評     価  

 
       
File No. 1285  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2010年10月02日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   トム・フォード  
       
上 映 時 間   101分  
       
公開時コピー   愛する者を失った人生に、
意味はあるのか。
 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
キ ャ ス ト   コリン・ファース [as ジョージ]
ジュリアン・ムーア [as チャーリー]
マシュー・グード [as ジム]
ニコラス・ホルト [as ケニー]
ジョン・コルタハレナ [as カルロス]
ジェニファー・グッドウィン [as Mrs.ストランク]
テディ・シアーズ [as Mr.ストランク]
ポール・バトラー [as クリストファー・ストランク]
アーロン・サンダーズ [as トム・ストランク]
ケリー・リン・プラット [as 事務員]
リー・ペイス [as グラント]
リッジ・キャナイプ
エリザベス・ハーノイス
エリン・ダニエルズ
ニコール・スタインウェデル [as ドリス]
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
あ ら す じ    16年も共に暮らした愛するパートナー・ジムを失って以来8ヶ月、大学教授のジョージの悲しみと虚しさは日に日に深まるばかりだった。そしてその朝、ジョージはその悲しみの日々に自らの手で終止符を打つことを決意し、自宅のデスクから一丁のリボルバーを取り出した。
 ジョージにとっては、人生最後の一日となるはずのその日は、周囲の世界がいつもと少しだけ違って見えてきた。いつもと同じ大学での英文学の講義でも、気づかないうちに熱く信条を語る自分がいた。辟易していた隣の家の少女との会話、かつての恋人で今は良き友人であるチャーリーと過ごすひととき。そんないつもと変わらない出来事がすべてに、ジョージ今までは感じなかった喜びや慰安を覚えるのだった。
 そして、深夜に訪れた酒場では、大学の教え子ケニー出会うジョージ。昼間の講義でも、ジョージに対してただならない視線を送っていたケニーは、ジョージの秘かな決意に感づいていたのだ。そして、そんなケニーとの思いがけない成り行きに、過去ばかりを見ていたジョージの目には久しぶりに今と未来が見えてくる・・・・・。
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
たぴおか的コメント    私の最も苦手とするジャンルであるゲイの主人公をコリン・ファースが演じて、ヴェネチア国際映画祭で最優秀主演男優賞を受賞した作品。コリン・ファース演じるジョージの、愛する者を失った空虚感、それが異性ではなく同性という点でより複雑な心境が入り混じった様子が、今を生きることを諦めたことからくる一種の厭世観と倦怠感を伴ってひしひしと伝わってくる。
 ちょっと観た感じ、アメリカ映画ではなく英国映画のようなちょっとした格調の高さのような雰囲気が感じられるのも、この作品の特徴。そして、ただ淡々と静かに語られる物語が、実はたった1日の出来事だったとは、恥ずかしながら作品を観終えた後オフィシャルサイトで初めて知った。また、これは私の注意力不足によるものだとは思うが、そのシーンの時間が現在なのか過去なのか、少々戸惑う場面もあった。寝不足の身には辛い作品ではある。
 人と人との愛の形は千差万別、それは充分に解っているのだが、それでもなおゲイだけは理解できない私にとっては、ジョージの心境を察することはできないけれども、人間には自己防衛のための昇華という機能が備わっていて、失った物と必ずしも同等ではなくとも、それに見合う何かを見つけて埋め合わせをすることができるはずだ。そして、彼の身近にはいつも親友であるジュリアン・ムーア扮するチャーリーがいた。そして彼女は、間違いなくジョージを愛しているのだ。にもかかわらず、決してジョージの愛情はチャーリーに向かうことがない、それはむしろ“弱さ”ではなくジョージの“強さ”であって、それほどまでに同性に対して思い込む事ができるというのは、すでに私の理解の許容範囲を完全に超えている(笑)。
 そんな状況で、最も辛い思いをしたのは、むしろチャーリーの方だっただろう。愛する男ジョージの相手が女性だったら、あるいは競うこともできるだろうし、あるいはその相手に自分は敵わないと諦めることもできるだろうが、ジョージの相手が男性とあっては、同じ土俵に上がることすらできないのだ。自分ではどうすることもできないという焦燥感と無力感、それでいてジョージを思う気持ちは変わらない、そんな彼女がジョージと友達関係を続けているというのもまた、私に言わせれば彼女の驚くべき“強さ”の賜だろう。