評     価  

 
       
File No. 1235  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2010年06月19日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   アレン・ヒューズ / アルバート・ヒューズ  
       
上 映 時 間   118分  
       
公開時コピー   運べ、西へ。
世界に残る
たった一冊の本を。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   デンゼル・ワシントン [as “ウォーカー”](イーライ)
ゲイリー・オールドマン [as カーネギー]
ミラ・クニス [as ソラーラ]
レイ・スティーヴンソン [as レッドリッジ]
ジェニファー・ビールス [as クローディア]
フランシス・デ・ラ・トゥーア [as マーサ]
マイケル・ガンボン [as ジョージ]
トム・ウェイツ [as エンジニア]
エヴァン・ジョーンズ [as モルツ]
ジョー・ピングー [as ホイト]
クリス・ブラウニング [as 野盗のリーダー]
リチャード・セトロン [as 野党]
ラティーフ・クラウダー [as 野党]
 
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あ ら す じ    文明が崩壊してから30年が経過した北米大陸。背中のバックパックにアーミーナイフとショットガン、それに世界でたった一冊だけとなったある本を入れて、“ウォーカー”はただひたすら西を目指して歩く。その本に触れようとする者はすべて容赦なく殺してまでも彼が守り続けてきたその本を、一体西のどこに、そして、誰の元へと届けるのか、彼自身にもわかってはいなかった。
 彼がある日たどり着いた町では、汚染されていない水脈を確保した独裁者・カーネギーによって支配されていた。そして、酒場でカーネギーの配下と派手に殺し合いを演じた“ウォーカー”はカーネギーの目に留まり、カーネギーから自分の右腕となることを提案される。“ウォーカー”の答えは“No”だったが、一晩泊まってゆっくりするようにとの申し出を受け、劇場跡の屋敷に一泊することとなった。そんな“ウォーカー”の懐柔策として彼の部屋に贈られたのは、カーネギーの盲目の情婦・クローディアの娘ソラーラだった。
 “ウォーカー”に抱かれるために差し向けられたソラーラだったが、彼はソラーラにはまったく興味を示さずに部屋から追い返そうとした。しかし、何もなかったとカーネギーにしれたら母親が殴られるからと懇願するソラーラに、男は彼女を部屋に招き入れる。勝ち気で好奇心旺盛なソラーラの目に付いたのは、男が読んでいた分厚い本だった。加えて、食事の前の不思議な祈りの言葉。翌朝、クローディアに“ウォーカー”の部屋での出来事を話すのを耳にしたカーネギーは、男が持つ本こそ自分が探し求めてきた、人々の心を真に支配できる本であることを確信する。そして、町を出ようとする“ウォーカー”を武装した配下の者たちに襲わせた。しかし、肉弾戦のみならず銃撃戦でも圧倒的な能力を誇る“ウォーカー”の前にカーネギーの配下は次々と倒され、自身も足に被弾して為す術もないままに“ウォーカー”が町を出るのを見送るしかなかった。
 再び西に向かって歩き出した“ウォーカー”の後をソラーラが追う。一旦は“ウォーカー”に同行を断られたソラーラだったが、野党に襲われたところを“ウォーカー”に救われたことをきっかけに、2人は一緒に西を目指すこととなった。一方カーネギーは、ありったけの火器で武装した配下を従え、車4台を連ねて“ウォーカー”とソラーラの後を追うのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    最初にお断りしておきたいのは、デンゼル・ワシントン扮する主人公の作品中での役名は敢えて伏せてある。作品がスタートしてから100分を過ぎるまで、ナゼか彼の名前は一切登場しない。そして、ラスト10分くらいになってやっとわかる彼の名に、「なるほど、そうだったのかぁ!」と観る前から抱いていた疑問が一気に氷解した。その疑問とはおそらく誰もが抱くであろうと思われるもので、もしかしたら“ウォーカー”の名前自体がネタバレになるのでは?と思えた。そこで、帰宅してオフィシャルページを見てみると、やはり彼の役名は“ウォーカー”としか書かれていなかったため、役名自体がネタバレになると判断して、オフィシャルページに倣ってこの場でも役名を伏せておくことにした。ただ、私の場合は彼の役名がわかっても一向にピンと来なくて、彼の名が書かれたある物を見て初めてわかったという有様だし、他の映画専門サイトを見ればおそらくは役名が書かれていると思われるので、無理に伏せておく必要がなかったような気もする。そこで、例によって[Ctrl]+Aまたはマウスのドラッグで役名を見られるようにしてあるので、知りたい方は自己責任でどうぞ。
 ある一点を除けば、私はこの手の作品が大好きなのだ。その理由は作品中では明かされていないのだが世界の文明が崩壊して、生き残った人々は地下に逃れていたほんのわずかという、あたかも『北斗の拳』のような世界観に、セピアトーンに彩られた映像が妙にマッチしている。そこへもってきて、お約束のヒロインとして登場するソラーラ役のミラ・クニスのキツ目の顔立ちが非常に映える。そして、“ウォーカー”が運ぶ1冊の本を万難を排してでも手に入れようとする、ゲイリー・オールドマン扮する独裁者カーネギー・・・・・と、ここまではいい。が、その1冊の本の中身が何なのか、徐々に嫌な予感がしてくるのだが、普段は当てにならない予感がこういう時に限って的中するものだ。私にとっては何の役にも立たない“あんな本”を使って人々を支配しようなどと企てるカーネギーは、私に言わせれば単なる愚か者、いや、超一流の愚か者だ。そもそも、文明が崩壊する前の社会にはあの本の中身は広く民衆に行き渡っていたにもかかわらず、世界は滅びてしまったのだ。いい加減にあんな本にそんな力など無いことに気づけよ、と言ってやりたくなる。そして、あんなモノを命を賭してまで守ろうとする“ウォーカー”もまた救いようのない愚か者だと言わざるを得ない。あんな本がモーツァルトと同レベルの文化として扱われているのは、私にとっては不愉快この上なく実に腹立たしく思えた。私だったら、脂取り紙にも使えなければ鼻をかむティッシュの代わりにもならないような代物は荷物になるだけで、薪の代わりに燃やしているだろうし、カーネギーが欲しいと言うならば喜んでくれてやろうじゃないか。
 そんなわけで、本の中身については大いに不満が残るものの、その一点だけで作品全体の評価を下げるほどのことはないと思う。55歳になるデンゼル・ワシントンが見せてくれるアクションは爽快なまでに見事だし、ラストでカーネギーが念願の本を手にした時のオチにも皮肉が利いていていい。ただ、あの本を“ウォーカー”は毎日読んでいるというが、彼にはあの本が本当に読めたのだろうか?