評     価  

 
       
File No. 1493  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2011年10月29日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   ダグ・リーマン  
       
上 映 時 間   108分  
       
公開時コピー   アメリカ合衆国 史上最大のスキャンダル
イラク戦争を巡る巨大な謀略。
権力に立ち向かったCIAエージェントの孤高なる戦い。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ナオミ・ワッツ [as ヴァレリー・プレイム]
ショーン・ペン [as ジョー・ウィルソン]
サム・シェパード [as サム・プレイム]
デヴィッド・アンドリュース [as ルイス・“スクーター・リビー”]
ブルック・スミス [as ダイアナ]
ノア・エメリッヒ [as ビル]
ブルース・マッギル [as ジム・パビット]
マイケル・ケリー [as ジャック]
アダム・ルフェーヴル [as カール・ローヴ]
タイ・バーレル [as fレッド]
ティム・グリフィン [as ポール]
ジェシカ・ヘクト [as スー]
ハーレッド・ナバウィ [as ハマッド]
トーマス・マッカーシー [as ジェフ]
アシュリー・ガーラシモヴィッチ [as サマンサ・ウィルソン]
クイン・ブロジー [as トレヴァー・ウィルソン]
 
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あ ら す じ    2001年9月11日の同時多発テロ以降、アメリカのブッシュ政権はイラク政府が大量破壊兵器を密かに保有し、世界にテロを“輸出”する「悪の枢軸」のひとつだとして、世論を動かしながら攻撃準備を進めていた。極秘にこの疑惑を調査していたCIAの秘密諜報員ヴァレリー・プレイムは、潜入捜査の末イラクに核兵器開発計画がないという結論に達する。一方、ヴァレリーの夫で元ニジェール大使のジョー・ウィルソンも、国務省の依頼でアフリカ・ニジェールへ赴く。イラク政府が核兵器開発に必要な濃縮ウランを密かに買い付けているとの情報の真偽を確認するためだ。そして彼もまた、イラク政府によるウラン購入の事実はないと判断した。
 ところが、当時のブッシュ政権はヴァレリー夫妻の報告を無視し、2003年3月20日イラクへ宣戦布告する。これに対し、自らの調査結果を握り潰されたジョーは4ヶ月後、自身の調査報告を元にイラク戦争の真実をニューヨーク・タイムズ紙に寄稿し、ブッシュ政権を揺るがす大論争を巻き起こす。ところがその直後、ワシントンの有力ジャーナリストたちに、ヴァレリーがCIAの秘密諜報員だという情報がリークされてしまう。情報漏えいを指示したのは、チェイニー副大統領主席補佐官のルイス・“スクーター”・リビーだった。身分を暴露され、たちまち世間の好奇の目に晒されるヴァレリー。家族や各国に散らばる協力者にも危険が迫り、彼女のキャリアと私生活は崩壊し始める。
 匿名で送られてくる脅迫状や無言電話、容赦ない世間の中傷。今まで証券会社勤務だと偽っていた彼女から友人たちさえも離れていった。ジョーはメディアに自身の正義を論じるが、強大な権力を持つホワイトハウスを恐れるあまりヴァレリーは沈黙を貫く。公の場で事実を明かすべきだと言い募るジョーと対立し、唯一の安らぎの場所だった家庭さえもが崩れ落ちそうになったとき、彼女はいつも温かく見守ってくれた両親のもとへ子供を連れて向かった。家族との穏やかな時間を過ごす中、大切なものとは何か気付いたヴァレリーは、夫がひとり待つ自宅へと戻る。そして、自らの名誉と家族を守るため、強大な国家に戦いを挑むのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    『三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』に大半の観客が流れるだろうから、この作品はきっと空いているだろうと思ったら案の定、公開初日の土曜日の地元TOHOシネマズで、初回の観客はわずか8名だった。この作品のタイトル『フェア・ゲーム』の“ゲーム”とはいわゆる遊戯や試合という意味ではなく、狩猟の獲物となる鳥獣という意味で使われており、ブッシュ政権に対する国民の批判をそらすためにはヴァレリーはまさにフェア・ゲーム(=好都合の獲物)だったというわけだ。
 私がこの作品を観た最大のモチベーションは主演のナオミ・ワッツにあったのだが、エンド・クレジットで登場する本物のヴァレリー・プライムを観て、あまりに似ているので驚いた。演技力とルックスという双方の理由から、おそらくナオミ・ワッツ以上の適役はいないだろうと思う。“ラブコメの女王”と賞賛されながら今は見る影もなく老けてしまったメグ・ライアンとは逆に、ナオミ・ワッツの場合は年齢を重ねるごとに衰えるどころかますます深みのある美貌に磨きがかかってきているようにさえ思える。また、夫のジョー役にショーン・ペンを抜擢したのもこれ以上はないキャスティングだったと言える。
 9.11同時多発テロ以来のアメリカの対イラク攻撃は、国連のたび重なる査察にもかかわらずイラクで何の核兵器も発見されなかったことからも、誤った大義に基づく行動であったことは明白だ。そして、最近のハリウッドにもブッシュ政権の過ちを検証するような作品が登場するようになってきているようだ。この作品では、イラクがニジェールから大量のウランを輸入したという情報の真偽をCIAエージェントのヴァレリー・プライムの夫で元ニジェール大使のジョー・ウィルソンが調査した結果、それが事実無根だと断定せざるを得なかったにもかかわらず、政府は彼の調査結果を握り潰してしまう。事実を事実として公表したならば、それは当時のブッシュ大統領の面目が丸つぶれになり政権が失墜することは明らかだからだ。
 そこまでであれば、政府による言論統制の一環として「そういうこともあるかもしれない」で済むかもしれない。だが、さらにホワイトハウスは大統領の強権を発動し、あろうことか極秘であるはずのCIAエージェントであるヴァレリーの身元をマスコミにリークしてしまうのだ。これはまさに国家権力の横暴以外の何物でもない。しかも、この作品はフィクションではなく実話に基づいていると思うと、寒気すら覚える。ロコツに独裁政権の圧政を見せつける北朝鮮も怖ろしいが、それと対極的なポジションに立つ、自由の国の象徴であるかのイメージがあるアメリカにも、表には現れない裏側の暗黒の部分があると思うとさらに怖ろしい。