評     価  

 
       
File No. 1326  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2010年12月11日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   トラン・アン・ユン  
       
上 映 時 間   133分  
       
公開時コピー   深く愛すること。
強く生きること。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   松山 ケンイチ [as ワタナベ]
菊地 凛子 [as 直子]
水原 希子 [as 緑]
高良 健吾 [as キズキ]
霧島 れいか [as レイコ]
初音 映莉子 [as ハツミ]
柄元 時生 [as 突撃隊]
糸井 重里 [as 大学教授]
細野 晴臣 [as レコード店店長]
高橋 幸宏 [as 阿美寮門番]
玉山 鉄二 [as 永沢]
 
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あ ら す じ    親友・キズキが自殺を図り、かけがえのない者を失った喪失感にさいなまれるワタナベは、高校を卒業すると誰も知る者のいない場所・東京の大学に進学し、新しい生活をスタートさせた。そしてある日、思わぬ人物と再会する。それは、死んだキズキの恋人の直子だった。
 最初はワタナベは親友、直子は恋人という、お互いに大切なものを失った同士という関係だった2人だが、何度か逢う回数を重ねるごとに、ワタナベは次第に直子に惹かれていく。そして、直子が二十歳になる誕生日の夜、二人は体を重ねる。しかし、ワタナベの直子に対する思いはますます募る一方なのに対し、直子はワタナベへの思いとキズキを失った喪失感とのバランスを取れずに、ついに京都の精神療養所に入院してしまった。
 ワタナベは大学で、直子とは対照的な小動物のように生き生きとした学生・と知り合う。緑に対して好感を抱きながらも、ワタナベの直子に対する想いは、以前より強くなることはあっても弱まることは決してなかった。そして直子から、ワタナベと対面できるまでに回復したから会いに来て欲しいとの手紙が届く。しかし、この再会を機に直子の精神状態は以前にも増して不安定になっていく・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    う〜ん、何ともコメントし難い作品だ。キャスティングについて言えば、マツケン(松平健ではない・・・・・しつこいカナ?)や水原希子はともかくとしても、直子役の菊地凛子はミスキャストだとしか思えない。実は、何度も劇場で予告編を見せられて、私はてっきりマツケン扮するワタナベが、年上の女性直子と不倫のような関係に陥るのではないかと思っていたのだ。ところが、蓋を開けてみればワタナベと直子は同い年の二十歳・・・・・菊地凛子の二十歳はどう見ても無理。水原希子が実年齢も二十歳だけに、2人を比較してしまうと余計にその無理が際立って見えてしまう。
 原作である小説と映画はあくまで別物だから、ここでの評価はあくまで映画に対するものであって、決して原作の小説自体を批判しているわけではないことを念を押したうえで、この作品が「好きか否か」と質問されれば、私は迷わず「否」と答えると思う。確かに、昭和30年代〜40年代の雰囲気を巧みに表現した映像は見事だと思うが、正直言えば菊地凛子扮する直子も、水原希子扮する緑も、さらには高良健吾扮するキズキさえも私にとっては宇宙人で理解不能だ。当時の若者は、本当にあれほど難解な生き物だったのだろうか?キズキが自殺した理由も、作品中では明確にはされていないため、自分なりに想像するしかないのだが、あのシチュエーションで唐突に自殺されても理由は想像もできない。そして、直子の放つ隠微な雰囲気淫靡な雰囲気は、一体何なんだろう。二十歳そこそこの女性の持つ若々しさや健康的な美しさが見られず、代わりに彼女から感じるのは退廃的な淫靡さそして隠微さばかり。対する緑の健康的な美しさこそが、二十歳の女性の本来の魅力で、それに惹かれずにひたすら直子を思うワタナベの心情もまた、私にとっては謎だ。
 ただ、その緑にしても思考回路は現代の女性のそれに感じられ、今から50年ほども昔の女性というにはあまりに違和感を感じさせる・・・・・なんて偉そうな言葉を吐いている私も、50年前の女性の考え方など知るはずもないのだが(笑)。
 この作品を観終えて感じたのは、登場人物が直子や緑を筆頭に揃いも揃って“面倒くさい”奴だということだ。私は当然主人公のワタナベの立場に立って、彼に感情移入しながら観ていたわけだが、観終えた時の疲れ方がハンパじゃない。果たして、人と人が触れ合うことはこれほどに面倒でややこしいモノだったのだろうかと、下手をすれば人間嫌いに陥ってしまいかねない。おそらくはそこが村上春樹氏の洞察力と人間描写の深さなのだろうと思う。が、残念ながら作品を観る前には原作を読んでみようと思っていた気持ちが、観終えた後は雲散霧消してしまった。