評     価  

 
       
File No. 1418  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2011年05月28日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   森下 孝三  
       
上 映 時 間   111分  
       
公開時コピー   その人は、許されぬ恋と
臨まぬ闘いに身を投じた。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   吉永 小百合 [as ナレーション/チャプラの母]
堺 雅人 [as チャプラ]
観世 清和 [as シャカ国王スッドーダナ]
吉岡 秀隆 [as シッダールタ]
折笠 愛 [as 幼少期のシッダールタ]
竹内 順子 [as 幼少期のチャプラ]
玄田 哲章 [as ブダイ将軍]
水樹 奈々 [as ミゲーラ]
櫻井 孝宏 [as ナラダッタ]
観世 三太郎 [as ジョーテカ]
黒谷 友香 [as マリッカ姫]
 
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あ ら す じ    2,500年前のインド。いくつもの王国が勢力争いを繰り広げる中、強大な戦力を誇るコーサラ国が、緑豊かなシャカ国を征服しようとしていた。そんなシャカ国で、スッドーダナ国王の后マーヤーが解任する。やがて生まれてくるその子どもこそ、後にブッダとなるゴータマ・シッダールタだった。
 カースト制度の下、王族たちの満ち足りた生活に比べて身分の低いスードラ(奴隷)に生まれた人々は貧困にあえいでいた。ふとしたきっかけで出会った少年チャプラタッタもそんな奴隷の身分に苦しんでいた。特にチャプラは、自分の不始末から母親が奴隷市場に売られそうになり、どんな手を使ってでもスードラから抜け出そうという野心を抱いていた。
 ある日、シャカ国に攻め入ったコーサラ国によってタッタの村が襲われてしまう。ところが、コーサラ軍のブダイ将軍が重傷を負って進軍は中止となった時、チャプラはなぜか将軍を助ける。将軍を救ったことを利用して、コーサラ国でのし上がろうと考えたのだ。そして、目論見通り将軍の養子となることに成功したチャプラは、以来数々の武勲を打ち立てていく。そして、最強の勇者を決める大会で見事優勝したチャプラは、大臣の娘・マリッカ姫と婚約し、誰もが認める国の英雄にまで成り上がっていく。
 一方、病弱だったシッダールタは、日々バンダカ将軍の訓練を受けて武芸に秀でた若者へと成長するが、身分差別に対する疑問は彼の中で日増しに大きくなっていく。そして、家臣の目を忍んで城外で生きる人々の生活を見て回っていたシッダールタは、美しい盗賊の少女ミゲーラと出会い恋に落ちる。ところが、2人が会っているのを目撃したバンダカの告げ口によりミゲーラは捕らえられ、シッダールタはミゲーラを解放するのと引き替えに隣国の姫ヤショーダラとの結婚を約束させられてしまう。そして、ミゲーラは二度とシッダールタを見ることができないよう目を焼かれてしまうのだった。
 やがて、新たに将軍の座に就いたチャプラが率いるコーサラ軍は、再びシャカ国に向けてその刃を向ける。争いに反対するシッダールタだったが、戦わねば国が滅びると父王に一蹴され、望まない闘いに身を投じていく・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    巨匠・手塚治虫が10年の歳月をかけて描き上げた大作を、全3部作でアニメ化するプロジェクトの第1作目となる作品・・・・・らしい(笑)。私は手塚治虫の『ブッダ』という作品の存在は知っていたが、実際に読んだことはないので詳しくはわからないが、壮大な手塚ワールドがどれだけ映画に反映されているかという点については少なからず疑問を感じる。いくら3部作とは言っても、2時間ほどの尺に納めるためには割愛される部分が生じるのは当然のことで、願わくば手塚先生の真意を損なうような脚本であって欲しくないものだ。
 近代史以前のインドではカースト制度によって人々がバラモン(司祭)、クシャトリア(王族、武士)、ヴァイシャ(庶民)、そしてスードラ(奴隷)という4段階の階級に分類されていたのは有名な話で、主人公のブッダ(ゴータマ・シッダールタ)は一国の王子であるから、クシャトリアという比較的高い身分の出身。それに対し、この作品での主人公とも言うべきチャプラはスードラに属する。そんな対照的な生い立ちの2人の主人公の人生が交差するのかと思ったがそうではなく、あくまで独立したストーリーが展開される。
 手塚作品というと、『鉄腕アトム』や『リボンの騎士』、『ジャングル大帝』など子ども向けというイメージがあり、子どもには刺激が強いと思われるようなシーンは存在しないように思われがちかもしれない。だが、綺麗なこと・楽しいことだけを描いてその裏側にある見にくい面・つらい面からも筆をそらすことがないのがその凄さの一因だと思う。将軍を利用して成り上がったチャプラが因果応報で悲惨な結末を迎えることや、シッダールタと引き裂かれたミゲーラに対して与えられた仕打ちなど、結構容赦ない描写が見られるのだ。
 堺雅人が吹き替えたチャプラは悪くない。が、相変わらず感情の起伏が感じられない吉岡秀隆のシッダールタは今ひとつだった。ただ、そのシッダールタが気にならないほど、父王であるスッドーダナの吹き替えが酷かった。どこのド素人だ?と思ったら、能楽師の観世清和だとのこと。世阿弥の流れを汲む観世流の宗家だか何だか知らないが、あれじゃブチ壊しと言っても過言じゃない。これほど吹き替えの下手さに唖然とさせられたのは、『ゲド戦記』の手蔦葵以来だった。どうでもいいけど、彼女は今度のジブリ作品『コクリコ坂より』でも吹き替えをするのだろうか?だったら、それだけで私にとっては観る価値なしなのだが・・・・・。