評     価  

 
       
File No. 1385  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2011年04月02日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ソフィア・コッポラ  
       
上 映 時 間   98分  
       
公開時コピー   どうしてだろう、
娘との時間が美しいのは。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   スティーヴン・ドーフ [as ジョニー・マルコ]
エル・ファニング [as クレオ]
クリス・ポンティアス [as サミー]
ララ・スロートマン [as レイラ]
クリスティーナ・シャノン [as バンビ]
カリサ・シャノン [as シンディ]
アマンダ・アンカ [as マージ]
エリー・ケンパー [as クレア]
ミシェル・モナハン [as レベッカ]
 
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あ ら す じ    LAの“ホテルシャトー・マーモント”で独り気ままな生活を送る、ハリウッドの映画スタージョニー・マルコ。フェラーリを乗り回し、パーティでは酒と女に溺れ、部屋にポールダンサーを呼ぶ、そんな派手で豪華な暮らしの裏では、救いようのない空虚感と孤独を抱えて生きていた。ある朝ジョニーは、骨折した腕のギプスに誰かが悪戯書きをする気配で目を覚ます。彼のギプスにマジックでサインしていたのは、別れた前妻・レイラに引き取られた娘のクレオだった。
 1日だけクレオを預かった後、再び空虚な生活に戻ったジョニーの元へ、再びクレオが訪ねてくる。そしてジョニーは、急な用事で家を空けるため、キャンプまでの間クレオを預かって欲しい、とレイラから頼まれる。イタリアで行われる授賞式にクレオを伴って出席したジョニーだったが、盛大なパーティに疲れ果ててクレオと一緒に逃げるようにホテルの部屋へ戻るのだった。
 その翌日からは、クレオと2人だけの父娘水入らずの静かだがこの上なく満ち足りた時間が流れ始める。それは普通の父娘であればごく当たり前の時間かもしれないが、クレオと離れて暮らすジョニーにとっては、今までの空虚な生活を埋めてくれる何物にも替え難い時間だった。けれども、そんな時間はあっという間に過ぎ去り、やがてクレオと別れる時が訪れる・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    前作『マリー・アントワネット』で大コケした感のあるソフィア・コッポラ監督が、本来の彼女らしい路線に戻ったおかげか、2010年のヴェネチア国際映画祭でグランプリである金獅子賞を獲得した作品。だからといって心底感動するような作品ではないのだが、父親と娘の触れ合いを静かに描いた作品は観ていて心地いい。そして、この作品で私が注目点として挙げたいのは、言うまでもなく主演のスティーヴン・ドーフではなく彼の娘を演じたあのダコタ・ファニングの妹エル・ファニングだ。
 姉・ダコタよりも顔の輪郭も体型も細く、あまり似ていないような気がする妹・エルだが、こと演技力に関しては姉同様に優れたものを持っているようだ。今回は演技力だけではなく、相当に訓練を積んだと思われるフィギュア・スケートの見事な演技も披露してくれている(さすがにジャンプはなかったけど)。ある朝突然見知らぬ女性と朝食の席で一緒になってもうろたえることなく、かといって文句を言うわけでもなく、自然に受け入れてしまう天真爛漫さが観ていて眩しく、観ている者は彼女が自分の娘でなかったとしてもたまらなく愛おしく感じてしまうのは間違いない。
 ジョニーが酒と女に溺れて暮らしていたのは、明らかに孤独であることにを紛らわせようとする一種の昇華作用だ。そして、思わぬことからクレオと10日以上にも及んで過ごした結果、その日々が与えてくれた充実感や満足感は、クレオと再び離れてしまうともはや以前のような生活では決して埋め合わせができない物であることに初めて気づく。だからこそ、ジョニーはレイラに泣きながら電話をかけたのだ。あまりにも当たり前であるが故につい忘れがちになってしまう、そんなかけがえのない大切な物を気づかせてくれる、ハートウォーミングな佳作だった。