評     価  

 
       
File No. 1497  
       
製作年 / 公開日   2010年 / 2011年10月29日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   デブラ・グラニック  
       
上 映 時 間   100分  
       
公開時コピー   家族のために 未来のために
彼女は大人になるしかなかった
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ジェニファー・ローレンス [as リー・ドリー]
アイザイア・ストーン [as ソニー・ドリー]
アシュリー・トンプソン [as アシュリー・ドリー]
ヴァレリー・リチャーズ [as コニー]
シェリー・ワッゲナー [as ソニア]
ギャレット・ディラハント [as バスキン保安官]
ウィリアム・ホワイト [as ブロンド・ミルトン]
ローレン・スウィーツァー [as ゲイル]
コディ・ブラウン [as フロイド]
シナモン・シュルツ [as ヴィクトリア]
ジョン・ホークス [as ティアドロップ]
キャセイ・マクラレン [as ミーガン]
ケヴィン・ブレツナハン [as リトル・アーサー]
デイル・ディッキー [as メラブ]
シェリル・リー [as エイプリル]
テイル・テイラー [as サッターフィールド]
ロニー・ホール [as サンプ・ミルトン]
 
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あ ら す じ    ミズーリ州南部のオザーク山脈にある寒村。ドラッグ・ディーラーの父親ジェサップは家を出て久しく、辛い現実に耐えかねて精神を病んだ母親は会話を交わすことすらほとんどない中、17歳の少女リー・ドリーは幼い弟のソニーと妹アシュリーの世話をしながら、その日暮らしの生活を何とか切り盛りしていた。ところがある日、家を訪ねてきた保安官から、警察に逮捕されたジェサップが裁判を目前にして失踪したと告げられる。しかも、ジェサップは家と土地を保釈金の担保に入れていたために、裁判に出廷しない場合はリーの一家は家と土地を没収されてしまうというのだ。
 やむを得ず父親探しを始めたリーは、何らかの手がかりを得ようと親族や知人を訪ねる。だが、薬物漬けのジョサップの兄ティアドロップは、リーを荒っぽく突き放して取り合ってくれない。ジェサップの消息をタブー視する村人たちの過剰な反応ぶり、そして秘密を隠し持っているかのような態度にリーは不審感を抱く。そんなとき親友ゲイルの協力を得たリーは、州境のバーに足を踏み入れる。そこで父親の元愛人エイプリルと対面したリーは、ジェサップが深刻なトラブルに巻き込まれたらしいとの目撃証言を得る。さらにティアドロップが重い口を開き、もうジェサップはこの世にいないことを仄めかしてくるのだった。
 やがて裁判の当日、ジェサップはやはり姿を見せなかった。リーのもとにやってきた保釈保証人は、冷酷にも一週間以内に家を出て行くようにと告げる。何とか自宅の没収だけは免れたいリーに残された唯一の手段は、既にジェサップが死亡したという証拠を見つけ出し、保釈保証人に手渡すことだった。どうやらジェサップはこの地域の掟に背いた報いを受け、何者かに殺されたらしい。リーは全ての真相を知っているであろうミルトン一族の長老サンプ・ミルトンへの直談判を試みるが、一族が封印しようとしている父親の謎をこれ以上ほじくり返すことが彼らの逆鱗に触れてしまう。そして、ミルトン一族の女たちに拉致されたリーは、凄まじいリンチを受けてしまう。
 そんな絶体絶命のリーを助け出したのは、意外にもティアドロップだった。命は救われたものの、もはやリーは家族とともに家を立ち退くしかなかった。だがリーの切なる思いが通じたのか、予期せぬ人物が彼女の前に現れるのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    サンダンス映画祭で作品賞・脚本賞の2冠を達成したのを筆頭に、アカデミー賞でも作品賞・主演女優賞他4部門にノミネートされた作品。主演のジェニファー・ローレンスは『あの日、欲望の大地で』主役シャーリーズ・セロンの少女時代を、『X-MEN ファースト・ジェネレーション』ではミスティークを演じていたのをハッキリと覚えている。
 アメリカにも未だにこんな場所があるとはねぇ、と思わずため息をつきたくなるような閑散とした山岳地帯の寒村が舞台となっている。そして、父親が失踪し母親は精神を患うという苦境にもめげず、隣人の好意に支えられながらも弟と妹の面倒を見ながら一家を切り盛りするリーの境遇には、痛々しさを感じずにいられない。そのリーの身にさらなる不幸が降りかかってくるから、観る者は気が気でいられなくなる。
 古い因習に囚われた閉鎖的な村ではありがちな歪んだしきたりや掟が、ただ父親を探し出したいだけのリーに容赦なく襲いかかってくる。あまつさえリーの命までを奪おうとする、そんな親戚たちの価値判断は、もはや正常な社会のそれを完全に逸脱している。彼らと相対する時には、法律など何の頼りにもならないのだ。
 しかし、そんな彼女の味方になる人物がディアドロップだったとは、意表を突かれた。考えてみれば、彼も実の弟を(その時点では推測だが)殺されているのだから、リーを手助けしたくなるのは想像するに難くない。ただ、彼の「真犯人を知りたくない。知れば・・・・・」という言葉は彼の嘘偽りのない心境だった。リーに賛同する限り、彼もまたコミュニティ内では孤立無援となるからだ。
 そんなリーに、最後は救いの手が差し伸べられるのだが、それがまさかあの人物からだとは思ってもみなかった。リーを半殺しの目に遭わせた張本人だけに、その救いの手の裏には何か悪意が潜んでいるように勘ぐりたくもなるのは仕方ないだろう。ラストは一応の決着を見るものの、決してハッピーエンドなどと呼べる代物ではない。ただ、心の底まで凍えてしまいそうな荒んだ描写の締めくくりとしては、また、不幸のどん底にあえいでいたリーにとっては、救いのある結末ではあった。