評     価  

 
       
File No. 1279  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2010年09月25日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   井上 春生  
       
上 映 時 間   84分  
       
公開時コピー   あの日から30年・・・
結ばれることのない出逢い
 
それでも運命は
二人を愛へと導く。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   内山 理名 [as 松木美江]
キム・ウンス [as 柳正培]
黒田 福美 [as 松木明子]
小山田 サユリ [as 保奈美]
山岸 賢介 [as 辰夫]
笠原 浩夫
マイク・ハン
水橋 貴己
並木 史郎
宇都宮 雅代 [as 張三順]
 
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あ ら す じ    日本人の父親を早くに亡くし、母明子と祖母張三順と3人で暮らす、28歳の松木美江。恋人の辰夫が韓国系の商社への就職が決まり、母が在日韓国人であることも手伝って、美江は投資顧問会社に勤務しながらも韓国の旅行代理店への転職を試みるが、なかなか思うように転職をできずにいた。そんな時、美江所属する部署にテコ入れで3名の新顔が移動してきた。
 3名のうちのひとり、韓国支社から課長として赴任してきた柳正培(ユウ・ジョンベ)は、着任早々その敏腕をふるって課内に活気をもたらしていく。そして、課での飲み会の帰り、柳とタクシーで一緒になり会話を交わした美江は、もっと彼の話を聞きたいという想いに駆られる。美江は柳と携帯で連絡を取るようになり、週末を柳と2人で散歩をしながら過ごすようになる。親子ほどに歳の離れた2人だったが、美江と柳は互いに相手を異性として意識するようになっていった。
 そんなある日、美江は柳と訪れた韓国料理店で彼が過去に経験した光州事件の話を聞かされる。彼は1980年当時、民主化を求める気運が高まる韓国で、学生運動のリーダーだった。そしてその頃、康子という名の在日韓国人女性と恋に落ち、ある日忽然と彼の前から姿を消してしまった彼女のことを今でも想い続けているという。その話を聞いた美江は、自分を柳とめぐり逢わせた運命のいたずらに気付き始めるのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    最近見かけることがなく、どうしているのかが気になっていた内山理名の主演作とあって、迷うことなく初日初回の舞台挨拶を予約して劇場へと向かった作品。内山理名扮する主人公・松木美江と、韓国人の上司・柳正培との淡い恋もあり、30年もの間ずっと相手を思い続ける愛もありという作品の中で、ちょうど30年前の1980年に韓国で勃発した光州事件が根底に描かれているのは意外だった。光州事件といえば、2年前にイ・ジュンギが学生役で登場して軍に射殺されてしまうという『光州5・18』を観たが、この作品の原点もそこにあったようだ。
 日本でも1960年代に学生運動が盛んに起こったが、韓国では1980年に民主化と全斗煥大統領の退陣を求めて活動家や学生が韓国軍と衝突し、多数の死傷者を出した、それが光州事件(詳しくは『光州5・18』にも書いてあります)。今なぜ光州事件なのか?という問いに対して、井上監督は今の平和ボケした日本に対する警鐘だという趣旨の答えをしていたが、果たしてそれが本当に監督の意図したモノが観客に伝わるかは疑問だ。ハッキリ言わせてもらえば、30年前に韓国で起きた事件は、それがいかに悲惨で多くの人間の体はもちろんのこと、心にまで傷痕を残したとしても、残念ながら日本人にとっては対岸の火事に過ぎないと思う。まして、『光州5・18』のように衝撃的な映像をもって直接事件を描いた作品ならともかく、この作品のように間接的な描写では、事件の悲惨さを伝えることはできないだろう。
 それはともかく、相変わらず演技を演技と思わせない、内山理名の上手さが光っている。そして、いきなり冒頭からハングル語の台詞でスタートし、ラストもハングルで終わるのだが、その流暢さは見事。ところが、その上を行く、「この人、韓国人じゃないの?」と思わせたほどネイティブのようなハングル語を披露したのが黒田福美だ。調べてみるとそれもそのはず、日本で韓流ブームが巻き起こったのは2003年の『冬のソナタ』辺りからだが、それより遙か以前の1980年代に親韓派として独学で韓国語を学び、留学までしているとのことだ。そして、柳正培を演じたキム・ウンスの暖かで包容力に溢れる人柄がにじみ出るような演技が心地よかった。