評     価  

 
       
File No. 1334  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2010年12月11日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ウディ・アレン  
       
上 映 時 間   91分  
       
公開時コピー   これぞ、
ハッピー・エンディング
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ラリー・デヴィッド [as ボリス]
エヴァン・レイチェル・ウッド [as メロディ]
パトリシア・クラークソン [as マリエッタ]
ヘンリー・カヴィル [as ランディ]
エド・ベグリー・Jr [as ジョン]
マイケル・マッキーン [as ジョー]
コンリース・ヒル [as レオ]
ジョン・ギャラガー・Jr [as ペリー]
ジェシカ・ヘクト [as ヘレナ]
キャロリン・マコーミック [as ジェシカ]
クリストファー・エヴァン・ウェルチ [as ハワード]
オレク・クルパ [as アル]
 
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あ ら す じ    かつてはノーベル賞候補にノミネートされた優秀な物理学者だったボリスは、今はすっかり落ちぶれて近隣の友人たちと他愛ない会話を交わして毎日を過ごしていた。ある夜アパートに帰ってきたボリスは、南部の田舎町から家出してきた若い娘メロディに食べ物を分けて欲しいと頼まれる。仕方なしに彼女を部屋に上げると、メロディは今度は行く当てもないからここに泊めて欲しいと言う。早く仕事を見つけて出て行くことを条件に、ボリスは渋々しばらくの間彼女を居候させることにするのだった。
 若いメロディにとって、ボリスが口にする理屈は耳新しく興味深いものだった。そして、しばらくボリスと暮らすうちに、あろうことか親子以上に年の離れたボリスに対するメロディの気持ちは好意を通り越して、彼を運命の人だと勘違いしてしまう。やがてメロディに押し切られた形で、2人はめでたく(?)結婚してしまうのだった。
 メロディとの結婚生活は、ボリスにとって思いのほか心地のいいものだった。ところが、ある日夫に親友と浮気されたために家を売り払ってニューヨークへやって来た、メロディの母親マリエッタが2人のアパートを訪ねてきてから、2人の平穏だった生活に変化が訪れる。ボリスを娘の夫と認めないマリエッタは、カフェで出会ったイケメンの好青年ランディをメロディにあてがおうと画策する。そして、マリエッタの後を追って、今度はメロディの父ジョンもまた2人のアパートに押しかけてくるのだった。
 マリエッタには既に2人の恋人との生活があり、ジョンを許して受け入れる余地など存在しなかった。また、メロディもボリスよりも若くて魅力的なランディに、夫がいる身だとはわかりながらも惹かれていく自分を抑えることができなかった。事態はますます複雑になる中、彼らそれぞれの想いの行方はいったいどこへ・・・・・?
 
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たぴおか的コメント    なんだか久しぶりにウディ・アレンらしいウイットと毒気の利いた作品を観たような気がする。彼自身はこの作品には出演していないものの、主人公・ボリスは明らかにウディ・アレン自身の投影図に違いない。頭はいいがニヒリストで厭世主義の毒舌家、人は一人では決して生きていけないことを知り、実際に自分も一緒にそばにいてくれる誰かを欲しながらも、人と上手く接するのが苦手で自分は人間嫌いだと思い込もうとしている、そんな一言で片付けるなら「偏屈者」のボリスを演じたラリー・デヴィッドが実にハマリ役だ。そんなボリスが20歳そこそこのメロディに思いを寄せられるという設定も、ウディ・アレンの願ってやまない願望の表れなのだろうかと邪推したくなる(笑)。
 メロディを演じたエヴァン・レイチェル・ウッドの驚くべき可愛さがやたらと光っていた。彼女の名前は何度か目にした記憶があるのにもかかわらず、彼女を映画の中で観た覚えがないためWebで調べてみたところ、『レスラー』でミッキー・ローク扮するランディの娘・ステファニー役でお目にかかっていたことを知った。彼女が記憶に残っていなかったのは、『レスラー』ではブルネットだった彼女がこの作品ではブロンドで、印象がガラッと変わっているためだろう。もちろん私はブロンドの彼女の方が断然似合っていると思う。年齢もメロディと同じ20歳そこそこで、彼女のこれからが非常に楽しみだ。
 それにしても、ボリスと出会う人たちが、皆それぞれ本来の自分に目覚めていくのが面白い。まぁ、現実にはあれほどすべて丸く収まることなどあり得ず、必ず修羅場を迎えるものだが(笑)、コピーにも「これぞ、ハッピー・エンディング」とあるのだから、コメディ作品ならではのこういった結末も悪くない。なんだかんだ言っても、一人じゃなくなった途端に一人では生きていけなくなったボリスもまた、彼が「尺取り虫並」だとけなす知能指数の人々と何ら違わない、いわゆる“普通の”人間だったのだ。