兵役を終えたウォンビンの復帰2作目となる作品。邦題の『アジョシ』は「おじさん」という意味のハングル語で、ハングル文字で書くことができないために私のこのサイトでは韓流作品の現代は“THE MAN FROM NOWHERE”という英語題を掲載しているが、おそらくは本当のハングル語での原題も“アジョシ”に違いない。それほどこの作品では“アジョシ”という言葉を頻繁に耳にする。
この作品を観ようと思った理由はもちろんウォンビン観たさなどではなく、『冬の小鳥』ですっかり魅せられてしまった小さな名優キム・セロンを観たかったためだ。ところが、実際に作品を観てみると、驚いた点が2つ。ひとつは、『母なる証明』では今ひとつ影が薄かったように思えたウォンビンだったが、この作品では彼の本領発揮とばかりに見事な熱演を見せてくれていて、彼に対する私の評価を大きく変えざるを得なかったこと。韓流ファンのオバチャンたちが彼を見てキャーキャー騒ぐ気持ちが初めてわかったような気がした。兵役を経た彼の鍛えられたボディは、イ・ビョンホンほどではないにしても、やはり見事と言うほかはない。そして、前半は長髪が鬱陶しくて仕方なかったが、キム・セロン演じるソミを救うために髪を短く刈った顔を観ると、悔しいけどこれじゃ女性が放ってはおかないだろうイケメンだと認めないわけにはいかなかった。
もうひとつはもちろんキム・セロンについてで、前作であれほどのインパクトを受けてしまうと次の作品ではどうしても過度に期待を抱いてしまい、落胆させられることが少なくない中、彼女の場合はこの作品を観てガッカリするどころかますます気に入ってしまった。あまりにも気に入ってしまったので、画像を貼っておこうかな・・・・・これが『アジョシ』の韓国版ポスターで(もちろんウォンビンバージョンもあるが)、これが劇中のワンシーンの画像だ。ただ、彼女の場合は静止画よりも動いている方が、特に台詞を喋っている時の彼女の方が抜群に可愛いと思うので念のため。
ウォンビン扮するアジョシことチャ・テシクが、とにかく戦闘において超人的に強すぎるのだが、かつて特殊部隊にいたという設定のおかげでそれも不自然に感じずに済んでいる。そして、敵であるマンソク兄弟の部下で、ちょっと見チョン・ウソンのような髭の悪党ラム・ロワンが、敵ながら憎めないキャラだ。表情ひとつ変えずに人を殺せるような冷酷無比な男なのだが、腕の立つテシクに対して敢えて銃を捨てて一対一で肉弾戦に臨むなんて、悪党にしては天晴れだ。身内を殺してまでも眼球をくり抜かれそうになったソミを助けたのも、「ママに会えるよね?ママが死んだなんて嘘だよね?」と涙ながらに訴えるソミの健気さに心を動かされたためだろう。余談だが、ラム・ロワンを演じたのはタイ生まれの俳優タナヨン・ウォンタラクン(長いよ!)で、なんと阪本順治監督の『闇の子供たち』にも出演しており、それを観たイ・ジョンボム監督が彼に『アジョシ』出演のオファーを申し出たとのことらしい。
「眼球をくり抜く」と言えば、この作品では結構血を観るシーンや残酷なシーンも少なくない。なんせ、テシクは単身でマンソク兄弟一家全員を根絶やしにしてしまうのだから、それも当然と言えば当然だろうか。血みどろの殺戮の果てに、命をかけてまで助け出そうとしたソミは既に殺されており、救いようのない虚しさと絶望からテシクは自ら銃で命を絶とうとするのだが・・・・・まさにその時、「アジョシ・・・」と彼を呼ぶ声が聞こえてくるなんて、その絶妙の演出には思わず目頭が熱くなってしまった。そして、ゆっくり振り向いたテシクの視界にソミが映り、テシクの「血が付くから近づくな」という言葉を無視してテシクに抱きつくソミを観たら、私の涙腺はついに我慢の限界を超えてしまった(笑)。映画を観てうるうるしてしまうなんて、本当に久しぶりに味わう感覚だ。キム・セロンといい日本の芦田愛菜チャンといい、どうやら最近の私の嗜好は10歳前後の子役に向かっているような気が・・・・・ヤバイかな?