評     価  

 
       
File No. 1453  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2011年08月12日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   テレンス・マリック  
       
上 映 時 間   138分  
       
公開時コピー   父さん、あの頃の僕は
あなたが嫌いだった・・・
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ブラッド・ピット [as Mr.オブライエン(父)]
ショーン・ペン [as ジャック]
ジェシカ・チャスティン [as Mrs.オブライエン(母)]
ハンター・マクラケン [as 若き日のジャック(長男)]
ララミー・エップラー [as R.L.(次男)]
タイ・シェリダン [as スティーヴ(三男)]
フィオナ・ショウ [as 祖母]
ニコラス・ゴンダ [as Mr.レイノルズ]
ウィル・ウォレス [as 建築家]
ケリー・クーンス [as ハイネス神父]
ブライス・ボードイン [as ロバート]
ジミー・ドナルドソン [as ジミー]
カメロン・ヴォーン [as カイラー]
コル・コックバーン [as ハリー・ベイツ]
ダスティン・アレン [as ジョージ・ウォルシュ]
ブライデン・ホワイゼンハント [as ジョー・ベイツ]
ジョアンナ・ゴーイング [as ジャックの妻]
 
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あ ら す じ    実業家として成功を収めたジャック・オブライエンは人生の岐路に立ち、自らの少年時代に思いをはせる。1950年代半ばのテキサスの小さな町に暮らすオブライエン一家。社会的な成功と地位を追い求めるは、成功のためには力が必要だと長男のジャックをはじめ3人の子どもたちに理不尽なまでに厳格な態度で接してしまう。一方、全てを運命として受け入れるは、父とは対照的に子どもたちを優しい愛で包み込むのだった。
 そんな両親の狭間で葛藤を抱えるジャックは、父に対して反感を覚えながらも、父と同じように成功を渇望し、力に対する憧れを抑えることができなかった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    う〜ん、オスカー作品賞受賞作に失望させられるのは珍しくないのだが、カンヌでパルムドールを受賞した作品でここまで幻滅させられたのは初めての経験だ。私の基本的なポリシーは「映画はエンターテイメントつまり砕けた言い方をすれば娯楽であるべき」なのだが、このポリシーに真っ向から対立するようなアプローチの作品だ。そもそも、たいていの作品は公開初日に劇場へ行く私が、敢えて初日は避けたのも、多分寝てしまうのではないかという嫌な予感がしていたためだ。何度も予告編を見せられてきたが、興味を惹くようなシーンなど皆無、ハッキリ言えばつまらない映像の羅列にしか思えない。見所を集約したダイジェスト版である予告編ですらそうなのだから、本編は推して知るべしだ。
 この作品が難解だという感想が見受けられるが、私はそうは思わない。「難解」なのではなく、あまりに中身がないために理解不能なだけなのだ。そもそも、監督は作品に何らかの主張やテーマを込めて作品を送り出すが、その“伝えたいこと”が観る者に伝わらなければ何の意味もなくなる。だから、製作者には観る者に対して理解してもらうための手助けをする義務がある。例えばそれが、難解な作品の代表格とも言うべき『2001年宇宙の旅』であれば、確かに一回観ただけでは理解不能だが、それでもなお観客に「もう一度観てみたいと」思わせるような興味を喚起する“何か”がある。だから、たとえ一度観て意味不明でも、もう一度観て確かめたくなり、その意味で充分説明義務を果たしていると言える。ところが、この作品には観る者が興味を刺激されるような点さえ皆無で、これでは観客に対する説明義務を完全に放棄した、いわば独りよがりの作品になっている言わざるを得ない。観客に理解してもらおうという意思がないのなら、そんな作品は公開すべきじゃないし、そもそもそんな作品を作ること自体、出発点からして間違っている。
 冒頭から10分くらい経過した辺りから、人物は一切登場しない、台詞もない、まるで『アース』を思わせるような映像を30分近くも見せられた時には、あまりの腹立たしさに席を立って劇場を出ようかとさえ思った。本編の尺は138分となっているが、前述のような無駄な映像をカットすれば90分程度に充分収まる内容だ。テレンス・マリック監督にはそれなりの意図があって挿入した映像だろうが、私に言わせれば無駄な映像を差し挟むことで作品の濃度を希釈しているだけだ。そんな映像を2時間半近くもの間見せつけられるのは、言っちゃ悪いが拷問に近いものがあり、これは精神衛生上ヒジョーによろしくない(笑)。
 ブラッド・ピットの存在感が圧倒的だ、などという評価がされているようだが、それも当たり前と言えば当たり前。もう一人のビッグネームであるショーン・ペンは登場シーンが少ないだけではなく台詞もほとんどなし、彼ほどの役者がこの作品に出演したのが不思議でならない。他にブラピを圧倒するほどの役者など登場しないのだから、これで彼が存在感を発揮できないわけがない。また、ブラピ扮するオブライアンの妻を演じたジェシカ・チャスティンにも魅力を全く感じない。せめてもう少し魅力的な女優(例えば、ケイト・ウィンスレットとか)を起用して欲しかったものだ・・・・・とは言え、いくら魅力的な女優を使っても、この作品の評価を上げることは不可能だけどね。