評 価
File No.
1490
製作年 / 公開日
2011年 / 2011年10月22日
製 作 国
日 本
監 督
石井 克人
上 映 時 間
114分
公開時コピー
それは、運命の荷物。
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最初に観たメディア
Theater
Television
Video
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キ ャ ス ト
妻夫木 聡
[as 砧涼介]
永瀬 正敏
[as 花園丈(ジョー)]
松雪 泰子
[as 山岡有紀]
満島 ひかり
[as 田沼ちはる]
安藤 政信
[as 背骨(李銀亭/リ・インティン)]
津田 寛治
森下 能幸
寺島 進
松田 翔太
[as 警官]
大杉 漣
[as 警官]
阿部 力
[as 張福儀(チャン・フイ)]
我修院 達也
[as 塚田マサコ(ジジイ)]
テイ 龍進
[as 内臓(李安煕/リ・アンシ)]
清川 均
[as 高橋義春]
島田 洋八
[as 田沼春治]
高嶋 政宏
[as 河島精二]
小日向 文世
[as 西尾健治]
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あ ら す じ
役者を志望しながらもその夢に挫折し、今は目的もなくフリーターで食いつないでいた
砧涼介
。彼はある日パチスロ店声をかけられた中国人から、パチスロでイカサマを使って儲ける話を持ちかけられる。ところが、そのイカサマがバレてしまい、そのパチスロ店でもう二度と儲けられなくなった代償として300万円という巨額の借金をさせられてしまう。砧は借金返済のために照会された裏社会の便利屋・
山岡有紀
から斡旋された裏の運び屋=スマグラーの仕事をすることとなった。
運送の仕事を仕切る
ジョー
とその助手の
ジジイ
と組んで初仕事にかかった砧だが、依頼された荷物はチャイニーズマフィアの
背骨
と
内蔵
に殺された田沼組組長・
田沼春治
の死体だった。危険な荷物の運搬と処理がスマグラーの仕事で、高額報酬の理由はそこにあったのだ。
一方、組長を失った田沼組の幹部・
西尾健治
や
河島精二
らが犯人探しに動き出し、便利屋の山岡も組から犯人確保を強要される。山岡は裏で手を組んだ
張福儀
を使い、背骨に薬を盛って背骨の生け捕りに成功すると、砧たちに生け捕りにされた背骨を田沼組まで送り届けることを次の仕事として命じる。しかも、あろうことかジョーが頑なに拒否するのを強引に押し切った亡き田沼組長の若妻・
田沼ちはる
が、仕事を見届けるために彼らのトラックに同乗することになってしまう。
こうして砧、ジョー、ジジイとちはるを乗せたトラックは、拘束衣を着せられて椅子に縛り付けられた背骨を荷台に積んで走り出したが、その道中で持ち前のお人好しが災いして、砧はもはや死を覚悟するしかないという人生最悪の失敗をしてしまうのだった・・・・・。
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たぴおか的コメント
『鮫肌男と桃尻女』の石井克人監督が今までの鬱憤をすべて晴らすかのように、本領をいかんなく発揮したバイオレンス・ムービー。「石井監督は『山のあなた 徳市の恋』みたいな作品を撮っていてはいけない、やっぱりこうじゃなくちゃね。」なんていうファンの声が聞こえてきそうな作品だ。タイトルの“スマグラー(=
Smuggler
)”とは「密輸業者」という意味で、ひょんなことから裏社会の運び屋に携わることになった妻夫木聡演じる主人公・砧が巻き込まれる騒動が、徹底したバイオレンス描写を基調にブラック・ユーモアを交えて描かれている。原作はというとあのコミック『闇金ウシジマくん』の原作者・真鍋昌平だというから、作品の内容も推して知るべしだろう。ちなみに、私個人としては積極的にはバイオレンス描写は好みとは言いかねるし、特に拷問シーンはあまりに痛々しくて見るに忍びなかった。
『おまえの未来を運べ』なんてセンスのカケラも感じられないようなダメダメな副題は付けるべきじゃない。内容を誤解されかねないし、事実いつも予備知識を仕入れずに臨む私は、副題から受ける印象と中身とのギャップには戸惑った。そして、妻夫木聡が主演のはずのこの作品、実質的な主役はどう考えても永瀬正敏だろう。私は永瀬正敏という俳優はあまり好きじゃなかったのだが、この作品で彼が見せる味のある渋さは彼を見直してなおお釣りがくるくらいだ。そして、妻夫木、永瀬を取り巻く脇役に相変わらず奇妙な異星人的キャラクターの我修院達也、その3人に安藤政信、高嶋政宏らのキレまくりのキャラクターが絡んでくる。
いきなり冒頭で安藤政信扮する中国の殺し屋・背骨がヌンチャクで田沼組の組長以下を叩きのめすシーンは圧巻。ヌンチャクがヒットする瞬間をスローで見せる映像は迫力充分で、ちょっと見ないうちに安藤政信がこんな凄いことになっていたとは思ってもみなかった。そして、組長を殺された田沼組のブチ切れたサディスト・河島を演じた高嶋政宏にはもう絶句するしかない。彼の演じる河島の変態サディスト野郎ぶりは凄まじく、砧に対する拷問のクライマックスで見せるコスチュームなどは、それが滑稽であればあるほど却って恐ろしい。先日の『探偵はBARにいる』で今までのイメージを一掃するような怪演を披露してくれた弟・政伸と共に、キワモノ役者に路線変更でもしようというのだろうか(笑)。