評     価  

 
       
File No. 1494  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2011年10月29日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   三谷 幸喜  
       
上 映 時 間   142分  
       
公開時コピー   証人はただ一人、落ち武者の幽霊。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   深津 絵里 [as 宝生エミ]
西田 敏行 [as 更科六兵衛]
阿部 寛 [as 速水悠]
竹内 結子 [as 日野風子/矢部鈴子]
浅野 忠信 [as 木戸健一]
草g 剛 [as 宝生輝夫]
中井 貴一 [as 小佐野徹]
市村 正親 [as 阿倍つくつく]
小日向 文世 [as 段田譲治]
小林 隆 [as 管仁]
KAN [as 矢部五郎]
木下 隆行 [as 工藤万亀夫]
山本 亘 [as 日村たまる]
山本 耕史 [as 日野勉]
戸田 恵子 [as 猪瀬夫人]
浅野 和之 [as 猪瀬]
生瀬 勝久 [as 占部薫]
梶原 善 [as 伊勢谷]
佐藤 浩市 [as 村田大樹]
深田 恭子 [as 前田くま]
篠原 涼子 [as 悲鳴の女]
唐沢 寿明 [as 医師]
 
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あ ら す じ    失敗続きでうだつの上がらない弁護士の宝生エミに、ボスの速水悠が与えた最後のチャンスは、とある殺人事件で妻・矢部鈴子を殺したとして起訴された被告人・矢部五郎の弁護だった。早速被告人に接見したエミは、矢部が事件当夜にとある旅館の一室で落ち武者の幽霊に馬乗りになられて金縛りに遭っていたと告げられた。ところが、被告人にはアリバイがあるとエミがが主張するのに対し、敵対する敏腕検事の小佐野徹は、「その落ち武者の幽霊でも証人として連れてくるしかない」などと冗談扱いして全く取り合わない。そこでエミは、実際に矢部の言葉を確かめるべく、彼が宿泊していたという“しかばね荘”へと向かった。
 心霊スポットを売りにしている“しかばね荘”は想像を絶するオンボロ宿で、その女将の猪瀬夫人は、偶然覗いた“歯ぎしりの間”に泊まっていたはずの矢部がいなかったと証言する。しかしエミは、矢部が間違えて隣の“耳鳴りの間”にいたのではないかと考える。そして、日も暮れて変える手段を失ったエミは、そのまま“耳鳴りの間”に一泊することとなった。するとその夜更け、矢部と同じく金縛りに遭ったエミが目を開くと、矢部の言葉通り落ち武者の幽霊が馬乗りになっていた。彼の名は更科六兵衛、裏切りの濡れ衣を着せられて打ち首となり、無念のあまり成仏できずにいるという。エミはとっさに六兵衛に裁判で証言して欲しいと頼み込むのだった。
 無実の罪で裁かれようとしている者がいる、そんなエミの言葉に六兵衛は証人を引き受けてくれたものの、2人には乗り越えなければならない大きな問題があった。それは、六兵衛の姿を見たり声を聞いたりできるのが特定の人間に限られることだった。しかも、検事の小佐野は死後の世界など一切信じようとしないカタブツだったのだ。それでも六兵衛を証言台に立たせ証言をさせたエミは、途中である疑問を抱くようになった。「もしかして、小佐野にも六兵衛が見えているのではないか?」と。そして、小佐野が話すのを遮るように大声で喋る六兵衛に対し、ついうっかりと小佐野は「うるさい!」と反応してしまったことで確信したエミは、小佐野を懐柔するためにある一策を講じるのだが・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    私が観る三谷監督作品は『ザ・マジックアワー』に続き2作目となるが、少なくとも前作よりは面白かった。三谷作品で法廷ものと言えば、『古畑任三郎』で明石家さんまが犯人役の小清水弁護士を演じたエピソードがすぐに思い浮かぶ。小清水弁護士は証人の信憑性を崩すためにバナナを使ったが、この作品でも深津絵里扮する弁護士の宝生エミにバナナをを使わせたり(あれはメチャクチャ無理があると思うが)、裁判で被告人が無実になるどころかその場で真犯人が明らかになるなどと、明らかに『古畑』にオーバーラップしている。意識してかそれとも無意識になのかはわからないが。
 相変わらず何でもアリのドタバタコメディだから、突っ込み所は満載だけど、この際野暮な真似はしたくないので無視するとして、落ち武者の幽霊が裁判の証人になるとは、その奇想天外な発想には脱帽。そして、それを見事に演じてしまう西田敏行の演技がこの作品のすべてと言ってもいい。人を怖がらせるはずの幽霊だが、どこか人間臭くてお茶目なところがある更科六兵衛、こういう役柄を演じさせたら西田敏行の右に出る者はいないだろう。そして、意外な俳優が意外な場面で登場するのも三谷作品の楽しみのひとつだ。よくもまぁ、あんな役柄を引き受けたものだと感心してしまう陰陽師・阿倍つくつく役を演じた市村正親、『TRICK』の矢部謙三といいこの作品の占部薫といい、頭髪に問題がある(?)キャラが定着してしまいそうな生瀬勝久、お茶目なファミレスの店員に深キョン、誰が演じているのか全く気づかなかった“悲鳴の女”の篠原涼子、そして極めつけは、なぜ彼をあそこで登場させたのかその意図が全く不明な医師の唐沢寿明。他の監督の作品では、こういった贅沢(というか、無駄遣い?)な俳優の使い方にはまずお目にかかれないだろう。
 エミと敵対する検事・小佐野を演じた中井貴一もさすがだね。彼が亡くなった愛犬とレストランで再会するシーンなどは、これがあの中井貴一なのか?と唖然とするような一人芝居を見せてくれている。あのデカイ図体で、なんと法廷でタップダンスを踊る阿部ちゃんには苦笑させられたが、彼の役名・速水悠って、もしかして早見優のパロディなのかな?『古畑任三郎』で明らかにCXの軽部アナを意識した名前のキャラ(演じたのはあの田中要次!)を登場させた三谷監督のこと、そんなおふざけも充分に考えられる。先日の『スマグラー』に続き抑えめの渋い演技が妙にコワイ小日向文世もいい味出してるね。
 残念なのはラストシーンで、エミが父親と再会する最大の山場となるはずのシーンだろうが、「感動させよう」という意図があまりにミエミエに思えて興醒めしてしまった。もしかしたら、父親役が草g剛だったせいかもしれないけど。SMAPでも中居に次いで歌が下手な草g君のアルプス一万尺の鼻歌、ちょっと聞くに堪えなかったぞ。