評     価  

 
       
File No. 1241  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2010年07月03日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   伊藤 俊也  
       
上 映 時 間   118分  
       
公開時コピー   世紀の完全犯罪、
三億円事件、解決。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   渡辺 大 [as 片桐慎次郎]
奥田 瑛二 [as 滝口政利]
川村 ゆきえ [as 津村多恵子]
武田 真治 [as 宮本翔太]
矢島 健一 [as 藤原孝彦]
菅田 俊 [as 宍倉文平]
春田 純一 [as 三浦辰男4]
奥村 知史 [as 緒方純]
中村 映里子 [as 真山恭子(1968年当時)]
伊藤 明賢 [as 杉田聡]
斎藤 歩 [as 飯島甲子雄]
ダイヤモンド勝田 [as 金子彰]
針原 滋 [as 葛木勝]
飯田 裕久 [as 結城稔]
烏丸 せつこ [as 女将]
熊谷 真実 [as 緒方晴子]
中田 喜子 [as 滝口俊江]
かたせ 梨乃 [as 真山恭子(現在)]
宅麻 伸 [as 吉岡健一]
原田 芳雄 [as 高村英治]
夏八木 勲 [as 緒方耕三]
 
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あ ら す じ    隅田川で絞殺死体が発見される。被害者の葛木勝は中華料理店を経営しており、多額の借金を抱えていたものの、誰かから恨みを買うような人間ではなかった。この事件を知った定年間近の刑事・滝口政利は、自ら志願して捜査メンバーに加わった。そして、彼とコンビを組むこととなったのは、所轄の血気盛んな若手刑事・片桐慎次郎だった。二人は早速捜査を開始するが、自分を無視して勝手な行動に走る滝口に、片桐は不満を抱くのだった。
 滝口は今回の殺人事件が、1968年12月10日に起きた戦後最大のミステリーと言われる“三億円強奪事件”に端を発していると睨んでおり、やがて片桐は滝口から葛木が三億円事件の複数の容疑者の一人だったと告げられる。確証があったのになぜ犯人を逮捕しなかったと訪ねる片桐に対して、滝口は犯人の親の中に警察官がいたために、警察は組織的隠蔽工作を図ったのだと滝口は重い口を開いて語った。
 ある日、滝口と一緒だった片桐の携帯に、同棲している恋人・津村多恵子から救いを求める連絡が入る。片桐が多恵子と暮らしていることは誰も知らないはずなのに、そのことを知る不審な人物が訪ねてきたというのだ。急いで帰宅した片桐は、アパートの入り口で待ち受けていたのは、フリーのジャーナリスト・宮本翔太だった。驚いたことに宮本は、片桐と多恵子の同棲のみならず、葛木殺しが三億円事件に起因していること、滝口と片桐が三億円事件を遡って調べていることを察知した警察が妨害の手を打ってくることまでを知っていた。そして、何かあった時の保険として自分と手を組まないかと持ちかけてきたのだった。
 宮本の言葉通り、警察が動き出した。滝口は管理官・藤原孝彦から呼び出され、滝口と片桐は捜査本部から外されてしまった。警察全体を敵に回しながらも、事件の追及を止めようとしない滝口と片桐は宮本と会い、彼が持つ三億円事件実行犯の父親・緒方耕三の調書と引き替えに、警察でもほんの一握りの人間しか知らない事件のリーダー的存在だったある女の名を告げるのだが・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    今頃なぜ唐突に三億円事件?と少しばかり斜に構えて臨んだ作品だったが、観てみると思ったよりも自然に三億円事件を現在の殺人事件に絡めているのには感心した。そして、今まではハッキリ言って嫌いだった奥田瑛二と、あまり演技が上手いとは言えないと思っていた渡辺大の2人をそれぞれちょっと見直した。くたびれた定年間際の老刑事という役柄が奥田瑛二にピッタリで、悔しいけどあの渋さは並の俳優では演じられないと認めないわけにはいかない。
 この作品はあくまでフィクションであり、従って三億円事件の犯人は実際には単独犯だと思う。もしも複数犯であったとしたら、何十年も経過する間には人間関係にも変化が起きて必ずどこかに破綻が生じ、秘密が漏れてしまうものだ。そんな想定で描かれているのがまさにこの作品なのだが、事件発生から40年以上が経過した今、敢えて過去に封印されたタブーを滝口が暴こうとするのか、その点には疑問を感じてしまう。事件発生当時から真犯人の確証があるのなら、無謀は若さの特権なのだから、迷宮入りなどさせずに果敢に警察の隠蔽工作に向かっていくべきだったろう。
 滝口は既に真相を知っているために、この作品には謎解き的な色合いは薄く、警察という組織に対して個人がいかに真相を表に出していくかに焦点が当てられている。そして、滝口と片桐にフリーのジャーナリストという願ってもない存在が現れた。それが武田真治扮する宮本で、その出会いによって事態は予想もしない方向へと進展していくのだが、それ以降の展開が急に荒っぽくなるのはちょっと興ざめだった。