評     価  

 
       
File No. 1317  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2010年11月20日  
       
製  作  国   日  本 / アメリカ  
       
監      督   松井 久子  
       
上 映 時 間   132分  
       
公開時コピー   お母さん、
私はこの子を連れて
日本という国に行きます。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   エミリー・モーティマー [as レオニー・ギルモア]
中村 獅童 [as 野口米次郎]
原田 美枝子 [as 津田梅子]
竹下 景子 [as 小泉セツ]
クリスティナ・ヘンドリックス [as キャサリン]
メアリー・ケイ・プレイス [as アルビアナ(レオニーの母)]
柏原 崇 [as 川田道彦]
山野 海 [as ハル]
大地 康雄 [as 大工の棟梁]
勅使河原 三郎 [as 彫刻家]
中村 雅俊 [as 仙田]
吉行 和子 [as キク]
山中 聡
小川 ジュリアン
温水 洋一
ノゾエ 征爾
須田 邦裕
水木 薫
六角 精児
 
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あ ら す じ    1901年。編集者になりたいという夢を抱いたレオニー・ギルモアは、フィラデルフィアの名門女子大を卒業した。編集者になりたいという夢を捨てきれないままにニューヨークで教鞭をとるレオニーはある日、新聞に編集者を募集する三行広告を見つけると、早速これに応募した。雇い主は日本から来た詩人のヨネ・ノグチ(野口米次郎)で、彼の詩や小説を共同で英訳することとなった。
 ヨネの作品は一躍脚光を浴び、彼の才能に見せられたレオニーは次第にヨネに恋愛感情を抱くようになり、やがて二人は結ばれた。ところが、日露戦争が勃発して急遽帰国することとなったヨネは、レオニーの妊娠を知らされても喜ばず、彼女を置き去りにするように日本へひとり帰国してしまった。母・アルビアナの住むカリフォルニアに移ったレオニーは男の子を出産するが、日本人に対する人種差別は激しく、一方でヨネからは日本へ来るよう誘う手紙が頻繁に届いており、レオニーは彼の誘いを受けて日本に行くことを決意するのだった。
 レオニーと再会したヨネは、レオニーが連れてきた3歳になる我が子にイサムと名付け、2人が暮らすための住まいを用意し、そこで英語を教えるよう取りはからってくれた。しかしある日、ヨネには正式な日本人の妻がいることを知ったレオニーは激怒し、イサムを連れて家を出てしまう。そして、小泉八雲妻・小泉セツの元に身を寄せていた時、悲しい出来事を知らせる手紙が親友のキャサリンから送られてきた。母・アルビアナが亡くなったのだ。それと同時に、レオニーはお腹に新しい命が宿っていることに気づく。女児を出産したレオニーは彼女にアイリスと名付けるが、ヨネの執拗な追求にもかかわらず父親が誰なのかを決して明かそうとはしなかった。
 やがて成長したイサムに芸術の才能を見いだしたレオニーは、彼を単身アメリカへ送り出す決意をする。しかし、折悪く第一次世界大戦が勃発し、戦時下の日本へはイサムからの手紙も届かなくなり、母子の連絡は途絶えてしまうのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    世界的な彫刻家イサム・ノグチの母レオニー・ギルモアの生涯を描いた伝記的作品。恥ずかしながら私は、この作品に出会うまでイサム・ノグチという彫刻家の存在すら知らなかった。ただ、日系の世界的な彫刻家を産んだ母親の波乱に富んだ人生というやつがどれほどの物なのかを知りたい思いで劇場へ向かってみた。
 出会いの頃はとにかくレオニーを誉めてひたすらアプローチを試みるが、いざレオニーを手に入れてしまったら、あくまで彼女は2号扱い。そんな男の風上にも置けないような男・ヨネこと野口米次郎という役柄は中村獅童にピッタリ、というより、彼以外にこんな不埒者を演じられる役者を私は知らない(笑)。松井監督が米次郎は中村獅童のハマリ役だという趣旨の発言をしたらしく、本人はインタビューに答えて「喜んでいいのか悪いのか複雑だ」みたいなことを言っていたが、大いに喜ぶべきだ。もはや世間は君をそういう目でしか見ていないことをこの際認識すべきだ、と本人に言ってやりたかったな(なんて、万が一その機会があっても現実には言えるわけないけどね)。
 主役のエミリー・モーティマーの魅力も手伝ってか、この手の伝記作品が苦手で、たいていは睡魔に襲われてしまう私が観ても眠気など全く感じることなく、132分という若干長めの尺にもかかわらず最後まで集中することができたのは、及第点に値する作品であるということになる・・・・・・かな?(笑)。ただ、この作品はノン・フィクションではなく随所にフィクションが織り込まれているので、本格的な伝記作品として観るべきか、それともあくまでドラマとして観るべきか、判断に苦しむ作品ではある。
 日本という極東の未知なる島国へ行こうと決意したレオニーの勇気は、自分は根っからの日本人だから、海外へなど出る必要はない、などというヘリクツで海外へ出ようとしない私には真似できるものではない(笑)。ただ、津田塾大の創始者である津田梅子や、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の未亡人・小泉セツら、外国に対して偏見も持たず英語も堪能な女性たちに出会えたことは、彼女にとっては実に幸運だったと言えるだろう。その意味では、彫刻家イサム・ノグチの誕生にはレオニーの存在はもちろん不可欠だったが、同時に当時としては先進的で利発な思考のできる日本人女性たちが寄与した割合がかなり大きいということになる。