評     価  

 
       
File No. 1441  
       
製作年 / 公開日   2009年 / 2011年06月11日  
       
製  作  国   イギリス  
       
監      督   J・ブレイクソン  
       
上 映 時 間   101分  
       
公開時コピー   ここには3人と、1発の銃弾、そして“嘘”が散らばっている。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ジェマ・アータートン [as アリス・クリード]
マーティン・コムストン [as ダニー]
エディ・マーサン [as ヴィック]
 
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あ ら す じ    刑務所で知り合ったヴィックダニーは、ヴィックが練り上げた身代金目当ての誘拐計画を実行に移した。標的はダニーが新聞で見つけた富豪のひとり娘アリス・クリードで、2人は白昼堂々とアリスを拉致すると、予め準備した盗難車で、これまたこの計画のために用意したアパートの一室へと連れ込んだ。そして、両手を手錠で、両足をロープでそれぞれベッドに拘束し、口に猿轡をした上で布袋を頭からかぶせる念の入りようだった。
 若いダニーは怖じ気づいて動揺を隠せなかったのに対し、冷酷なまでに落ち着いたヴィックは着々と完璧なまでの計画を進めてていく。アリスの写真を父親に送り、身代金として200万ポンドを要求、アリスに命乞いをさせてビデオに撮影し、その動画をも送りつけた。一見、寸分の狂いもなく進められているかのように思われた誘拐計画だったが、ヴィックの知らないところで少しずつ歯車が狂い始めていく。
 ある時、ヴィックの留守中にアリスの思わぬ抵抗に遭ったダニーは、思わず覆面を脱ぎ捨てて自分の正体を明かしてしまう。実は彼とアリスは恋人同士で、ダニーがアリスを誘拐の標的に選んだのは偶然ではなかったのだ。驚くアリスにダニーは、身代金が手に入ったらヴィックから金を奪って2人で逃げようと持ちかける。アリスはダニーの提案に同意して言われるがままに元通りの拘束を受けるが、実は彼女にはある思惑があった。外出から戻ったヴィックは、ダニーの言動に不審感を抱くものの、深く追求することはなかった。
 次の日、再びヴィックの留守中にアリスはダニーを誘惑するふりをして、逆にダニーを手錠で拘束して銃を奪う。そして、別室にあった携帯で警察に助けを求めた。アリスの隙を突いたダニーの反撃で再びアリスは拘束を受けることになったが、彼女のポケットに携帯が入っていたことをダニーは知る由もなかった。そして、その携帯が原因でヴィックにすべてが露見してしまうのだった。
 ヴィックに殴られてダニーとの間の出来事をすべて話した上で、今度は逆にヴィックにダニーを裏切るように仕向けるアリス。こうして、三者三様の思惑が絡み合う中、いよいよ身代金を受け取ることとなった。果たして、誰が誰を裏切り、誰が生き残って、200万ポンドの身代金を手にするのは誰なのか・・・・・?
 
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たぴおか的コメント    6月11日公開の作品だが、地元の劇場で7月16日から上映されると知って、1ヵ月我慢した末にやっと観ることができた。キャスト欄に3人しか掲載していないのは、他のキャストが不明なわけでもなければ、それ以外のキャストがクレジット外だったわけでもない。本当に3人しか登場しないのだ。そして、たった3人の登場人物が繰り広げるやり取りのみで最後まで飽きさせることのない緻密な脚本が秀逸だ。
 冒頭で誘拐の準備をするヴィックとダニーの映像が展開するが、セリフは全く無くただ無言で事を進める2人にグイグイと引っ張られる。2人がDIYショップで買い求めた品々がどういう形で使われるのかが次々に判明していくのを観るのは面白い。そして、一気にアリスの拉致まで持って行かれるのだ。
 ラストは予想通りの結末になったとは言え、そこに至るまでの3人の生き残りをかけた壮絶な心理戦は手に汗握る緊張感でいっぱいだ。特に、ダニーとアリスが共にが部屋に落ちた薬莢に気がつき、ヴィックに気づかれまいかと焦るシーンは、観ている者まで綱渡りをするような気分に囚われる。そう、単なるクライム・サスペンスが、ダニーがアリスに正体を告白した時点から一転して、誰が主導権を奪うかの心理戦に転じるのだ。完璧だったヴィックの誘拐計画を瓦解させたのは警察ではない、ヴィックとダニーの不和によるものだったわけで、どんな堅固な組織も内部の不和によって簡単に崩壊するという真理は、2人組のパートナーにも当てはまるようだ。
 ただ生き延びるために必死でそのためにはどんな手段もいとわない、キー・パーソンのアリスを演じたジェマ・アータートンが、『プリンス・オブ・ペルシャ』ではアラムート国の王女タミーナ、『タイタンの戦い』ではデミゴッドの女性イオを演じていたことには全く気づかなかった。改めて『プリンス・オブ・ペルシャ』と『タイタンの戦い』をDVDで観直してみたが、そもそもタミーナとイオが同一人物であることすら言われなければわからないから、ましてアリスとなるとメイクも全く違うし、気づかなくても仕方ないね(自己弁護)。