評     価  

 
       
File No. 1405  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2011年05月07日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   片山 修  
       
上 映 時 間   126分  
       
公開時コピー   生きる。

標高3,190m 気温-25℃
命は、命でしか救えない。

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

最初に観たメディア  
Theater Television Video
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
キ ャ ス ト   小栗 旬 [as 島崎三歩]
長澤 まさみ [as 椎名久美]
佐々木 蔵之介 [as 野田正人]
石田 卓也 [as 阿久津敏夫]
矢柴 俊博 [as 座間洋平]
やべ きょうすけ [as 安藤俊一]
浜田 学 [as 関勇]
鈴之助 [as 守屋鉄志]
尾上 寛之 [as 遭難する青年]
浪岡 一喜 [as 三歩の親友]
森 廉 [as 青木誠]
ベンガル [as 遭難者の父]
宇梶 剛士 [as 横井修治]
小林 海人 [as 横井ナオタ]
光石 研 [as 梶一郎]
中越 典子 [as 梶陽子]
石黒 賢 [as 椎名恭三]
市毛 良枝 [as 谷村文子]
渡部 篤郎 [as 牧英紀]
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
あ ら す じ    北アルプス山系で山岳救助のボランティアをしている島崎三歩。世界中の名だたる名峰を登り歩き、誰よりも山をよく知る三歩が最初に背負った遺体は彼の親友で、彼が涙を見せたのはその時が最初で最後だった。以来、大きな包容力で「よく頑張った」と、救助者を笑顔で労う三歩だった。
 そんな三歩が暮らす山で、彼の先輩・野田正人が隊長を務める救助隊員に、新人の椎名久美が配属になる。久美の父親・椎名恭三がかつては隊長を務めた救助隊だったが、ある悪天候の日に隊員を制して自ら単身救助に向かったまま、恭三は帰らぬ人となってしまった。久美は自分の幼稚園の卒園式にも仕事で出席してくれなかった、そんな父親に複雑な感情を抱いていた。
 ある日、休暇中の久美は偶然遭難現場に遭遇する。待機するようにとの野田の命令にもかかわらず、遭難者を背負って岩壁を登ろうとする久美だったが、脱力した遭難者は久美にとってあまりに重かった。そして、思うように岩壁を登れずにいる久美の背中で、遭難者は息を引き取ってしまう。久美は遭難者を助けられなかった自分の無力さを痛感すると共に、遺体を単なる物のように扱った三歩たち人のが命を軽視しているのではという疑問を抱くようになる。
 やがて冬が訪れ、急激に天候が悪化した雪山で多重遭難が発生する。しかも、“爆弾”と呼ばれる大型の低気圧が接近しており、山は猛吹雪に包まれていた。一人でも人手が足必要な中、野田は久美に梶一郎陽子の父娘の救助に向かうよう命じるのだが・・・・・。
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
たぴおか的コメント    近頃の登山ブームとかで、猫も杓子も気安く山に昇る傾向があるが、その気安さがどれほど危険な結果を招くかを、にわか登山ファンはこの作品を観て認識する必要がある。気軽にスニーカーで登山した老人が足を捻挫し、長澤まさみチャン扮する救助隊員の久美が訪れると「ヘリじゃないのか?」なんて平気で言ってのけるとは、久美じゃなくても怒りたくもなる。正直私もあの老人を非常に不愉快に感じた。常に生命の危険が伴う救助隊はボランティアじゃないし、救助するには当然費用もかかる。それを知っているならば、「へり」などと安易に言えるはずがない。まるでピクニックでもするように気軽に山に訪れ、その結果救助隊の手を煩わせるような案件がこのところ少なくないように思えるのは、決して気のせいではないだろう。
 かつて高校を卒業した春休みに、友人から雲取山登山を誘われたのだが、山に詳しい叔父に尋ねたところ、「春先の雲取に素人が登るのは死ににいくようなものだ」と釘を刺されたことがある。それもそのはずで、当時の私にして友人にしても、雪上を歩くためのアイゼンはもちろんのこと、登山靴さえも持っておらず、おそらく放っておいたらそれこそ軽装にスニーカーで登っていたことだろう。それがいかに危険なことなのか、「知らぬが仏」とはこのことだ。そういえばこの作品でも、冒頭でアイゼンをはずした登山者がクレバスに滑落するというシーンがあった。訓練を積んだ者でさえ、一瞬の気の緩みからどんな事故を引き起こすかわからない山のこと。常に山、いや、自然そのものに対する畏敬の念を忘れてはならないのだ。
 ヘリクツはさておいて、ひとつ間違えば大惨事になりかねない、そんな雪山での撮影はスタッフ・キャスト共に相当な苦労を伴ったことだろう。そして、久しぶりに主役格の役柄を演じる長澤まさみチャンが、ちょっと観ないうちにずいぶんと成長したように思う(かなり私情が絡んでる気がするが ^-^;)。本人曰く「久美が成長していく姿を演じることに注力した」との言葉通り、ひとり浮き足立っていた久美がやがて組織の一員として溶け込んでいく姿が見て取れる。でも、やっぱり最後は命令違反をして、危うく三歩まで遭難しかかっちゃうんだけどね。
 小栗旬の三歩はハマリ役と言っていいだろう。周囲をベテランの佐々木蔵之介、渡部篤郎、市毛良枝らが固めていて、また、遭難する登山者たちも、ベンガル、宇梶剛士、光石研、中越典子と予想外に豪華な面々だ。久美の父親役の石黒賢、結局遺影でしか登場しなかったみたいだね。