評     価  

 
       
File No. 1313  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2010年11月13日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   大谷 太郎  
       
上 映 時 間   116分  
       
公開時コピー   見えなくても
触れられなくても
あなたをずっと想いつづける
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   松嶋 菜々子 [as 星野七海]
ソン・スンホン [as キム・ジュノ]
鈴木 砂羽 [as 上条未春]
橋本 さとし [as 黒田竜二]
宮川 大輔 [as 運天の客]
黒沢 かずこ [as 運天の客]
松金 よね子 [as 運天の客]
樋田 慶子 [as スミレ(五月の姉)]
浪岡 一喜 [as 刑事]
嶋田 久作 [as 刑事]
温水 洋一 [as 救急車のゴースト]
樹木 希林 [as 運天五月]
 
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あ ら す じ    年商150億円の企業を経営する星野七海は自分の誕生パーティで飲み過ぎて、公園の噴水の前ではしゃいでいた時に、ひとりの韓国人青年キム・ジュノと出会う。ところが、彼の車で家まで送ってもらう途中で、七海は眠り込んでしまった。ジュノは七海を自宅に連れ帰ってベッドに寝かせ、自分はソファで一夜を過ごしたのだが、たその翌朝目が覚めた七海には前夜の記憶が全くなかった。自分の置かれていた状況に動揺した七海は、階下で朝食の用意をしていたジュノにいきなり平手打ちして飛び出してしまった。
 会社に出社した七海は、学生時代からの親友で今は七海の片腕として働く上条未春から前夜の顛末を聞かされて、せめて一言ジュノに謝ろうと再び彼の家を訪ねる。陶芸を学ぶために来日して1年になるというジュノの焼いたカップを一目で気に入った七海は、それ以来ジュノを手伝うために彼の家を頻繁に訪問するようになり、やがて2人は互いに愛し合うようになっていった。
 「愛している」と自分の気持ちをストレートに表現するジュノに対し、七海は「愛している」と言葉にすると今の幸せが逃げてしまいそうな気がして、どうしてもジュノにその一言を告げられなかった。そんな七海にジュノはプロポーズし、2人は山中の神父もいない古びたチャペルで結婚式を挙げるのだった。ところが、いつまでも続くと思われたその幸せを無情にも引き裂く事件は、皮肉にも2人が出会ってからちょうど1年たった七海の誕生日に起きた。
 夕刻、七海はジュノの待つ家へと帰りを急ぐ途中、バイクに乗った男にバッグをひったくられた勢いで転倒し、頭を強く打ってしまった。七海は起き上がって男を追いかけようとしたが、背後でジュノが叫ぶ声を聞いて振り向くと、ジュノは倒れて動かない七海を抱きかかえて必死に七海の名を呼んでいたのだ。その時七海は、自分が命を落としてしまい、ゴーストとなったことを知ったのだった。
 七海の葬儀の翌朝、ジュノの家に侵入者が現れる。家の中を物色するその男の顔を見た七海は愕然とした。その男黒田竜二こそ、自分の命と幸せを奪った張本人だったのだ。七海は自分の死が単なる事故によるものではなく、仕組まれたものであると思い始める。そして、黒田がジュノに危害を加えようとしていることを知った七海は、街中の看板に引き寄せられるように訪れた霊媒師運天五月に自分の声が聞こえることを知り、彼女の協力を得てジュノに危険が迫っていることを告げようとするのだが・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    ちょうど20年前の1990年にデミ・ムーア主演で製作された『ゴースト ニューヨークの幻』を日本を舞台にして設定も新たにリメイクした作品。デミ・ムーアがあまり好きはないためにオリジナルは観ていないが、そのことはこの作品を観るに当たってプラスに働いているような気がする。観る前はもっとペタなラブストーリーかと思ったら、意外にもサスペンスの色合いが濃くて、悪くない作品に仕上がっているように思う。
 主役の星野七海を演じた松嶋菜々子は、やっぱり美しかった。ドラマ『救命病棟24時』の第4シーズンではついつい若い北乃きいに目がいってしまい、松嶋菜々子の神通力もこれまでかと思われたが、この作品を観ると彼女を妻にできたジュノはこの上ない幸せ者だと思わずにはいられない。鈴木砂羽扮する上条未春が学生の頃からずっと七海の引き立て役だったというのも当然だと納得できる。そして、ジュノを演じたソン・スンホンの嫌みのない爽やかさには好感が持てて、下手な俳優を持ってこようものならば「なぜこんな奴が松嶋菜々子と!?」と思うところだが、七海の相手として観る者に不満を感じさせない説得力があった。
 星野七海は大半がゴーストとしての登場で、愛するジュノに想いを伝えたくても言葉は届かず、彼に触れたくても素通りしてしまう、そんなもどかしさがひしひしと伝わってくる。ジュノに意志を伝える唯一の手段が、樹木希林扮するインチキ霊媒師・運天五月とあってはなおさらだ(笑)。その樹木希林だが、この作品に限ってはキャスティングを誤ったのではないかという疑念がなくもない。それは彼女の演技が云々という問題ではなく、彼女のキャラクターそのものがどうしてもコミカルに映ってしまうためで、それがこの作品に果たしてふさわしいかというと私はどうしても否定的に捉えてしまう。もっとも、あのコミカルさが監督の狙いだったとしたら、私が制作側の意図をくみ取れずにいたということにはなるのだろう。
 また、細かい点は気にせずに観ればいいものを、どうしても私には細部の粗が気になってしまった。例えば、ジュノに未春が迫ろうとした時に、七海が絵付けをした花瓶が落ちて割れるシーン。七海の体はすべての物を通り抜けてしまうはずなのに、なぜ花瓶を倒すことができたのか?七海が救急車に飛び乗るシーンでは、救急車のルーフを通り抜けるのは分かるのだが、なぜ床は通り抜けずに乗車できたのか?まぁ、それを言ってしまえば、七海がソファや椅子に座ることができるのも、家の床に立っていられるのも、ビルの屋上に上ることができるのもすべて不合理だということになってしまう。多分、こんな枝葉末節の部分が気になってしまうような素直じゃない見方をするのは私だけだろうと思うが・・・・・。