昨年公開され、私が星10個の評価をつけたたスウェーデン映画『ぼくのエリ 200歳の少女』のハリウッドリメイク版。たぴおか的注目点は2つあり、ひとつはあのスティーヴン・キングが「この20年のアメリカでNo.1のスリラー」とこの『モールス』絶賛したらしいが、果たしてそれほどの出来映えの作品に生まれ変わっているかという点。そもそも、リメイク版がここ20年のアメリカでNo.1だなんて、それは言い換えればハリウッドがこの20年間製作してきたオリジナルのスリラー作品にロクな作品がないということになるんじゃないのか。そして、オフィシャルサイトには「全世界絶賛!」なんて書かれているが、それではオリジナルの『ぼくのエリ』の立場がないだろう。それはあたかも、『インファナル・アフェア』がオスカーの外国語映画賞にノミネートすらされなかったのに、リメイク版の『ディパーテッド』が作品賞を受賞してしまったのに似ている気がする。
そもそも『モールス』なんていう邦題は、ハッキリ言ってサイテーだと思う。むしろ、原題をカタカナ表記した『レット・ミー・イン』の方が遙かにマシ。オリジナルではエリがオスカーに、この作品ではアビーがオーウェンに、「私を招き入れて」と全身から血を流しながら懇願するシーンは、作品中のひとつの名場面で、だからこそ原題は“LAT DEN RATTE KOMMA IN”であり“LET ME IN”なのだろう。その点、オリジナルの邦題『ぼくのエリ 200歳の少女』は原題と意味は全く異なるが、センスのある秀逸な邦題だと思えるのに対し、『モールス』なんてタイトルはセンスのカケラも感じられないスットコドッコイなタイトルだとしか思えない。
作品の内容はと言えば、もっと大胆にリメイクされているのではという予想を裏切って、ほぼオリジナルのままだった。だから、作品の質としてはそれほどオリジナルに劣っているとは思わない(当たり前か)。とはいえ、『ぼくのエリ』ではなくて『モールス』の方が話題になるとは、人口1,000万に満たないスウェーデンと人口3億を超えるアメリカとの観客数の差ということなのだろうか。
もう一つの注目点は、言うまでもない『キック・アス』で一躍世界的に注目されることとなったクロエ・グレース・モレッツが、『キック・アス』で演じたヒット・ガールことミンディとは正反対と言っていいヴァンパイアの少女をどう演じているかだ。この点に関しては、仕方のないことかもしれないが、オリジナルでエリを演じたリーナ・レアンデションの透き通るような青白い肌がヴァンパイアにピッタリだったが、この作品のクロエ・グレース・モレッツは、演技に不満はなかったものの、ちょっと健康的すぎるように感じる(多分、ヒット・ガールのイメージが強すぎるのも一因かな)。決して彼女も悪くないのだが、エル・ファニングあたりにアビーを演じさせてみたら面白いんじゃないかなと思うね。