評     価  

 
       
File No. 1464  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2011年09月10日  
       
製  作  国   オーストリア  
       
監      督   ヴォルフガング・ムルンベルガー  
       
上 映 時 間   106分  
       
公開時コピー   ナチス・ドイツの
戦況を左右する
国宝級の名画(ミケランジェロ)の行方
鍵を握るのは
一人のユダヤ人画商
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   モーリッツ・ブライブトロイ [as ヴィクトル・カウフマン]
ゲオルク・フリードリヒ [as ルドルフ・スメカル]
ウーズラ・シュトラウス [as レナ]
マルト・ケラー [as ハンナ・カウフマン]
ウーヴェ・ボーム [as ヴィドリチェク親衛隊大佐]
ウド・ザメル [as ヤーコブ・カウフマン]
ライナー・ボック [as ラウター親衛隊大尉]
メラーブ・ニニッゼ [as モーリッツ・ハイデン]
カール・フィッシャー [as マイヤー親衛隊中佐]
クリストフ・ルーザー [as ウェーバー親衛隊軍曹]
セルゲ・ファルク [as ノルドナー親衛隊大佐]
 
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あ ら す じ    1938年。ユダヤ人の画商ヤーコブ・カウフマンの息子ヴィクトル・カウフマンは、久しぶりに再会した親友のルドルフ・スメカル(ルディ)に秘密の隠し部屋にあった1枚の絵を見せた。それは400年前にバチカンから盗まれて以来行方不明となっていたミケランジェロの絵で、ムッソリーニが欲しがるほどの国宝級の価値がある代物だった。
 ナチスに傾倒していてついに入隊してしまったルディは、手土産にとばかりにカウフマン家に秘匿されているミケランジェロの絵の存在をナチスに密告してしまう。カウフマン一家はスイスへの亡命を条件にナチスに絵を引き渡す決意をするが、ミケランジェロを手に入れたナチスは一家を捕らえられて収容所送りにしてしまう。
 ミケランジェロの絵を奪ったナチスは、それを材料にイタリアとの同盟を優位に締結しようとしていた。ところが、直前になって絵が贋作だと判明し、これにイタリア側が腹を立てて条約締結は白紙撤回されてしまう。そして、ミケランジェロの情報をを提供したルディは窮地に立たされ、何が何でも本物の絵を手に入れなければならなくなった。ところが、本物の絵の隠し場所を知るヤーコブは、すでに収容所で亡くなってしまっていた。こうして、ルディやナチスの目は自ずとヴィクトルに向けられるようになった。
 そんな時にアクシデントが起こる。ヴィクトルを護送する飛行機がパルチザンに撃墜されて墜落してしまい、ヴィクトルは軽傷で済んだものの、同乗していたルディは大怪我をしてしまう。ヴィクトルは古びた小屋を見つけてルディをなんとか担ぎ込んだが、そこへパルチザンが接近してくる気配が感じられ、ルディは自分がナチスであることを隠すために制服をすべて脱ぎ捨てた。ところが、そこへ訪れたのはナチスの兵士たちで、いつの間にかルディの制服を着込んだヴィクトルは、自分がナチスの将校でありルディを護送中のユダヤ人だと兵士達を言いくるめてしまう。
 こうしてヴィクトルとルディの立場は場が逆転してしまい、ヴィクトルはルディから絵の隠し場所を聞き出すふりをしながら、母をスイスに亡命させるべく画策するのだが・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    『ミケランジェロの暗号』というタイトルから、『ダ・ヴィンチ・コード』のように絵の中に隠された謎を解くような展開を期待していたのだが、その期待は完全に裏切られてしまった。ハッキリ言って暗号なんてこの作品にはまったく介在しない。ただ、絵の隠し場所が秘密になっているだけだった。とは言っても、この作品の価値がそのことで半減するようなことはなく、観ているうちに「暗号」なんて言葉は完全に忘れてしまう。
 時は第二次世界大戦中、ユダヤ人が主人公でナチス・ドイツが登場するとなると、たいていは重苦しい迫害のストーリーかと思いがちなのだが、この作品は軽妙なタッチに加えて主人公のヴィクトルを演じたモーリッツ・ブライブトロイの大真面目な演技がどこか笑いを誘う、ユーモラスな仕上がりになっているのが嬉しい。また、ルディを演じるゲオルク・フリードリヒが、最初は気づかないけど髭を剃るとまるでリーアム・ニーソンを20歳若くしたようなルックスで、それでいて迫力が全然ないだけにまるで“虎の威を借る狐”を絵に描いたようで、悪役なのにどこか憎めない。そして、そんな2人のユーモラスさが、ナチスVSユダヤ人という構図につきものの重苦しさを中和してくれているのだ。
 問題の絵の隠し場所については、結構早めに気づいてしまうかもしれない。そして、それに気づけばラストのオチも想像はついてしまう。ただ、そこでもヴィクトルの笑いをこらえたようなすまし顔と、してやられて呆気にとられたようなルディの表情の対照が面白い。ネタバレになってしまうが、主要人物が誰一人として殺されることなく終わるのもこの作品をお勧めできるポイントだろう。