評     価  

 
       
File No. 1443  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2011年07月23日  
       
製  作  国   フランス / ド イ ツ / ハンガリー  
       
監      督   ローズ・ボッシュ  
       
上 映 時 間   125分  
       
公開時コピー   約束して。必ず、生き抜くと。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ジャン・レノ [as ダヴィッド・シェインバウム医師]
メラニー・ロラン [as アネット・モノ]
ガド・エルマレ [as シュメル・ヴァイスマン]
ラファエル・アゴゲ [as スラ・ヴァイスマン]
ユゴ・ルヴェルデ [as ジョー・ヴァイスマン]
オリヴィエ・シヴィー [as シモン・ジグレール]
マチュー・ディ・コンチェート [as ノノ・ジグレール]
ロマン・ディ・コンチェート [as ノノ・ジグレール]
レベッカ・マルデール [as ラケル・ヴァイスマン]
アンヌ・ブロシェ [as ディナ・トローブ]
イザエル・ゲリナス [as エレーヌ・ティモニエ]
ティエリー・フレモン [as ビエレ大尉]
カトリーヌ・アレグレ [as 管理人“タチ”]
シルヴィー・テステュー [as ベラ・ジグレール]
 
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あ ら す じ    1942年、ナチス占領下のパリ。ユダヤ人は胸に黄色い星を付けることを義務づけられていた。11歳のユダヤ人の少年ジョー・ヴァイスマンは、公園や映画館、遊園地への立ち入りが許されず、ユダヤ人であるというだけでことあるごとに差別を受けていた。けれども、ナチスに占領されていたとはいえ、フランスとドイツは敵対する国であり、家族揃って生活できる今のささやかな幸せがつづくことを信じていた。
 ところがある日、アパートの管理人タチの声が響き渡る。ユダヤ人を検挙するために警察がやってきたことを告げる合図だった。1942年7月16日、それが夜明け前のパリで始まった、フランス政府によるユダヤ人一斉検挙だった。ユダヤ人は老若男女を問わずに強制連行され、競技場に押し込められた1万3,000人ものユダヤ人は、5日間もの間水も食料もなく放置されたのだった。
 そんなユダヤ人達の治療を一手に引き受けていたのは、自らも検挙されたユダヤ人医師ダヴィッド・シェインバウムだった。しかし、1万3,000のユダヤ人にたった一人の医者ではとうてい対処でるはずがなかった。そんな過酷な状況に赤十字から派遣されてきたのは、看護学校を卒業したばかりの看護師アネット・モノだった。彼女はそこでユダヤ人に対するあまりに非人道的な扱いにショックを受けるが、しかしそれはその後に起きる信じ難い出来事のほんの発端に過ぎなかった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    1942年の第二次世界大戦の際に、なぜか連合国側のフランスが敵対するはずの枢軸国側であるドイツのナチスに荷担して行われた、ユダヤ人の一斉検挙という史実を描いた作品。そもそも、なぜフランスが敵対するナチスドイツの言うがままにユダヤ人の一斉検挙という暴挙に出たのかが今ひとつハッキリしない。主演のジャン・レノとメラニー・ロランは共に脚本を読んで衝撃を受けると同時に、是非演じてみたいと思ったとのことだ。ジャン・レノにとっては今まで演じてきた役柄とは少々毛色が違い、そんな役柄を演じられることが嬉しかったようだ。また、メラニー・ロランは作品半ばで検挙されたユダヤ人と同じ食事を摂って体調を崩すという設定なのだが、その時の顔色の悪さはてっきりメイクだと思ったら、実は役に打ち込みすぎたあまり本当に体調を崩したらしい。それほどまでに打ち込める作品に出会えたことは役者冥利に尽きるのだろうが、残念ながら2人の意気込みに応えられるほどの作品ではなかったようだ。監督が悪いのか、それとも脚本のせいなのか、私にはわからないが。
 確かにナチスによるユダヤ人の迫害には目を覆いたくなるものがあり、大量虐殺などは未だにフィクションだと思いたい、それほど凄惨なものだったのは事実だ。そして、平和な現代では想像もつかないような残虐な行為が横行したのが戦時下という特殊な状況で、日本も南京大虐殺という歴史に残る残虐行為を行っている。この作品でも1万3,000人という膨大な数のユダヤ人たちが検挙され、そして生きては戻ってこなかったのだが、作品を観ているとどこか絵空事のように感じられてしまうの致命的だと言える。余談だが、今ではどの家庭でも当たり前に使われている電子レンジは、その発祥をたどるとユダヤ人を大量虐殺するためにナチスによって開発された殺人兵器に由来しているという。
 悲惨な環境に置かれても、自分たちの行き先を悲観してしまう大人がペシミストであるのに対し、子供は強くめげることがないオプティミストだ。そんな子供たちの明るさが幸か不幸か作品自体の悲惨さを和らげているのだろう。そして、事件の悲惨さが伝わってこなかったもうひとつの理由は、伝わってこなかったのではなく敢え残酷な描写を回避したことにもあると思う。検挙されたユダヤ人たちが列車に乗せられその後どうなったかが映像ではなく、“誰一人として生きて帰った者はいなかった”と字幕で説明されたことなどは、その典型的な例だ。