評     価  

 
       
File No. 1484  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2011年10月08日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   佐々部 清  
       
上 映 時 間   121分  
       
公開時コピー   健やかなるときも、
病めるときも、
キミと一緒にいたい。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   宮ア あおい [as ア晴子(ハルさん)]
堺 雅人 [as 崎幹男(ツレ)]
吹越 満 [as 杉浦]
津田 寛治 [as 崎和夫]
犬塚 弘 [as 川路]
梅沢 富美男 [as 三上隆]
田山 涼成 [as 加茂医師]
山本 浩司
中野 裕太
大杉 漣 [as 栗田保男]
余 貴美子 [as 栗田里子]
 
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あ ら す じ    マイペースな漫画家・ハルさん(崎晴子)の夫・ツレ(崎幹男)は、毎朝自分の弁当を作って出社し、会社でもバリバリ仕事をこなすスーパーサラリーマン・・・・・だったのだが、ある日状況が一変した。いつもはポジティブなツレがある日真顔で「死にたい」とつぶやいたのだ。ハルさんに言われて診察を受けたツレは、医師の加茂から「典型的な心因性の鬱病だ」と診断される。仕事の激務とストレスが原因のようだった。
 結婚5年目。ツレの変化に気付かなかったハルさんは、ツレに謝りながらも「会社を辞めないなら離婚する」と告げる。そして会社を辞めたツレが主夫になり、家事嫌いのハルさんは内心嬉しく思っていた。ツレのクソ真面目で完璧主義な一面に時々イラッとすることもあるが、ハルさんは以前より明るい性格になり、グチグチ文句を言わなくなった。けれども、喜んでばかりもいられない。収入源がなくなった高崎家は貧困街道へとまっしぐら。そこでハルさんは編集部へ行き、「ツレがうつになりまして、仕事をください!」と頼み込むのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    漫画家・細川貂々の実体験に基づくベストセラー・コミック・エッセイを映画化した作品。『神様のカルテ』に続いてまたもや宮アあおいかと少々食傷気味だったが、幸いにも作品自体は『神様のカルテ』よりも数段面白かった。宮アあおいも悪くはなかったが、この映画が成功した要因はと尋ねられれば、私は迷わず堺雅人の演技だと断言したい。
 漫画家という仕事が不規則になりがちなのはわかるのだが、それにしても宮アあおい扮するハルさんはあまりに堺雅人扮する夫・ツレに依存しすぎじゃないか。寝ているハルさんを尻目ににツレは自分の弁当を作って出社するなんていうオープニングからして、私には信じられない夫婦関係だ。もっとも、そういう関係はもともとツレが望んだものだから仕方ないと言えば仕方ないか。
 それにしても、ツレの性格が几帳面を自認する私でさえ足下にも及ばないほどの几帳面ぶりには舌を巻く。月曜から金曜日まで弁当に入れる具材は日替わりで決まっていて、冷蔵庫の中には「月」から「金」と書かれた5個のタッパーにそれぞれ収められているし(てことは、毎週毎週弁当の中身は同じってことになるけど、よく飽きないなぁ)、着けていくネクタイも然り。ネクタイハンガーに「月」から「金」まで書いた紙が貼られてるなんてね。普通だったらそこまで型にはまった生活に息苦しさを感じるものだけど、それがツレには逆に楽なんだろうな。さらに凄まじいのは、退職願を書く際に定規で文字の間隔を計って書かないと気が済まないという徹底ぶり。最初から便箋じゃなくて原稿用紙に書けばいいのにね。あんな調子じゃぁ、いつか精神のバランスが崩れて病気になってしまうだろうことは火を見るよりも明らかだ。
 ハルさんに言われて会社を辞めたツレだが、あの性格だから仕事もせずに休んでいることを負い目に感じてしまう悪循環。風呂場の取っ手にタオルを吊して自殺を図るのだが、観ている側は「あんな方法じゃ死ねないよ」と笑いたくなるシーンでありながら、笑ってしまうのは不謹慎に思えてしまう。そんなツレに、「休日は休むことが仕事なんだよ」と言ったハルさんの言葉が暖かく響く。そして、ハルさん自身も家計を自分が支えなければならなくなったことにより、皮肉にもそれまでは気ままに漫画を描いていたようで、実は自分の描きたいものを描いていなかったことに気づく。同じ環境に長くいた人間は、自分の居場所を変えてみることでそれまでに気づかなかったものが見えてくるようだ。
 なぜかツレの講演に現れた梅沢富美男、実はあの声の主だったとはねぇ。ワンシーンながら美味しいところを持って行ってしまうのはさすがだね。