評     価  

 
       
File No. 1489  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2011年10月15日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   三池 崇史  
       
上 映 時 間   126分  
       
公開時コピー  
いのちを懸けて、問う
 
なぜ男は、切腹を願い出たのか
世界を圧倒した衝撃の超大作。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   市川 海老蔵 [as 津雲半四郎]
瑛太 [as 千々岩求女]
満島 ひかり [as 美穂]
竹中 直人 [as 田尻]
青木 崇高 [as 沢潟彦九郎]
新井 浩文 [as 松崎隼人正]
浪岡 一喜 [as 川辺右馬助]
天野 義久 [as 佐々木]
大門 伍朗 [as 和尚]
平 岳大 [as 井伊掃部頭直孝]
笹野 高史 [as 宗祐]
中村 梅雀 [as 千々岩甚内]
役所 広司 [as 斎藤勘解由]
 
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あ ら す じ    江戸時代初頭。徳川によって戦国の世に終止符が打たれ、あたかも平和が訪れたかのように見えた時代。しかし、幕府の圧政により理不尽な大名のお家取り潰しが行われ、巷には職や家さえも失った浪人があふれていた。そして、そんな浪人たちの間では、「狂言切腹」が横行していた。それは、裕福な大名屋敷の庭先で切腹させて欲しいと願い出て、ある者はその潔さに感服した大名から召し抱えられ、ある者は面倒を避けたい大名から金銭を与えられるという、体のいいゆすりだった。
 ある日、名門・井伊家の門前に津雲半四郎という名の侍が訪れ、切腹を願い出た。これに直接対応した家老・斎藤勘解由は、数ヶ月前にも彼と同じ藩の若い浪人・千々岩求女が切腹を願い出た顛末を半四郎に語り始めた。
 求女の切腹が狂言であることを見抜いた井伊家は、彼の言葉通り庭先での切腹を認め、井伊家で最も手練れと言われる沢潟彦九郎を介錯人に選定した。ところが、いざ切腹となると求女は急に猶与を願い出たうえに、勘解由に対して三両の金子を用立てるよう願い出たのだ。結局後戻りできない状況に追い込まれた求女は、自ら所持していた脇差しを与えられるが、彼の脇差しは本身ではなく竹光だった。
 求女を不憫に思った勘解由は自らの脇差しを与えようとしたが、沢潟はこれを制して竹光で求女に切腹を強要した。何度も竹光を自らの腹に突き立てて介錯を願い出る求女に対し、沢潟は冷ややかな眼で一向に介錯をしようとしない。ついに見るに見かねた勘解由自らが太刀を取って介錯に及んだ、それが求女の切腹の顛末だった。話を聞き終えた半四郎の「哀れだ」という言葉を不審に思った勘解由だったが、間もなくその言葉の真意を思い知らされることになる。求女と同じ庭先で切腹をする段になって、半四郎は驚くべき真実を語り始めるのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    「時代劇初の3D」という謳い文句の作品で、通常なら迷わず2Dを選んでいたところだが、幸か不幸かTOHOシネマズの1ヵ月のフリーパスを持っていたため、3D料金の300円だけ払えば観られるとあって、3Dを選んでみたのだが・・・・・『アバター』のように奥行きが感じられる映像でもなく、かといってスクリーンから飛び出すような映像もなく、この作品を3Dにした意味が全く不明、というよりも、3Dにする必要性は皆無だった。これなら昔日光江戸村で観た3Dの映像の方が遙かに迫力もあり、三池監督の単なる自己満足じゃないかと言いたくなる。通常のレイトショー料金1,200円+3D料金300円を払っていたら、間違いなく「金返せモード」に陥っていた。
 主演はお騒がせの市川海老蔵だが、本業が歌舞伎役者であるために、どうしても彼の演技を見ていると舞台向けのオーバーアクションに感じてしまう。例えば大きく見開いた眼や極端な表情はまさに見得を切っている様子そのものだし、台詞回しもあまりに固い。まぁ、現代劇じゃなくて時代劇だから、不自然に思うのは私だけで、あれはあれでいいのかもしれない。でも、彼に対して瑛太の台詞が逆にあまりにも軽く感じてしまうから、その辺りのバランスを考えてキャスティングして欲しかった。そもそも、1977年生まれの海老蔵の息子役を、1982年生まれでわすか5歳しか違わない瑛太が演じるのはどう考えても不自然だ。
 海老蔵扮する津雲半四郎の娘で、瑛太扮する千々岩求女の妻である美穂を演じた満島ひかりはさすがだね。『ラビット・ホラー3D』は作品自体がダメダメだったけど、この作品では期待通りの演技の上手さを発揮していて、薄幸の女性が似合っていた。
 予告編を何度も観た限りでは、役所広司扮する斎藤勘解由が卑怯な策士で、それを海老蔵扮する津雲半四郎が諫めるために切腹するのかと思っていた。ところが本編を観てみると、斎藤勘解由の言い分の方が筋が通っていて、むしろ半四郎の逆恨みであるように思えた。求女が巷で噂の(?)狂言切腹を企てようとしていたことは明らかで、これに対してある意味厳正な態度で臨んだのが斎藤勘解由であり井伊家で、その際求女の切腹願いが本心であろうとなかろうとそれは関係ない。だから、そんな求女を「哀れに思わないのか!?」などという半四郎の訴えはひいき目に見ても筋が通っていない。もっとも、沢潟の求女に対する侍らしからぬ陰湿な仕打ちは、観ていて不愉快だったけど。
 それにしても、名門・井伊家で名だたる剣の使い手であるはずの沢潟彦九郎、松崎隼人正、川辺右馬助が3人がかりでも半四郎に歯が立たず、挙げ句に武士の命とも言うべき髷を取られてしまうとは、いくら戦のない時代とはいってもあまりに不甲斐なくて、その方が井伊家にとっては面目丸潰れじゃないの?