評     価  

 
       
File No. 1492  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2011年10月28日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ダンカン・ジョーンズ  
       
上 映 時 間   93分  
       
公開時コピー   警告:このラスト、映画通ほどダマされる。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ジェイク・ギレンホール [as コルター・スティーヴンス大尉]
ミシェル・モナハン [as クリスティーナ・ウォーレン]
ヴェラ・ファーミガ [as コリーン・グッドウィン大尉]
ジェフリー・ライト [as ラトレッジ博士]
マイケル・アーデン [as デレク・フロスト]
キャス・アンヴァー [as ハズミ]
ラッセル・ピーターズ [as マックス・デノフ]
ブレント・スキャッグフォード [as ジョージ・トロクセル]
クレイグ・トーマス [as 金時計のエグゼクティブ]
ゴードン・マステン [as 車掌]
スーザン・ベイン [as 看護師]
ポーラ・ジーン・ヒクソン [as コーヒーマグの女性]
カイル・ゲートハウス [as 大学生]
アルバート・クワン [as ソーダ缶の男]
 
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あ ら す じ    コルター・スティーヴンス大尉は、列車の座席で目覚める。目の前の女性クリスティーナが、親しげに話しかけてくる。だが、コルターには自分がなぜここにいて、彼女が誰なのかわからなかった。彼はつい先日まで、アフガニスタンで戦闘ヘリを操縦していたはずなのだ。列車内の洗面所で鏡を覗きこんだ彼の眼に映ったのは、見知らぬ別人の顔だった。そして、所持していた身分証明書には、“ショーン・フェントレス:教師”と記されている。そのとき突然車内で大爆発が発生し、コルターはなす術もなく炎に飲み込まれていった。
 コルターが意識を取り戻したのは薄暗い密室だった。モニターに映った軍服姿の女性、コリーン・グッドウィン大尉から列車の爆発事故について質問されるが、状況が飲み込めず記憶が混乱するコルターには答えられなかった。戸惑うコルターにグッドウィンは、そこは“包囲された城”と呼ばれる空間で、コルターはラトレッジ博士が開発した死ぬ8分前の人間の意識に入り込む“ソースコード”というプログラムを使い、列車爆破の真犯人を探すミッションの遂行中だという。そして、再び彼の意識はは8分のミッションへと飛ばされるのだった。
 何度もミッションを繰り返すうち、コルターの頭にひとつの恐るべき仮定が浮かんだ。グッドウィンにその仮定をぶつけてみたものの、彼女から返答は得られなかった。そこでコルターは、何度目かのミッション中に、アフガニスタンに向かったコルター・スティーヴンス大尉について調べるよう、クリスティーナに依頼する。その結果判明した事実は、コルターの仮定通りだっただけに、彼にとっては衝撃的な真実だった。やがて真犯人が乗客のひとり、デレク・フロストであることを突き止めたコルターはそのことをグッドウィンに報告し、彼のミッションは終了となる。しかしコルターは、グッドウィンにひとつの重大な願いをグッドウィンに託した上で、もう一度“ソースコード”を使って爆破事故の8分前へと遡った。ショーンではなくコルター自身が思いを寄せるようになったクリスティーナを救い、そしてもう一つどういう結末が訪れるか想像もできないある試みを実行するためにも・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    同じ10月28日(金)公開される話題作『三銃士』とこの作品のどちらを観るか迷った末に、この作品を観ることに決めたのだが、その甲斐あってか期待以上の内容だった。作品のコピーには「警告:このラスト、映画通ほどダマされる。」なんてあるけど、こんなコピーを付けられたら「だったら、単なる映画バカの自分だったらダマされないんじゃないかな?」なんて気負ったりしちゃう(笑)。作品は予想通り、観る者に何の情報も提示されずにいきなり列車内でジェイク・ギレンホール扮するコルター・スティーヴンス大尉が目覚めるシーンからスタートする。そして、なぜか彼は向かいの席に座る女性からショーンと呼ばれ、やがて8分後には列車が爆発してしまう。それは彼に課されたミッションの終了を意味し、彼はやっと自分の身体に戻れるのだが、実はここにも大きな陥穽が設けてあった。
 やがて、次第に状況がわかってくる。彼はあるミッションの遂行中で、それは死ぬ8分前の人間の身体に入り込み、列車を爆破した犯人を探し出すというものなのだが、それでもすべての情報が提供されたわけではない。こうやってネタを小出しにされるものだから、退屈なんてするはずはなく、真相が気になるあまりに無意識にグイグイと作品に引き込まれてしまうのだ。
 コルターになぜかモニター越しでミッションを伝える、ヴェラ・ファーミガ扮するグッドウィン大尉。非情なミッションをコルターに強いながらも、どこか人間的な暖かさを感じさせる彼女の深みがある演技は、あくまでコルターをミッション遂行のための手段としか考えていない、ジェフリー・ライト演じるラトレッジ博士と好対照でいい。彼女との対話が常にスクリーンを通してというのもキー・ポイントのひとつだ。そして、今コルターがいる場所が一体どこなのか、これがわからない。すべての疑問が解け、コルターの真の姿が映された時は、何とも言えない切なさと哀しさをこらえることができない。
 そんな痛切な思いを中和してくれるのが、ミシェル・モナハン扮するクリスティーナの存在であることは間違いない。パトリック・デンプシーと共演した『近距離恋愛』の時よりもずっと若く見えたのは気のせいかな?そして、コルターが演じるショーンとクリスティーナが一体どういう関係にあるのかは、2人の会話から推測するほかはないのだが、これがまたひとつの楽しみでもある。
 やがて、すべての秘密が明らかにされたとき、コルターはひとつの決断をする。それはもちろん、クリスティーナを救いたいという思いなのだが、実はその決断の裏にはもうひとつしたたかな計算が隠されているのだ。そしてその計算とは何かを知る鍵は、グッドウィンとの会話に隠されている。その辺りをよ〜く注意して観ると、細部まで計算された作りに感心することだろう。そして、最後のミッション(いや、これはもうミッションとは言えないな)で8分が経過した時に、一体コルターはどうなってしまうのか?賛否両論に分かれそうなエンディングだが、私はこの作品の終わり方にはホッと胸をなで下ろした。
 どうもハッキリしない持って回った言い方ばかりになってしまったが、これ以上詳しく書くとネタバレになってしまうもので。気になった方は、是非とも劇場で実際に自分の目で確認していただきたい。