評     価  

 
       
File No. 1236  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2010年06月19日  
       
製  作  国   メキシコ / アメリカ  
       
監      督   ケイリー・ジョージ・フクナガ  
       
上 映 時 間   96分  
       
公開時コピー   この出会いが、私を強くした。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   パウリーナ・ガイタン [as サイラ]
エドガー・フロレス [as カスペル/ウィリー]
クリスティアン・フェレール [as スマイリー]
テノック・ウエルタ・メヒア [as リルマゴ]
ディアナ・ガルシア [as マルタ]
ルイス・フェルナンド・ペーニャ [as ソル]
エクトル・ヒメネス
ヘラルド・タラセナ
 
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あ ら す じ    メキシコのチアバス州タバチュラを根城にするギャング組織マラ・サルヴァトゥルチャの一員カスペルは、ある日まだ幼い12歳の少年スマイリーを組織のメンバーに引き込んだ。そんなカスペルには、リーダーのリルマゴに知られてはならない秘密があった。彼は組織の仕事をサボって、恋人のマルタと密会を重ねていたのだ。しかし、ある時ついにマルタの存在がリルマゴにバレてしまい、リルマゴに犯されそうになったマルタは抵抗した挙げ句頭を殴打して死んでしまった。それ以来カスペルは、リルマゴの手下としてマラのために働くことに疑問を感じ始める。
 ホンジュラスの少女サイラは、アメリカから強制送還されて戻ってきた父から思いがけない提案をされた。もう一度、今度はサイラを伴ってニュージャージーへ行き、向こうの家族と一緒に暮らそうと父は言うのだ。アメリカも厳しいが、ホンジュラスに留まっていても未来はない、そう考えたサイラは、父と叔父に伴われて、グアテマラ、メキシコを経由してアメリカを目指す旅に出る決意をした。
 サイラたち移民を屋根に載せた貨物列車を、強盗が襲う。リルマゴ、カスペル、そしてスマイリーの3人だった。彼らは移民を脅して次々と金品を強奪していく。ところが、サイラを見つけたリルマゴが泣き叫ぶ彼女を銃で脅して暴行に及ぼうとしたのを見たカスペルは、手にした鉈をリルマゴに向かって振り下ろした。同じようにリルマゴに暴行されて命を落としたマルタのことが頭から離れなかったのだ。リルマゴは驚愕の表情を浮かべながら列車から転落していき、カスペルは戸惑うスマイリーを追い返した。組織に戻ったスマイリーは、カスペルがリルマゴを殺したことを報告し、自ら裏切り者のカスペルを殺す役目に志願した。組織から命を狙われる羽目に陥ったカスペルにはもう帰る場所はなく、このまま列車の旅を続けるしか術がなかった。
 サイラは自分を助けてくれたカスペルに恩を感じ、父に禁じられたにもかかわらずカスペルに接近していく、それはやがて淡い恋心に変わり、ある早朝カスペルが黙ってこっそりと列車を降りた時、サイラは父に何も言わずに彼の後を追う。こうして、組織から命を狙われるカスペルと、危険を承知で彼についてきたサイラの危険な逃避行が始まる・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    この作品を観て強いインパクトを受けたのは、あまりに日本と違うという南米諸国のお国柄だった。中南米といえばまず連想するのがコロンビアの麻薬地帯で、その利権をめぐってマフィアが群雄割拠しているというイメージが強い。メキシコを舞台に描かれたこの作品には麻薬は登場しないものの、主人公のサイラと行動を共にすることになるカスペルことウィリーはすでにれっきとしたマフィアの構成員だし、彼が自分の組織に引き込んだスマイリーはまだ12歳の少年だ。まともな教育も受けずに、マフィアの一員となることにステータスを覚えるスマイリーのような少年が大勢いると思うと、自分が日本で生まれ育ったことを感謝せずにはいられない。
 主人公のサイラの国ホンジュラスについては何の知識も持ち合わせていないが、おそらくは満足な暮らしを送ることができないような低所得者がひしめくのではないだろうか。それ故にサイラとその父親はアメリカを目指すのだが、その移動手段には正直驚かされた。貨物列車の屋根にひしめく移民たちは、もちろん無賃乗車(「乗車」と言えるかどうかすら疑問だが)だろうと思われ、日本ではとうていお目にかかることはできない光景だ。そして、わすかな金銭しか持ち合わせていないような移民たちに対して、白昼堂々と列車強盗をはたらくマフィアたち。そんな光景を観た私が今ひとつ現実感の欠如を感じてしまったのも、やむを得ないことなのかもしれない。
 サイラを演じたパウリーナ・ガイタンがお世辞抜きに美しい。この作品に出演後、立て続けに主役級のオファーがあったというのも納得できる。私がこの作品を観たのも、彼女がどんな演技を見せてくれるのかに興味を覚えたことが理由のひとつだったから。ただ、尺がちょっと短いために物足りなさを感じたのも事実。ウィリーとの別れを経て彼女がどう立ち直っていくか、その点を観たいと思ったのは私だけではないだろう。