『アイアンマン』『マイティ・ソー』と同様にMARVELのコミックを映画化した作品。キャプテン・アメリカは確かに常人を凌ぐ身体能力を身につけたというものの、スーパー・ヒーローとしてはあまりに物足りなく、「なぜこんな作品を?」という疑問を強く感じていた。ところが、観てみるとこの作品自体の存在価値というよりはむしろ、このところ『アイアンマン2』や『マイティ・ソー』で情報が小出しにされてきた“AVENGERS”への布石という意味合いが大きいことがわかった。この作品の最後にもやはり次作の予告編ともいうべき特別映像が用意されており、『マイティ・ソー』同様に「キャプテン・アメリカには“AVENGERS”で会える」という字幕が。
その“AVENGERS”とは2012年8月に日米(いや、全世界かな?)同時公開となる映画“MARVEL'S THE AVENGERS(原題)”のことで、MARVELのヒーローたちが一堂に会するという、いわば「MARVELだヨ!全員集合」とでも言うべき作品だということがはっきりした。だから、この作品にもサミュエル・L・ジャクソン扮するニック・フューリーや、ロバート・ダウニー・Jr扮するトニー・スタークの父であるハワード・スタークが登場するのだ。そして、こういう宣伝展開をされてしまうと、どうしても“MARVEL'S THE AVENGERS”を観ざるを得なくなるような気持ちにさせられるワケで、まんまとMARVELの戦略に乗せられてしまった私としては、来年8月公開の“MARVEL'S THE AVENGERS”を間違いなく劇場で観ることになるはず。あ、でもその前に、“MARVEL'S THE AVENGERS”に登場するヒーローを主役にした作品がまだあるのかな?
んなわけで、この作品は“MARVEL'S THE AVENGERS”の導入的に過ぎない位置づけのためか、今ひとつ主人公のキャラクターに魅力が感じられないのは致命的だ。肉体改造によって常人を遙かに上回る力を身につけたとは言っても、所詮はただの人間であって、ただ特殊金属でできた円形の盾をブーメランのように操るだけじゃねぇ(苦笑)。そして、1940年代に活躍したという設定の、最初の“AVENGER”である彼を、21世紀のヒーローたちと一緒に活躍させるために、「70年もの間眠り続けてきた」という設定はちょっと苦しい気がする。彼は常人の4倍も新陳代謝が早いっていうことだから、年老いていくのもまた常人の4倍の早さなんじゃないのか?なんて思うのは素人の勘ぐりに過ぎないかもしれないけど。
キャプテン・アメリカを演じたのは『ファンタスティック・フォー』でヒューマン・トーチを演じたクリス・エヴァンスだが、肉体改造を受ける前の貧弱な体型がVFXだとは、その効果は『ベンジャミン・バトン』でも実証済みだが、改めて凄いと痛感させられる。どちらかというと細身という印象のクリスだから、肉体改造後のムキムキもやはりVFXによるものだろう。
ヒューゴ・ウィーヴィングが相変わらず悪役を怪演している。最初の方こそ素顔を見せるものの、後半は真っ赤なガイコツ顔になってしまうなんて、本当に顔を出さない役が多い。でも、あの独特の声を聞けばすぐ彼だとわかっちゃうんだけどね。