評     価  

 
       
File No. 1472  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2011年09月17日  
       
製  作  国   韓  国  
       
監      督   イ・ジョンボム  
       
上 映 時 間   119分  
       
公開時コピー  
  ア ジ ョ シ
「おじさん、守ってね」

少女は、助けを求めた。
男は、命をかけると決めた。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ウォンビン [as チャ・テシク]
キム・セロン [as ソミ]
キム・ヒウォン [as マンソク兄弟(兄)]
キム・ソンオ [as マンソク兄弟(弟)]
キム・テフン [as キム・チゴン]
ソン・ヨンチャン [as オ社長]
タナヨン・ウォンタラクン [as ラム・ロワン]
 
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あ ら す じ    古びたビルで質屋を営むチャ・テシクは、かつて特殊部隊に籍を置いていたが、2006年に妻を事故で亡くして以来、他人との接触を避けて生きてきた。家族も友人もいないテシクに唯一話しかけてくるのは、クラブダンサーの母と2人で隣の部屋に住む少女ソミだった。母親からもろくに構ってもらえず、友達もいないソミもまた孤独で、テシクを“アジョシ(おじさん)”と呼んで慕っていた。
 ある日、ソミは見知らぬ女性からカバンを盗もうとしたと警察に通報される。そんな現場にたまたま通りかかったテシクを、ソミは父親だと言って指さすが、テシクは黙って立ち去ってしまう。そしてその夜テシクに会ったソミは、「おじさんも私が恥ずかしくて知らんぷりをしたんでしょ?でも、嫌いにならない。おじさんまで嫌いになったら、私の好きな人がいなくなっちゃうから」と涙を流しながらテシクに言った。ソミにかける言葉が見つからないテシクは、ただ去って行くソミの小さな背中を見送るしか術がなかった。
 ある夜テシクが見せに戻ると、見知らぬヤクザ者と思しき男たちが待ち受けていた。ソミの母親が組織から横領した麻薬を、質入れしたバッグに隠していたのだ。男たちは麻薬を手に入れると、「助けて、おじさん!」とテシクに救いを求めるソミと母親を拉致して車で逃走してしまう。そして、テシクの元に2人を拉致した組織から連絡が入る。組織はソミと母親の命と引き替えに、テシクにある仕事を命じるのだった。
 ソミと母親を連れ去ったのは、極悪非道なマンソク兄弟が仕切る麻薬取引から人身・臓器売買までを手がける組織で、マンソク兄弟はテシクを麻薬の運び屋に仕立て上げて、敵対するオ社長もろとも警察に捕らえさせようと目論んだのだった。テシクが麻薬とは知らずにオ社長にトランクを渡すが、そこへ警察が踏み込んできたために、オ社長は車で逃走を図る。テシクも車でオ社長を追うが、そのトランクに臓器や眼球までもが抜かれたソミの母親の全裸死体が隠されていた事など知る由もなかった。
 麻薬取引と殺人、そして臓器売買の疑いで、テシクは警察に逮捕されてしまう。一方のソミは、同じ年頃の子供たちと一緒にある家に監禁されながら、麻薬取引の道具として使われ、果ては臓器売買のために殺される運命にあった。テシクはかつて培った能力を生かしていとも簡単に警察から逃走すると、命をかけてもソミを助け出そうと決意し、単身マンソク兄弟の組織に闘いを挑むのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    兵役を終えたウォンビンの復帰2作目となる作品。邦題の『アジョシ』は「おじさん」という意味のハングル語で、ハングル文字で書くことができないために私のこのサイトでは韓流作品の現代は“THE MAN FROM NOWHERE”という英語題を掲載しているが、おそらくは本当のハングル語での原題も“アジョシ”に違いない。それほどこの作品では“アジョシ”という言葉を頻繁に耳にする。
 この作品を観ようと思った理由はもちろんウォンビン観たさなどではなく、『冬の小鳥』ですっかり魅せられてしまった小さな名優キム・セロンを観たかったためだ。ところが、実際に作品を観てみると、驚いた点が2つ。ひとつは、『母なる証明』では今ひとつ影が薄かったように思えたウォンビンだったが、この作品では彼の本領発揮とばかりに見事な熱演を見せてくれていて、彼に対する私の評価を大きく変えざるを得なかったこと。韓流ファンのオバチャンたちが彼を見てキャーキャー騒ぐ気持ちが初めてわかったような気がした。兵役を経た彼の鍛えられたボディは、イ・ビョンホンほどではないにしても、やはり見事と言うほかはない。そして、前半は長髪が鬱陶しくて仕方なかったが、キム・セロン演じるソミを救うために髪を短く刈った顔を観ると、悔しいけどこれじゃ女性が放ってはおかないだろうイケメンだと認めないわけにはいかなかった。
 もうひとつはもちろんキム・セロンについてで、前作であれほどのインパクトを受けてしまうと次の作品ではどうしても過度に期待を抱いてしまい、落胆させられることが少なくない中、彼女の場合はこの作品を観てガッカリするどころかますます気に入ってしまった。あまりにも気に入ってしまったので、画像を貼っておこうかな・・・・・これが『アジョシ』の韓国版ポスターで(もちろんウォンビンバージョンもあるが)、これが劇中のワンシーンの画像だ。ただ、彼女の場合は静止画よりも動いている方が、特に台詞を喋っている時の彼女の方が抜群に可愛いと思うので念のため。
 ウォンビン扮するアジョシことチャ・テシクが、とにかく戦闘において超人的に強すぎるのだが、かつて特殊部隊にいたという設定のおかげでそれも不自然に感じずに済んでいる。そして、敵であるマンソク兄弟の部下で、ちょっと見チョン・ウソンのような髭の悪党ラム・ロワンが、敵ながら憎めないキャラだ。表情ひとつ変えずに人を殺せるような冷酷無比な男なのだが、腕の立つテシクに対して敢えて銃を捨てて一対一で肉弾戦に臨むなんて、悪党にしては天晴れだ。身内を殺してまでも眼球をくり抜かれそうになったソミを助けたのも、「ママに会えるよね?ママが死んだなんて嘘だよね?」と涙ながらに訴えるソミの健気さに心を動かされたためだろう。余談だが、ラム・ロワンを演じたのはタイ生まれの俳優タナヨン・ウォンタラクン(長いよ!)で、なんと阪本順治監督の『闇の子供たち』にも出演しており、それを観たイ・ジョンボム監督が彼に『アジョシ』出演のオファーを申し出たとのことらしい。
 「眼球をくり抜く」と言えば、この作品では結構血を観るシーンや残酷なシーンも少なくない。なんせ、テシクは単身でマンソク兄弟一家全員を根絶やしにしてしまうのだから、それも当然と言えば当然だろうか。血みどろの殺戮の果てに、命をかけてまで助け出そうとしたソミは既に殺されており、救いようのない虚しさと絶望からテシクは自ら銃で命を絶とうとするのだが・・・・・まさにその時、「アジョシ・・・」と彼を呼ぶ声が聞こえてくるなんて、その絶妙の演出には思わず目頭が熱くなってしまった。そして、ゆっくり振り向いたテシクの視界にソミが映り、テシクの「血が付くから近づくな」という言葉を無視してテシクに抱きつくソミを観たら、私の涙腺はついに我慢の限界を超えてしまった(笑)。映画を観てうるうるしてしまうなんて、本当に久しぶりに味わう感覚だ。キム・セロンといい日本の芦田愛菜チャンといい、どうやら最近の私の嗜好は10歳前後の子役に向かっているような気が・・・・・ヤバイかな?