評     価  

 
       
File No. 1286  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2010年10月02日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   石井 隆  
       
上 映 時 間   127分  
       
公開時コピー   女は汚れた自分の人生を、どんな手を使っても「削除」したかった。
男はたとえ彼女に殺されても、彼女を救いたかった。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   竹中 直人 [as 紅次郎]
佐藤 寛子 [as 加藤れん]
東風 万智子 [as 安斎ちひろ]
井上 晴美 [as 田中桃]
宍戸 錠 [as 山神直樹]
大竹 しのぶ [as 加藤あゆみ]
 
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あ ら す じ    とある街でバーを経営する母加藤あゆみ、その娘で姉の田中桃と、妹の加藤れんの3人。ある日、あゆみの夫の家庭内暴力に耐えかねた3人は、彼を撲殺した上に切り刻んで富士山麓の樹海にばら撒いた。ところがこの時、高価なロレックスも一緒に撒いてしまったことに気づき、桃はれんを責める。必ずロレックスは探し出すと姉に言い残したれんは、「何でも代行屋」の紅次郎を訪ね、彼にロレックスを探し出すことを依頼した。父の散骨と一緒に形見のロレックスもばら撒いてしまったと偽って。
 砂浜から米粒を探し出すような気の遠くなる作業にもかかわらず、次郎はロレックスを見つけ出すが、周囲には蠅がたかり、ロレックスには何物かの肉片がこびりついていた。不審に思った次郎は、たまたま他の事件で次郎に事情聴取をするため訪れて顔見知りになった女刑事安斎ちひろに分析を依頼した。ちひろがこのロレックスを鑑識で調べた結果、肉片は人間の物と判明するが、彼女は次郎にはネズミのものだと真実を伏せてロレックスを返却した。
 次郎の真摯な態度を気に入ったかのようなれんは、後日改めて次郎を訪ね、別の依頼を持ちかけてきた。それは、彼女にとって恩人だという“たえ”という名の女性を探すことだった。たえを探して夜の街を聞き回る次郎は、相手がたえという名に過剰に反応して警戒心を露わにすることに不信感を覚える。やがて、たえが働いていたという店を探し当てた次郎は、そこで経営者らしき男山神から、たえの居場所を聞き出すのだが・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    竹中直人がとにかく嫌いなために、劇場で観ようか迷っていたこの作品を劇場で観ることに決めた最大の理由は、「ぬ」で始まる作品が未だに洋画・邦画共に1作もなかったため。もしもこれを逃したら、「ぬ」の作品がいつになったら載せられるかわからないから(これ、冗談みたいな理由だけどホントです)。そしてもう一つは、会社の同僚から教えられた、主演の佐藤寛子の“驚異のクビレ”を確かめてみたいという、いずれにしても作品の本質とは何ら関係のない動機から劇場で観ることとなった作品だった。
 作品のジャンルが「エロティック」なのは観る前からわかっていたが、まさかスプラッタだとは思いもせず、冒頭から死体を切り刻んでバケツに詰めるなんていうとんでもないシーンを見せられたのには参った。しかも、人を殺して死体を始末するのはそれが初めてではないらしく、死体が白骨化することを「熟成」などと言ってのけて平然としているとは、全く驚きを通り越して呆れ果てた母娘たちだ。そんな母娘の中で、母・大竹しのぶと姉・井上晴美とは一線を画したような微妙なポジションにいる女性・れんを演じたのが佐藤寛子だった。
 グラビアアイドルだったとは思えない大胆な脱ぎっぷりには脱帽で、ある意味小向美奈子の『花と蛇3』よりもエロティックだったかもしれない。そして、そのれんが今まで生きてきた軌跡というのが驚くべきで、おそらくああいう環境で育ってきた人間は、もはや男をまともな恋愛対象として見ることなんてできないだろうな。だから、お人好しそうな、竹中直人扮する“何でも代行屋”の紅次郎を最初から利用するだけ利用してやろうと考えるのも当然で、次郎もまた自分の身に危険が及んでも彼女を助けようと思うのもわかる。だが、それは男の思い上がりで、いくら次郎がれんに尽くしたとしても、仮に命を差し出したとしても、れんが彼に感謝するどころか、同情すら感じることもなければ、ほんの一片の申し訳ないという気持ちすら持たないのだ。
 最初にれんが次郎に、ロレックスを探して欲しと依頼したのはわかる。が、次に“たえ”という名の女を探すことを依頼したのに何の意味があったのか、それがこの作品最大の謎として解決できないままに終わってしまった。それとなく次郎に自分の過去を調べさせて彼の同情を買い、その後の計画を手伝わせるための布石なのだろうか。