評 価
File No.
1255
製作年 / 公開日
2010年 / 2010年07月31日
製 作 国
日 本
監 督
中村 義洋
上 映 時 間
108分
公開時コピー
人生はケーキほど甘くないでござる。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
最初に観たメディア
Theater
Television
Video
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
キ ャ ス ト
錦戸 亮
[as 木島安兵衛]
ともさか りえ
[as 遊佐ひろ子]
鈴木 福
[as 遊佐友也]
今野 浩喜
[as 田中くん]
堀部 圭亮
[as 城崎]
佐藤 仁美
[as 平石佳恵]
忽那 汐里
[as 時翔庵の店員]
中村 有志
[as 司会者]
井上 順
[as 殿間知治]
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
あ ら す じ
夫と別れて巣鴨で暮らす
遊佐ひろ子
は、ひとり息子でやんちゃ盛りの
友也
を育てながら仕事をこなすシングルマザーだった。職場では部下の
田中
は口だけで仕事をせず、定時で帰れば上司の
城崎
から白い目でみられる毎日を送っていたひろ子だったが、ある日そんな彼女の生活に大きな変化が訪れる。なんと、彼女の目の前に180年前の江戸時代からタイムスリップしてきた直参旗本の
木島安兵衛
だと名乗る青年が現れたのだ。
最初は安兵衛の話を信じられず、胡散臭い俳優か頭のおかしい男だと思っていたひろ子だったが、友也を事故から救ってくれた安兵衛に再会すると、行く当てもなく途方に暮れている彼を不憫に思い、やむなく帰る家が見つかるまでの間居候させることにした。そして、安兵衛が居候させてもらう代わりに奥向きの仕事はすべて自分が引き受けると言ってくれたのを受けて、ひろ子は家事をすべて安兵衛に任せて仕事に専念できるようになった。
安兵衛との同居生活が続くうち、律儀に家事をきちんとこなし、時には友也を叱ってくれる安兵衛の誠実な人柄と筋の通った男らしさに、ひろ子は次第に惹かれていく。そして、父親のいない生活に突如現れた大人の男性の存在は、友也にとっても叱るべき時には叱ってくれ、守る時には守ってくれる安心感をもたらしてくれ、安兵衛は2人にとってなくてはならない存在へと変わっていった。
安兵衛は料理に秀でた才能を発揮し、特に風邪を引いた友也のためにプリンを作ったことがきっかけで始めた菓子作りの腕前はプロ顔負けだった。そして、その際能を発揮すべく菓子作りのコンテストに出場して優勝した安兵衛は、プロのパティシエ・
殿間知治
の目に留まり、彼の店で働くこととなった。そして、そのことがきっかけで微妙なバランスを保っていた3人の関係に歪みが生じてくるようになる・・・・・。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
たぴおか的コメント
劇場で観るか観ないか最後まで迷っていたのだが、ダメ元で初日のレイトショーに臨んでみたところ、これが予想外に面白かった。主演の錦戸亮といえば、あのドラマ『ラスト・フレンズ』で長澤まさみに暴力をふるうDV男を演じたことをすっかり忘れていて、帰宅してから彼のプロフィールを見てやっと思い出した。そもそも、ありのままの姿で演じる現代劇よりも、髷のヅラを着けた時代劇の方が凛々しく見えるし似合っていると思う。また、共演のともさかりえはさすがに上手い。この作品を観るかどうか迷っていた理由のひとつは彼女が共演だからで、これがもし仲間由紀恵あたりが演じていたら迷わずに劇場へ行っただろう。けれども、作品を観てみるとそんなことは忘れて彼女の演じる遊佐ひろ子というキャラクターを気に入ってしまう。私にとって彼女はそういう数少ない特異な女優なのだ。これって、褒め言葉になってるよね?
江戸時代から貧乏旗本がタイムスリップして現在に現れる、そんな奇想天外な発端からストーリーは展開されるが、単に奇をてらっただけではなく、そこに描かれているのは人と人との絆というごくオーソドックスでかつな普遍的なテーマだ。だから老若男女を問わず誰にでも単純明快でわかり易いし、面白い・面白くないの判断も容易にできる。そして、私にとっては某刑事ドラマの3作目などよりも遙かに面白い作品だ。
江戸時代には苗字帯刀を許されていたのは士・農・工・商のうち武士だけだったため、安兵衛が苗字と名前を名乗ったひろ子を武家の娘と勘違いするなど、細部にわたって結構丁寧に造られているという印象を受ける。表向きは男、奥向き(つまり家事)は女という世界に育った安兵衛が、果たして居候の礼とはいっても遊佐家の奥向きを自ら進んですべて引き受けるかどうかは疑問だが、そのことが次の展開への伏線となっている。最初は単なる厄介者だった安兵衛が、次第にひろ子と友也にとってなくてはならない存在へと変わっていく様子が無理なくごく自然に描かれていて非常に好感が持てる。そんな中で、時折安兵衛が持ち込む江戸時代の風習が笑いを誘い、観ていて退屈しないのもいい。最後は安兵衛が元いた時代に戻って終わると思っていたら、もしかしてこのまま3人で暮らすことになるのか?とか、あるいは逆にひろ子と友也が安兵衛と一緒に江戸時代に行ってしまうのか?と思わせる展開が期待を高めてくれる。最後のシーンは、作品のタイトル『ちょんまげぷりん』にこれ以上ふさわしい終わり方はないと言える、いい余韻を残した終わり方だった。