評 価
File No.
1406
製作年 / 公開日
2010年 / 2011年05月11日
製 作 国
アメリカ
監 督
ダーレン・アロノフスキー
上 映 時 間
108分
公開時コピー
純白の野心は、
やがて漆黒の狂気に変わる・・・
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最初に観たメディア
Theater
Television
Video
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キ ャ ス ト
ナタリー・ポートマン
[as ニナ・セイヤーズ]
ヴァンサン・カッセル
[as トーマス・ルロイ]
ミラ・クニス
[as リリー]
バーバラ・ハーシー
[as エリカ・セイヤーズ]
ウィノナ・ライダー
[as ベス・マッキンタイア]
バンジャマン・ミルピエ
[as デヴィッド]
クセニア・ソロ
[as ヴェロニカ]
クリスティーナ・アナパウ
[as ガリナ]
ジャネット・モンゴメリー
[as マデリーン]
セバスチャン・スタン
[as アンドリュー]
トビー・ヘミングウェイ
[as トム]
セルジオ・トラド
[as セルジオ]
マーク・マーゴリス
ティナ・スローン
アブラハム・アロノフスキー
シャルロッテ・アロノフスキー
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あ ら す じ
ニューヨークのバレエ・カンパニーに所属する
ニナ・セイヤーズ
は、元ダンサーの母親・
エリカ・セイヤーズ
の寵愛のもと、人生の全てをバレエに捧げていた。そんな彼女に新作「白鳥の湖」のプリマを演じるチャンスが訪れる。正確で美しいニナの踊りは、もし白鳥役だけならば肩を並べる者はいないと、美術監督の
トーマス・ルロイ
も太鼓判を押すニナだったが、悪の化身である官能的な黒鳥も演じねばならないこの難役は、優等生タイプのニナにとってハードルの高すぎる挑戦であった。
そんな折り、奔放な新人ダンサーの
リリー
が加入し、ルロイは彼女の官能的な踊りを絶賛する。不安にさいなまれるニナだったが、ルロイから新しいヒロインに指名されたのはニナだった。念願の主役を射止めたニナだったが、黒鳥の役作りに没頭するあまり次第に混乱に陥っていく。しかも、何の意図があってかリリーがニナに急接近してくる。やがてニナは、現実と悪夢の狭間をさまよい、自らの心の闇に囚われていくのだった・・・・・。
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たぴおか的コメント
ご存じ、ナタリー・ポートマンが初ノミネートにしてオスカー主演女優賞を獲得した作品。前評判通りオスカーを獲得することができたのは、他に強力な対抗馬が存在していなかったことが大きいように思える。この作品についての映画サイトへの書き込みを見ると、多くは賞賛のコメントなのだが、意外に批判的な意見も少なくないことに気づいた。確かにナタリーは、女優にしてはよく頑張ったと思う。「女優にしては」というのは、あくまでプロのバレリーナではないという意味で、撮影前に何ヶ月かのトレーニングを積んだ努力は素直に賞賛したいが、それでもなお踊り自体で観客を魅了するようなプロのバレリーナにはなることができないのだ。言っちゃ悪いが、あくまで“バレエが趣味の素人”の域を出てはいない、それが正直な感想だ。
白鳥の演技は正確かつ完璧に演じられるが、一方の悪の象徴である黒鳥の激しさが演じられないニナは、自らが自らを押し込めてしまっている枠から抜け出ない、自ら作り出した壁を越えられないという、いわゆる優等生に多いタイプだ。しかも、制約は彼女の中にだけではなく、未だに娘離れできないというか、自分の娘に自分が果たせなかった夢を無理矢理背負わせているという、母親の存在がさらに彼女に重圧を課しているのだ。そんな役柄をナタリーが、完璧と言っていい演技で演じているのはさすがだ。この作品では、彼女の表情は常に憂いを帯びていて、心からの笑顔にはお目にかかれない。爪が割れたりとか爪を切りすぎたりとか、肩のひっかき傷とか、観ていてちょっと痛いシーンが少なくないけど(笑)。
そんな彼女が、ある事件をきっかけに本番では完璧な黒鳥を踊る。彼女の肌が黒く染まっていくシーンは予告編でも何度も見せられてきたが、何度観ても背筋に鳥肌が立つほど興奮させられる。ただ、肝心の黒鳥の踊りがほんのわずかしか見られず、後は観客のスタンディング・オベーションでごまかされたように思えてならない。また、彼女が黒鳥を完璧なまでに演じられたきっかけとなった“事件”が、どこまでが幻想でどこまでが現実なのかがわからない。おそらくは、もはや後戻りはできないところまで精神的にも肉体的にも追い詰められた結果、ニナは自分の築いた枠から自由になれたのだろうが、でもナゼああいう結果になったのだろうか?あの時楽屋で一体何が起きたのだろうか?
対するミラ・クニスが演じるリリーは、奔放そのものの天才肌のバレリーナで、ヴァンサン・カッセル扮するルロイが官能的だと賞賛するのもわかる気がする。そしてある意味、主演のナタリーよりも強いインパクトを与えてくれたことも事実だ。アイラインを強調したメイクも、リリーという役作りに大きく寄与しているんじゃないかな。ただ、ニナの狂気にも似た踊りを見たからといって、両手を挙げて敗北を認めるようなセリフを吐くような殊勝な性格だとは絶対に思えない。リリーというキャラクターの性格設定がちょっと中途半端だったように思えるのも残念だ。