評     価  

 
       
File No. 1335  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2010年12月04日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ポール・T・シュアリング  
       
上 映 時 間   97分  
       
公開時コピー   わずか6日で中止になった
実在の“心理実験”
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   エイドリアン・ブロディ [as トラヴィス]
フォレスト・ウィッテカー [as バリス]
カム・ジガンディ [as チェイス]
クリフトン・コリンズ・Jr. [as ニックス]
イーサン・コーン [as ベンジー]
マギー・グレイス [as ベイ]
フィッシャー・スティーヴンス [as アルカレータ]
トラヴィス・フィメル [as ヘルウェグ]
ジェイソン・リュウ [as オスカー]
デヴィッド・バンナー [as ボッシュ]
ダミエン・リーク [as ガヴェナー]
ロッド・マイオラーノ [as レックス]
 
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あ ら す じ    福祉施設での掃除の仕事を解雇されてしまったトラヴィスは、反戦デモで出会った女性ベイと恋に落ちる。ヨガに凝っていたベイは、本格的なヨガ修行をするためにインド行きをトラヴィスに持ちかけるが、無職のトラヴィスにはインドへの旅費を工面するあてがなかった。そんな時、トラヴィスの目に留まったのは、日給1,000ドルという高額な報酬の求人広告だった。
 早速トラヴィスが説明会に訪れると、行われるのは心理実験で、「極めて安全な環境で行われるため危険はないが、人権を侵害する可能性がある」との説明を受ける。実験の被験者に志願したトラヴィスは、温厚で人の好さそうな紳士バリスと知り合い、彼と共にいくつかのテストと面接を経て2人とも被験者として合格した。合計24名の合格者たちは、後日1台のバスに乗せられて、実験会場となるとある建物へと連れて行かれるのだった。
 実験の内容は簡単で、集まった被験者は主催者側の基準によって看守役と囚人役に分けられ、模擬刑務所で14日間それぞれの役割に則って過ごすというものだった。彼らは24時間監視カメラによって観察され、暴力行為があれば警告の赤ランプが点灯して実験は中止、報酬は一切支払われないという。トラヴィスは気の弱そうなゴラフィック・ノベル・ライターのベンジーや、受刑の経験があることを隠して参加しているニックスらと共に囚人役が割り当てられ、バリスら数名が看守役に回ることとなった。
 最初は軽い気持ちで実験に臨んだ被験者たちに、やがて看守側の被験者に変化が現れてくる。それが最も顕著だったのはバリスで、彼は看守としての優位性を保つために、暴力は一切禁じられていたことから、囚人たちのプライドを踏みにじるような屈辱的な罰を次々と課していく。やがて囚人たちの中にも看守に対する反感が芽生えていき、特にトラヴィスとバリスの対立はもはや解消することはできないほどの極限状態に達していた。そして、ついに看守側に殴打されてベンジーが死んだことで、人数では圧倒的優位にある囚人側の怒りは頂点に達し、看守たちに向けて怒濤のごとく襲いかかる・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    観終えた後に解消されない大きな疑問が2つ残る。ひとつは、実験を行った団体とは何者でその目的は何だったのか。もうひとつは、実験が6日で中止になったにもかかわらず、なぜ14日分の満額である14,000$の報酬が支払われたのか。これがもしフィクションならば、その脚本の杜撰さに思い切り突っ込みを入れたいところだが、残念ながらこの話は実話ということで、真相は未だにわかっていないのだろう。
 それにしても看守側の被験者たちの、囚人側の被験者たちに対する仕打ちはあまりに酷くないか?実際の刑務所でもあれほどの人間性を微塵も顧みないような卑劣な体罰は行われないだろう。特に、エイドリアン・ブロディ扮するトラヴィスが、単なる水責めならまだしも、便器に顔を押し込まれるシーンでは、それが実際に使われていた便器でないことがわかっていてもなお、観ているこっちの気分まで悪くなってきそうだ。
 最初は人の好の好さそうな紳士バリスが、看守側に立った途端に手のひらを返したように囚人たちを虐げ始める、そんな人間の弱さの裏返しのような権力への依存を、フォレスト・ウィッテカーが実に見事に演じてくれている。「コイツ、絶対に殺してやりたい」とまで観ている者に思わせる凄さには脱帽で、ダテにオスカー主演男優賞を受賞していないんだと言わんばかりの迫真の演技だ。おかげで、トラヴィスバリスに馬乗りになってボコボコに殴りつけるシーンでは溜飲が下がる下がる(笑)。
 それと、意外だったのは、これまたオスカー俳優のエイドリアン・ブロディ。もっと線の細い華奢な役者だと思っていたのだが、実は目を見張るほどの精悍な体?の持ち主だったのだ。顔が細いせいもあるんだろうけど、着やせするとはまさに彼のような人のことを言うんだろうな。