評     価  

 
       
File No. 1324  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2010年12月04日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   森田 芳光  
       
上 映 時 間   129分  
       
公開時コピー   刀でなく、そろばんで、家族を守った侍がいた。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   堺 雅人 [as 猪山直之]
仲間 由紀恵 [as 猪山駒]
松坂 慶子 [as 猪山常]
西村 雅彦 [as 西永与三八]
草笛 光子 [as おばばさま]
伊藤 祐輝 [as 猪山成之]
藤井 美菜 [as 猪山政]
大八木 凱斗 [as 猪山直吉(後の成之)]
嶋田 久作 [as 大村益次郎]
宮川 一朗太
小木 茂光
茂山 千五郎
中村 雅俊 [as 猪山信之]
 
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あ ら す じ    江戸時代、百万石の加賀藩には、そろばんをもってお家の財政を支える御算用者と呼ばれる専門職の侍たちが数多く存在した。その中の一人、代々御算用者として藩に仕える猪山家の八代目・猪山直之は、生来の数学的な才能に恵まれたこともあり、日々職務を全うすべくただひたすらそろばんを弾くその姿は、周囲から“そろばんバカ”と呼ばれるほどだった。
 ある日、そんな直之に縁談が持ち込まれる。相手は彼が通う道場で剣の指南を受けている町同心・西永与三八の娘・お駒だった。剣もからきし駄目でそろばんしか生きる術を持たない、そんな直之にお駒は「生きる術の中に私も加えてください」と応える。こうして直之は、お駒を嫁に迎えることとなった。
 御蔵米の勘定役に任命された直之は、飢饉に苦しむ農民たちを救うための“お救い米”の量よりも、実際に農民に配られている米の量が少ないことを不審に思い、得意のそろばんを使って米の帳簿を調べ始めた。その結果、農民に渡るべき米が横流しされ、城の役人が私腹を肥やしていることが判明した。しかし、その結果を報告したところ、直之は不正に関わっていた上役から能登への左遷を言い渡されてしまう。幸い米の横流しが勘定役の調べで明らかになると、直之の左遷は白紙撤回された上に、異例の昇進を遂げるのだった。
 ところが、直之の息子直吉が4歳になり、嫡男を武士としてお披露目することになったが、その時すでに猪山家の家計が窮地に追い込まれていることを直之は知る。そこで直之は、猪山家の家財一切を売り払った上で、今後は家計簿を毎日きちんとつけて倹約生活を送ると家族に宣言するのだった・・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    江戸時代末期に実在したそろばん侍・猪山直之の一代記。堺雅人扮する直之が、いかにして算盤を使って家を支えたかを描いた作品だと思っていたのだが、観てみると当たらずといえども遠からず、直之個人というよりも猪山家一家の物語という印象が強く、なんだか凡庸なホームドラマを見せられたような気がしてちょっと拍子抜けしてしまった。
 舞台は加賀百万石・前田藩で、当時の財政などただ年貢を取り立てて使いたいように使っていたのだろうと思っていたが、実はきっちりと出納を掌る部署(=御算用場)があり、しかもそこで常時100名以上の算盤侍が算盤をはじいていたという事実には驚かされた。そんな中で、数字が合わないことが我慢できないという直之の生真面目さは理解できるものの、所詮はごまめの歯ぎしりで、彼一人では藩の財政をどうすることもできなかっただろう、そんな歯がゆさを覚える。いくら三代にわたって御算用方を勤めている家柄とはいえ、武士たる者本分である剣で立身出世を考えなかったのだろうか?
 仲間由紀恵は某国営放送の大河ドラマで主役を張っただけあって、時代劇の演技もすっかり板に付いていて安心して観ていられる。これで直之の息子・直吉役に加藤清史郎君でも配しようものなら、あざとく感じてしまっただろうから、大八木凱斗君のキャスティングは逆に新鮮で好感が持てる。
 ストーリーは直之の息子・成之のナレーションで進行するのだが、であるならばもっと父子の相克を深く掘り下げてもらいたかったのだが、残念ながら構成に奥行きがないために、淡々と味気なく感じられてしまう。題材は悪くないだけに、もっと深く掘り下げていたならばと思われるのが残念だ。