評     価  

 
       
File No. 1276  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2010年09月11日  
       
製  作  国   ド イ ツ / ロ シ ア  
       
監      督   マイケル・ホフマン  
       
上 映 時 間   112分  
       
公開時コピー   大作家と“世界三大悪妻”と名高い
妻ソフィヤとの知られざる愛の物語。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ヘレン・ミレン [as ソフィヤ・トルストイ]
クリストファー・プラマー [as レフ・トルストイ]
ジェームズ・マカヴォイ [as ワレンチン・ブルガコフ]
ポール・ジアマッティ [as ウラジミール・チェルトコフ]
アンヌ=マリー・ダフ [as サーシャ・トルストイ]
ケリー・コンドン [as マーシャ]
ジョン・セッションズ [as ダシャン]
パトリック・ケネディ [as セルゲンコ]
 
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あ ら す じ    20世紀初頭。ロシアの文豪レフ・トルストイの新しい助手として採用された、世間知らずでただトルストイの教えを頑ななまでに信奉する青年ワレンチン・ブルガコフ。彼が着任した当時のトルストイ家は、非常に緊迫した一触即発の状態にあった。トルストイが新たに興した教えに則り、自ら爵位や財産を捨てる決断をしたのだ。
 そんなトルストイの決断を後押ししているのが、彼の信頼する弟子ウラジミール・チェルトコフで、彼はトルストイに「トルストイの全作品の著作権をロシア国民に与える」と記した新しい遺言状を作成することをも進言していたのだった。そしてそのことが、50年近くもの間トルストイと結婚生活を送っていた彼の妻ソフィヤ伯爵夫人を窮地に追い込んでいた。ソフィヤはあらゆる手段を尽くして策略家のチェルトコフに対抗しようとするが、皮肉にもそのことがますます彼女を追い込んでいくのだった。
 チェルトコフから夫人の様子を逐一報告するように命じられていたワレンチンだったが、そのことを知らない夫人からも自分の味方につくように頼まれてしまう。2人の板挟みになったワレンチンをさらに困惑させたのは、彼と同じくトルストイの教えを信奉しながらも、彼とは正反対に異性に対して奔放に振る舞う情熱的な女性マーシャの存在だった。トルストイの提唱する“理想の愛”に心酔していたワレンチンは、現実の世界における恋愛に対処する術を知らなかったのだ。
 そんな状況の中、複雑になりすぎた自らの周囲の状況に嫌気がをさしたトルストイは、チェルトコフやワレンチンを伴って真夜中に家出を企てる。しかし、旅路の途中で病に倒れたトルストイは、うわごとのようにソフィヤの名を口走った。これを見ていたたまれなくなったワレンチンは、ソフィヤに宛ててトルストイの病状を報せる電報を打つのだが・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    世界三大悪妻とは、ソクラテスの妻クサンティッペ、モーツァルトの妻コンスタンツェ、そしてトルストイの妻ソフィア(作品中ではソフィヤだった)の3人。そして、その悪妻であるソフィヤの性格設定がどうも曖昧過ぎる気がする。見たところ、確かに財産に執着しているのはわかるが、彼女の対局にいるポール・ジアマッティ扮するチェルトコフが胡散臭いせいで(笑)、正直ソフィヤが悪妻なのか、それともチェルトコフに悪意があるのか、作品を観ただけでは判断できないのだ。
 世界的な文豪トルストイが実は思想家であり、人々に教えを説くような活動をしていたことはこの作品で初めて知った。主役のヘレン・ミレンとクリストファー・プラマーの両ベテランの、円熟の極みとでも言うべき演技はさすがに見ていて安心できるし、一方で若手のジェームズ・マカヴォイの堅物青年も上手かった。ともすれば辛気くさくなってしまいそうな作品を、若いワレンチンとマーシャの恋も絡んでくるため、より幅広い年齢層の観客にとって受け入れ易い作品になっていると思う。ただ、この作品の主題であるレフとソフィヤの愛がなんとも中途半端な描かれ方で、これでは夫婦の愛情がテーマなのか、それとも夫婦の諍いがテーマなのかわからなくなってしまっている。
 それにしても、クドいようだがポール・ジアマッティをなぜこの作品にキャスティングしたのか?今までも曲者を演じることが多かった彼のおかげで、チェルトコフの真意を計り知れることができない。本当にトルストイの著作を国民全体の資産と考え、その著作権を独占しようとするソフィヤと敵対関係に陥ったのか、それとも彼の根底には私利私欲を満たそうという意図があったのか。史実を知らないだけに、この作品だけを観てわかったような気分になるのは、とんでもない曲解をしてしまいそうでコワイ。