと同じで、違う土俵の2作品を同じリング上に上げてもあまり意味がないと思う。
 ブッシュ政権の陰謀で、イラクに大量破壊兵器があるという情報を嘘だと知りながらそれを利用して当時のフセイン政権を打倒しようとした、というこの作品のストーリーはもちろんフィクションだが、少なくとも一方的にアメリカがイラクに対して戦争を仕掛け、好き放題に暴れ回ったのは紛れもない事実。そして、作品中には実際にブッシュ前大統領の映像が使われている。もちろん、本人の許諾を得ているのだろうと思われるが、だとしたらこの内容の作品で自らの映像使用を許可するとは、もはや太っ腹を通り越してあまりに無関心過ぎるのではないかと呆れてしまう。
 9.11以来現在に至るまで、イスラム原理教国家はアメリカにとって完全な敵国という位置づけが定着してしまっているようだ。けれども、アメリカから敵視された国々の人々は、もはやアメリカによる救済などあてにしていないし望んでもいない。だから、マット・デイモン扮するミラーに協力的な現地人のフレディすら、「あんたたちにはこの国のことは決めさせない」と吐き捨てている。これがアメリカの言う「正義」の現実であり、国際社会での平和を本当に望むのならば、その独善的な傲慢さに早く気づき改めるべきだと思う。