評     価  

 
       
File No. 1463  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2011年08月27日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   佐々部 清  
       
上 映 時 間   134分  
       
公開時コピー   いつか、この国が
生まれかわるために
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   堺 雅人 [as 真柴司郎(近衛第一師団・少佐)]
中村 獅童 [as 望月庄造(座間五百一連隊・曹長)]
福士 誠治 [as 小泉重雄(東部軍経理部・主計中尉)]
ユースケ・サンタマリア [as 野口孝吉(森脇女学校教師)]
八千草 薫 [as 金原久枝]
森迫 永依 [as 少女時代の久枝]
土屋 太鳳 [as スーちゃん]
遠藤 恵里奈 [as マツさん]
松本 花奈 [as サッちゃん]
三船 力也 [as イガラシ中尉(GHQ通訳)]
中野 裕太 [as ダニエル・ニシオカ(日経新聞記者)]
金児 憲史 [as 伝令の男]
柴 俊夫 [as 阿南惟幾(陸軍大臣)]
串田 和美 [as 梅津美治郎(参謀総長)]
山田 明郷 [as 田中 静壱(東部軍司令官)]
野添 義弘 [as 森赳(近衛師団長)]
麿 赤兒 [as 杉山元(第一総軍司令官)]
ジョン・サヴェージ [as ダグラス・マッカーサー(連合国軍最高司令官)]
麻生 久美子 [as 金原涼子]
塩谷 舜 [as 後藤俊太郎]
北見 敏之 [as 金原荘一郎]
ミッキー・カーチス [as マイケル・エツオ・イガラシ(元在日アメリカ軍司令)]
八名 信夫 [as 金原庄造]
 
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あ ら す じ    平成23年3月。森脇女子学園の教師・金原涼子は、同僚で婚約者の後藤俊太郎と共に、卒業式に臨んでいた。ところが、仰げば尊しの斉唱の最中に、壇上に祖母・金原久枝と並んで座っていた、祖父の金原庄造が倒れてしまう。「真柴さんがもう命令を守らなくていいと言った」という言葉を残して。そしてそのまま庄造は帰らぬ人となってしまう。久枝は、入り婿の息子・金原荘一郎と涼子、俊太郎に、70年近くも守り続けてきたある秘密を打ち明けるのだった。
 終戦間近の昭和20年8月10日。帝国陸軍の近衛第一師団に所属する真柴司郎少佐は、東部軍経理部の小泉重雄中尉と共に、阿南惟幾陸軍大臣ら軍トップの5人に呼び出された。そして2人は、山下将軍が奪取した、日本円にして900億円という巨額のマッカーサーの財宝を、将来の日本の復興のために隠匿するという、驚くべき密命を受ける。阿南たちは既に日本の敗戦を悟っていたのだ。
 座間五百一連隊の望月庄造曹長が2人と行動を共にすることとなり、実際に作業を行う勤労動員として森脇学園の少女20名と、教師の野口孝吉が招集された。そして少女達はそれが財宝であるとも知らず、国の勝利のために懸命に作業に取り組む。そして作業も残りわずかとなった時、次に真柴に下された命令は、非情きわまりない過酷なものだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    『神様のカルテ』に続いてやはり期待していなかったこの作品を観たのだが、こちらは思ったよりも遙かに面白く、嬉しい誤算と言える内容だった。堺雅人扮する真柴少佐がマッカーサーの時価900億円という巨額の遺産を隠匿する任務を受ける、その程度の予備知識で臨んだのだが、そこには戦争のもたらした驚くべき悲劇が待ち受けていた。ストーリーが進むうちに、もしかして?という疑問は大きくなっていったが、正直観る前はそんな衝撃的な展開を全く予想できなかったから。その意味では、このところ失敗続きの角川映画において、久しぶりのたぴおか的ヒット作だと言える。
 「学徒動員」という言葉は知っているつもりだったが、その実態は幼い女子供までも兵器製造に駆り出されるという、今では考えられないような過酷なものだったことを痛感させられる。10代前半の少女達が、「七生報国」のはちまきを締め、日本が勝つことを信じて献身的に労働する様は観ていてあまりに痛々しい。食事に出された当時は貴重品であっただろう白米の握り飯に感動しながら、喜ぶよりも自分たちだけがそんなに贅沢をしていいのかという申し訳なさの方が先に立つ少女達を観ていると、アメリカという大国に対して開戦した当時の軍部の独善的な思い上がりが腹立たしくて仕方ない。少女達の級長を務める少女を演じたのが森迫永依ちゃんだとは、エンドクレジットで観るまでは全く気づかなかった。久しぶりに観た彼女は随分大人っぽくなって、もう完全に「ちびまる子ちゃん」のイメージからは脱却できたんじゃないかな。また、彼女たちを教える教師の野口を演じたユースケ・サンタマリアの珍しく抑え気味の演技が、いい味を出していた。
 堺雅人演じる主人公の真柴少佐は、戦争に勝つこと以外眼中にないコテコテの軍人ではなく、当時の状況下でも理性をもって行動した数少ない軍人として描かれている。その真柴でさえ、作業が終わった少女たちの処遇に関して下された命令には、それがあまりに理不尽なものであっても逆らえなかったのは、上官の命令は絶対だとたたき込まれてきた人間の悲しい性だ。そしてそれは真柴だけではなく、自ら進んで命令に従った軍人の娘・スーちゃんにも言えることで、つまりは戦争に勝利するという大義名分の前では、個々人の存亡など無意味だという狂った全体主義が、完璧なまでに全国民に浸透していたことの証左なのだ。
 ナゼかミッキー・カーチス演じる日系二世と新聞記者との対談から始まり、再び同じ対談で締めくくられるのだが、個人的にはその部分はすべて割愛した方がいいように思う。 ミキー・カーチスの役柄は、GHQの通訳を務めたイガラシの老後だと思われるが、なぜ今彼が新聞記者のインタビューを受けているのか、その理由が不明だし、そんなシーンを挿入する必要性は大いに疑問だ。その後真柴や小泉がどうなったかなど、私には 少女達が儚くも散っていった切なさをの余韻を無残にもブチ壊す蛇足にしか思えない。
 最後にどーでもいいことだけど、中村獅童と八名信夫。本当に同一人物の若い頃と老後だと思えるほどソックリだったのには驚いたね(笑)。