評     価  

 
       
File No. 1403  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2011年04月30日  
       
製  作  国   フランス / ド イ ツ / ベルギー / カ ナ ダ  
       
監      督   ジャコ・ヴァン・ドルマル  
       
上 映 時 間   137分  
       
公開時コピー   人生の選択には、意味がある  

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最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
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キ ャ ス ト   ジャレッド・レト [as ニモ・ノーバディ]
サラ・ポーリー [as エリース]
ダイアン・クルーガー [as アンナ]
リン・ダン・ファン [as ジーン]
リス・エヴァンス [as ニモの父親]
ナターシャ・リトル [as ニモの母親]
トビー・レグボ [as 15歳のニモ]
ジュノー・テンプル [as 15歳のアンナ]
クレア・ストーン [as 15歳のエリース]
トマ・バーン [as 9歳のニモ]
オードリー・ジャコミニ [as 15歳のジーン]
ローラ・ブリュマーニュ [as 9歳のアンナ]
アラン・コーデュナー [as フェルダイム医師]
ダニエル・メイズ [as ジャーナリスト]
マイケル・ライリー [as ハリー]
ハロルド・マニング [as テレビの司会]
エミリー・ティルソン [as イヴ]
ロリーヌ・スキーアン [as ジョイス]
アンダース・モリス [as ノア]
パスカル・デュケンヌ [as ヘンリー]
ノア・デ・コスタンツォ [as 5歳のニモ]
キアラ・カゼッリ [as クララ]
レア・トーナス [as 9歳のエリース]
アナイス・ヴァン・ベル [as 9歳のジーン]
ロビン・キャレット [as 18ヶ月のニモ]
 
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あ ら す じ    ニモが目を開けると、目の前には顔中に奇怪な模様を施した医師フェルドハイムがいた。彼はニモに年齢を尋ねる。1975年生まれの34歳だ、と答えたニモに、フェルドハイムは自らの手を、そして、目の前にある鏡を見るよう告げた。そこは2092年の近未来で、ニモは117歳の老人だった。しかも、細胞が永久再生される不死の世界において、ニモは全国民から注目されている“最後の死ぬ人間”だったのだ。
 ある日ニモの元へひとりの新聞記者が訪れる。そして記者はニモに、不死となる以前の世界について質問してきた。ニモは、記憶をたどり過去へと遡っていく。
 9歳のニモの前には、ベンチに腰掛けた3人の少女がいた。赤い服を着たアンナ、青い服を着たエリース、そして黄色い服を着たジーンで、いずれもニモの人生に深く関わってくる少女たちだ。そして、117歳のニモの記憶の中には、3人の女性それぞれと過ごした日々が別々に存在した。
 そんなある日、ニモは自分の母親がアンナの父・ハリーと密会しているのを目撃してショックを受ける。そして、そのことが原因なのかニモの両親は不仲となり、ついに決裂してしまう。プラットホームで戸惑う9歳のニモ。やってきた電車に乗り込む母と、プラットホームでそれを見ている父。ニモは母と電車に乗るか、それとも父と残るかという選択を迫られる・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    いやぁ〜マイッタ、まるでスタンリー・キューブリックの映像を観ているような、非常に難解な作品だった。総製作品50億円、脚本6年、撮影半年、編集1年半という数字から、監督がこの作品にかけた意気込みがわかるような気がする。不死の社会と117歳の老人、問われるたびに異なる彼の歩んできた人生。それらを描き出す圧倒的な映像美。この作品のアウトラインを述べれば、そんなところになるだろう。
 誰の人生でも必ず節目節目で何らかの選択を迫られる。いわば人生とは選択の積み重ねと言っていいかもしれない。主人公のニモの場合、最大の選択は9歳の時に別れた両親のうち母親について行くか、あるいは父親と残るかというものだった。そして次の選択は15歳の時。9歳で出会った3人の少女、アンナ、エリース、ジーンのうち、誰を生涯の伴侶として選ぶかという選択だ。そして、彼が何を選択するかによって、その後の彼の人生だけではなく世界もまた大きく変わってしまうのであり、その根底にはカオス力学系における“バタフライ・エフェクト”の概念(通常なら無視できると思われるような極めて小さな差が、やがては無視できない大きな差となる現象)が存在する。その典型的な例は、彼が安物のジーンズを買ったがために巡り巡って雨が降り、アンナから渡された連絡先のメモのインクが雨に流されてしまったことだ。
 117歳のニモが語ったように、「すべては9歳の少年の考え出したこと」。母を選ぶかそれとも父を選ぶか、自分の相手としてアンナを選ぶか、エリースを選ぶか、それともジーンを選ぶか。その選択それぞれに異なる結果が伴う。「何も選択しなければ、選択の余地が残される」というニモの台詞があるが、ある意味“選択しない”こともまた選択のひとつだと思う。そうして選択を重ねた結果が、ニモ老人が語った12通りの人生であり、どれが真実でどれが空想なのかはわからない。が、現在に至る真実も含めてすべてが9歳の時の選択に起因している、だから「すべては9歳の少年の考え出したこと」なのだ。
 117歳のニモを演じた役者が誰だったか気になっていたのだが、信じられないことにジャレッド・レトの特殊メイクだった。また、ニモを取り巻く3人の女性のうち、アンナが圧倒的に魅力的で、中でも15歳のアンナを演じたジュノー・テンプルの可愛さが群を抜いている。通常ならば子役が可愛いと、成長した時の女優とのギャップが目について仕方ないのだが、この作品ではその後のアンナを演じた女優も負けず劣らず美人だったから、違和感を感じることもなかったが。エンド・クレジットで成長したアンナ役の女優がダイアン・クルーガーと知って、なるほどと納得できた反面、彼女だと気づかなかったのは不覚だったと反省(笑)。