評     価  

 
       
File No. 1229  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2010年06月12日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   北野 武  
       
上 映 時 間   109分  
       
公開時コピー   全員悪人  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ビートたけし [as 山王会大友組組長 大友]
椎名 桔平 [as 山王会大友組若頭 水野]
加瀬 亮 [as 山王会大友組組員 石原]
三浦 友和 [as 山王会本家若頭 加藤]
國村 隼 [as 山王会池元組組長 池元]
杉本 哲太 [as 山王会池元組若頭 小沢]
塚本 高史 [as 村瀬組組員 飯塚]
中野 英雄 [as 村瀬組若頭 木村]
石橋 蓮司 [as 村瀬組組長 村瀬]
小日向 文世 [as 刑事 片岡]
北村 総一朗 [as 山王会本家会長 関内]
 
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あ ら す じ    発端は、関東一円を仕切る暴力団組織・山王会の幹部が一同に会した席で、直参の池元組組長・池元が、山王会若頭・加藤から苦言を呈されたことだった。池元が兄弟の杯を交わした弱小組織村瀬組の組長・村瀬と組んで不穏な動きをしていたことが、山王会会長・関内の逆鱗に触れたのだ。そして、池内の子飼いである大友の組の構成員が、村瀬組が経営するバーで100万というボッタクリに遭った事件が導火線に火を点けた。村瀬組の組員・飯塚が金を受け取りに連れて行かれた場所は大友組の事務所で、相手が山王会傘下の組織であることに恐れをなした飯塚に、大友組若頭の水野は、無理矢理飯塚に100万を掴ませて追い返したのだ。
 相手が山王会と知った村瀬は飯塚の指を詰めさせたうえで、若頭の木村と共に大友組へ詫びを入れさせる。これに対して、下っ端の指では納得できない大友は、木村の顔を切り刻んで追い返した。村瀬は池元を通じて会長に詫びを入れ、自体は一見沈静化したと思われたが、これを機にさらに村瀬組に追い込みをかけようと考えた池元は、大友に村瀬を襲わせる。この事件をきっかけに山王会内部では、村瀬組をも巻き込んだ大規模な内部抗争を繰り広げることになるのだった。
 村瀬を襲い破門を言い渡された大友は、関内から池元を殺したら盃を下ろすとそそのかされ、その命令通りに親である池元を亡き者にした。ところがその一方で関内は、池元組若頭・小沢に親の仇である大友を討って池元組を継ぐように吹き込んだ。こうして山王会全体を敵に回した大友組は、絶体絶命の窮地に立たされるのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    タイトルの『アウトレイジ』(=outrage)とは「暴行、侮辱、法律や道徳を犯すこと」という意味の名詞で、この作品の内容を実に的確に表現していると言える。確かに面白いと思うが、同時に歯科医で村瀬が襲われるシーンや、中華料理店の店主が受ける暴行など、残酷なシーンのオンパレードだ。この作品では、北野監督が自ら言ったようにカンヌ映画祭のコンペティション部門での受賞は難しいだろう。また、今回も監督・脚本・主演をこなしている北野武監督だが、どうしてもストーリー展開に粗が見えて仕方なかった。
 ひとつは、ヤクザの世界で最大のタブーとされている親殺しで、ビートたけし扮する大友がその親分である國村隼扮する池元を殺すのだが、非常に厳格な縦社会であるヤクザの世界では絶対にあり得ない事態と言っていい。親は絶対の存在であり、親殺しがまかり通ってしまうとヤクザ社会は根幹から崩壊してしまう。そもそも本家の会長が親を殺せなどとそそのかすはずがなく、もしも池元を殺させたいのならばまずは池元を破門にしてから大友に命令するのが筋だ。
 そして、組長だけを除くならともかく、次々と傘下の組を潰していく関内会長の意図も意味不明だ。上納金が全てというヤクザ組織において、傘下の組を潰すことは連合である山王会自体の弱体化を招くことは必至で、特にカジノで莫大な収益を上げていた大友組を潰しても何の得にもならないどころか、自分で自分の首を絞めるような愚行だとさえ言えるだろう。
 極道トリビアはこのくらいにして作品に話を戻すと、コワ〜イオジサンがいっぱい登場するこの作品で特に異彩を放っているのが椎名桔平扮する水野だ。暴力に何のためらいもないばかりか、むしろ暴力を楽しんでいるかのように眼が笑っていて、それが恐さを通り越してカッコ良くさえ見える。そして、加瀬亮が演じたインテリの経済ヤクザの石原もハマリ役。いつもは物静かな石原がキレた時の凶暴性には目を見張るものがある。結局は、石原のように土壇場でも冷静に状況を判断し行動できる男が、最後には笑うものだ。
 いつもは人の好いオジサン役が多い小日向文世は、その時々の状況によっていいとこ付きする太鼓持ちのようなキャラクターが、ある意味似合っている。この人が怒鳴って凄んでも、全然コワくないんだよね(笑)。組を張りながらも大組織の前には為す術もなく小さくなるだけの村瀬を演じた石橋蓮司も凄い。『踊る大捜査線』ではスリーアミーゴズのひとり・神田署長としてボケ役に徹する北村総一朗も、実は強面の役が似合っていたりする。北野武監督作品中最大と言っていい豪華キャストの面々が、それぞれの役柄をどうこなしているのかが見所であることは間違いない。