評     価  

 
       
File No. 1449  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2011年08月05日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   マット・リーヴス  
       
上 映 時 間   116分  
       
公開時コピー   最も切なくて、最も怖ろしい、イノセントスリラー  

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
キ ャ ス ト   コティ・スミット=マクフィー [as オーウェン]
クロエ・グレース・モレッツ [as アビー]
リチャード・ジェンキンス [as 父親]
カーラ・ブオノ [as オーウェンの母]
イライアス・コティーズ [as 警官]
サーシャ・バレス [as ヴァージニア]
ディラン・ケニン [as ラリー]
クリス・ブラウニング [as ジャック]
リッチー・コスター [as ゾリック先生]
ディラン・ミネット [as ケニー]
ジミー・“ジャックス”・ピンチャック [as マーク]
ニコライ・ドリアン [as ドナルド]
レベッカ・ウィギンス [as 看護師]
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
あ ら す じ    1983年。とある田舎の町で母親と2人で暮らす、12歳の少年オーウェン。学校ではケニーたちグループからのいじめに遭いながら、精神不安定な母には相談できずに鬱屈した日々を送っていた。ある夜、オーウェンが住むアパートの隣の部屋に、父娘らしき2人が越してくる。少女は雪の中にもかかわらず裸足で歩いており、その姿はオーウェンの目に強く焼き付く。そしてある夜、オーウェンがひとりで中庭で遊んでいると、あの少女が現れた。やはり裸足で体から異臭を放つ少女は、オーウェンに「私たちは友達になれない」とだけ告げて立ち去っていった。
 次に少女と会ったのは、やはりオーウェンが中庭でルービック・キューブで遊んでいた時だった。キューブに興味を示した少女とオーウェンは、次第に言葉を交わすようになる。彼女の名はアビーといい、歳は12歳くらいだが自分の誕生日を知らず、学校にも通っていなかった。アビーと会うたびに次第に彼女に惹かれていくオーウェンは、夜ごと壁越しに彼女の部屋から聞こえてくる怒鳴り声が気にかかっていた。オーウェンはアビーにモールス信号を書いたメモを渡し、壁越しに2人だけの合図を送り合うようになった。
 ある夜、アビーはオーウェンに「私が女の子じゃなくても好き?」と尋ねてきた。アビーの言葉の意味がわからないながらも、「好きだと思うよ」と応えるオーウェンは、やがて思い切ってアビーに恋人になって欲しいと切り出した。けれども、軽い気持ちでアビーと血の契りを結ぼうとしたオーウェンは、自分の指をナイフで切って滴り落ちる血を見たアビーの豹変に、ある疑惑を抱く。そんなオーウェンの元にアビーが訪ねてくる。「私を招き入れて」というアビーにオーウェンが言葉を返さないでいると、部屋に入ってきたアビーの全身から血が流れ出す。慌てて「入っていいよ!」と応えたオーウェンは、アビーが何物であるかの答えを確信しながらも、アビーを強く抱きしめるのだった・・・・・。
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
たぴおか的コメント    昨年公開され、私が星10個の評価をつけたたスウェーデン映画『ぼくのエリ 200歳の少女』のハリウッドリメイク版。たぴおか的注目点は2つあり、ひとつはあのスティーヴン・キングが「この20年のアメリカでNo.1のスリラー」とこの『モールス』絶賛したらしいが、果たしてそれほどの出来映えの作品に生まれ変わっているかという点。そもそも、リメイク版がここ20年のアメリカでNo.1だなんて、それは言い換えればハリウッドがこの20年間製作してきたオリジナルのスリラー作品にロクな作品がないということになるんじゃないのか。そして、オフィシャルサイトには「全世界絶賛!」なんて書かれているが、それではオリジナルの『ぼくのエリ』の立場がないだろう。それはあたかも、『インファナル・アフェア』がオスカーの外国語映画賞にノミネートすらされなかったのに、リメイク版の『ディパーテッド』が作品賞を受賞してしまったのに似ている気がする。
 そもそも『モールス』なんていう邦題は、ハッキリ言ってサイテーだと思う。むしろ、原題をカタカナ表記した『レット・ミー・イン』の方が遙かにマシ。オリジナルではエリがオスカーに、この作品ではアビーがオーウェンに、「私を招き入れて」と全身から血を流しながら懇願するシーンは、作品中のひとつの名場面で、だからこそ原題は“LAT DEN RATTE KOMMA IN”であり“LET ME IN”なのだろう。その点、オリジナルの邦題『ぼくのエリ 200歳の少女』は原題と意味は全く異なるが、センスのある秀逸な邦題だと思えるのに対し、『モールス』なんてタイトルはセンスのカケラも感じられないスットコドッコイなタイトルだとしか思えない。
 作品の内容はと言えば、もっと大胆にリメイクされているのではという予想を裏切って、ほぼオリジナルのままだった。だから、作品の質としてはそれほどオリジナルに劣っているとは思わない(当たり前か)。とはいえ、『ぼくのエリ』ではなくて『モールス』の方が話題になるとは、人口1,000万に満たないスウェーデンと人口3億を超えるアメリカとの観客数の差ということなのだろうか。
 もう一つの注目点は、言うまでもない『キック・アス』で一躍世界的に注目されることとなったクロエ・グレース・モレッツが、『キック・アス』で演じたヒット・ガールことミンディとは正反対と言っていいヴァンパイアの少女をどう演じているかだ。この点に関しては、仕方のないことかもしれないが、オリジナルでエリを演じたリーナ・レアンデションの透き通るような青白い肌がヴァンパイアにピッタリだったが、この作品のクロエ・グレース・モレッツは、演技に不満はなかったものの、ちょっと健康的すぎるように感じる(多分、ヒット・ガールのイメージが強すぎるのも一因かな)。決して彼女も悪くないのだが、エル・ファニングあたりにアビーを演じさせてみたら面白いんじゃないかなと思うね。