評     価  

 
       
File No. 1459  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2011年08月27日  
       
製  作  国   フランス / ド イ ツ / イギリス  
       
監      督   ロマン・ポランスキー  
       
上 映 時 間   128分  
       
公開時コピー  
知りすぎた、男(ゴースト)
 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
キ ャ ス ト   ユアン・マクレガー [as ゴースト]
ピアース・ブロスナン [as アダム・ラング]
キム・キャトラル [as アメリア・ブライ]
オリヴィア・ウィリアムズ [as ルース・ラング]
トム・ウィルキンソン [as ポール・エメット]
ティモシー・ハットン [as シドニー・クロール]
ジョン・バーンサル [as リック・リカルデッリ]
デヴィッド・リントール [as ストレンジャー]
ロバート・パフ [as リチャード・ライカート]
ジェームズ・ベルーシ [as ジョン・マドックス]
イーライ・ウォラック [as 老人]
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
あ ら す じ    知人リック・リカルデッリ仲介で、英国元首相・アダム・ラングの自叙伝のゴーストライターを務めることとなった男。ラングが滞在するアメリカ東海岸の孤島の別荘を訪れた彼は、ラングの秘書アメリア・ブライから説明を受けた後、不慮の死を遂げた彼の前任者の遺した分厚い自伝の原稿を渡され、数時間でそれを読むように命じられる。
 やがて間もなく、別荘に到着したラングと対面し、彼は“I'm your ghost”と自己紹介する。ところがその矢先、ラングがイスラム過激派の逮捕や拷問に加担した疑いがあるというニュースが報じられ、このスキャンダルは国際刑事裁判という大騒動になっていく。そんな中一方、彼は溺死した前任者の部屋から、ある資料を見つける。それはインタビューで聞いたラングの経歴を覆すものだった。さらに、引き出しの裏に隠された数枚の写真を見つけた彼は、その1枚に書かれた電話番号にかけてみる。すると、電話口に出た相手は、ラングの最大の政敵であるリチャード・ライカートだった。
 写真を調べていた彼の目は、その中に写っていた一人の人物に釘付けになった。若き日のラングと一緒に写真に写っていたその男ポール・エメットは、大学教授という表の顔の他に、CIAの工作員だという疑惑がかけられていたのだ。そして、フェリーで本土に渡った彼は、彼の前任者が設定したままの車のナビに導かれ、たどり着いたのはエメット邸だった。前任者の死にエメットとCIAが絡んでいるという疑惑を深めた彼は、直接エメットに会って話してみることにするのだが・・・・・。
 
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
たぴおか的コメント    『戦場のピアニスト』を観ていない私にとって、ロマン・ポランスキーといえば『オリバー・ツイスト』で私をこれでもかとばかりに眠りに誘った監督というイメージがトラウマになって残っている(笑)。ただ、今回はキャスティングがユアン・マクレガー、007シリーズで5代ジェームス・ボンドを務めたピアース・ブロスナン、それにキム・キャトラルと魅力的だったため、最悪の事態を覚悟しつつも劇場へ臨んだのだが、幸い私の心配はすべて杞憂に終わってくれたようだ。
 全編を通して弛緩することのない緊張感・サスペンス感がたまらなく、舞台の大半はアメリカ領土内のどこかの島なのだが、あたかもロンドンを思わせる曇天や荒天といった気象状況が作品にミステリアスな彩りを加えているのもいい。ポランスキー監督だけに目を見張るような斬新な手法が使われているわけではなく、良く言えばオーソドックス、悪く言えばありきたりで月並みな作りの作品ではあるが、それが故に浮ついたところのない堅実な構成に仕上がっているのは好感が持てる。
 英国元首相であるアダム・ラングの自伝執筆を依頼されて、ラングが滞在するアメリカ東海岸の孤島を訪れる、ユアン・マクレガー扮する主人公のゴーストライター。出迎えたキム・キャトラル扮する秘書のアメリア・ブライが一癖も二癖もありそうで、ラングの妻・ルースとの間にただならない敵対関係があることをうかがわせる。そんな不安定な人間関係が、ストーリーに深みとさらなる謎を投げかけている。
 前任者の不可解な死を調べ始めたゴーストはある一つの仮説にたどり着き、その仮説を裏打ちするように彼に近づいてくる、ラングの政敵ライカート。事件はこれで解決かと思わせるのだが、クライマックスで予想もしない人物が殺されて、どこか不完全燃焼気味に感じてしまう。ところがそれでは終わらず、ラストぎりぎりになって自伝の原稿に隠された秘密にたどり着き、本当の黒幕が誰だったかを知るというたたみかけるような展開には興奮を覚える。ラングを演じたのが英国人であり、ジェームス・ボンドを演じたピアース・ブロスナンであるところには、さり気ない皮肉を感じさせるね。