評     価  

 
       
File No. 1369  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2011年02月19日  
       
製  作  国   フランス / イタリア  
       
監      督   アッバス・キアロスタミ  
       
上 映 時 間   106分  
       
公開時コピー   夜にたどりつけない男と女
 
秋深い南トスカーナの美しい街。
偽りの“夫婦”は、結婚聖地で“愛”の迷路を彷徨う・・・
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ジュリエット・ビノシュ [as エレ]
ウィリアム・シメル [as ジェームズ・ミラー]
ジャン=クロード・カリエール [as 広場の男]
アガット・ナタンソン [as 広場の女]
ジャンナ・ジャンケッティ [as カフェの女主人]
アドリアン・モア [as 息子]
アンジェロ・バルバガッロ [as 通訳]
アンドレア・ラウレンツィ [as ガイド]
フィリッポ・トロジャーノ [as 花婿]
マニュエラ・バルシメッリ [as 花嫁]
 
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あ ら す じ    イタリア、南トスカーナ地方の街アレッツォ。イギリス作家ジェームズ・ミラーの新作『贋作』の講演に訪れたのは、息子を連れたフランス人女性のエレ。彼女はジェームズの知り合いと思われる男性にメモを託すと、講演の途中で息子を連れて立ち去ってしまった。
 自らの経営するギャラリーで、彼女はジェームズと再会する。どうやら2人は旧知の間柄のようだ。エレの案内で2人は美術品の宝庫である美しい村ルチンやーのへと車を走らせた。交わす会話もどこかぎこちない2人だったが、ジェームズにせがまれて立ち寄ったカフェで、女主人から夫婦だと勘違いされた2人は、あたかも長年連れ添ってきた夫婦であるかのように振る舞うようになった。
 しかしやがて、偽りの関係から抜け出そうとするエレと、それに反してあくまで現実の世界を堅持しようとするジェームズは、互いの間に大きな隔たりがあることを認めざるを得なくなっていく・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    例によってジュリエット・ビノシュが主演という以外は何の予備知識もなく劇場に臨んだのだが、てっきり絵画か何かの贋作にまつわるサスペンスじゃないかという予想を大きく裏切り、下世話な言い方をすれば単なる男と女の痴話喧嘩を延々と描いたような内容には少々面食らった。そういう意味では、イーサン・ホークとジュリー・デルピーの『恋人たちの距離』と似たようなシチュエーションと言えるかもしれない。そして、さらに驚かされたのが作品のエンディング。今まで数多くの映画を観てきたが、トイレで用を足しているシーンで終わる作品はこれが初めての経験だった(厳密には、トイレの窓から見える教会の鐘とその音がラストを締めくくっているとも言えるが)。奇をてらったわけじゃないだろうが、もうちょっとマシな終わらせ方にできなかったものだろうか(笑)。
 御年47歳になるジュリエット・ビノシュだが、さすがに静止画像だと年齢を感じさせるものの、スクリーン上で動き回る彼女はまだまだ若々しく、可愛らしいと言える魅力的な女性だ。そんな彼女にさえ今はもう心を動かすことがないジェームズを演じたウィリアム・シメルは、本職は俳優ではなくイギリスでは非常に著名なバリトン歌手とのこと。どうりで台詞がほとんど英語なわけだ。
 ジュリエット・ビノシュ扮するエレとジェームズの関係がわからないままにストーリーが進行していくのがこの作品の見所になっている。2人は一体どういう関係なのか、観ている者は否が応でもその点に興味を持ち、あれこれ想像しながら2人に引きずられていくことになる。やがて、2人が議論した贋作と真作と同様に、観ている者も何が真実で何が偽物なのか、その境界線を失っていくという、奇妙な感覚に囚われることになる。二転三転する2人の関係は、夫婦なのかそれとも恋人なのか、あるいは単なる友人なのか・・・・・。