評     価  

 
       
File No. 1500  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2011年11月05日  
       
製  作  国   オーストラリア  
       
監      督   ジュリア・リー  
       
上 映 時 間   101分  
       
公開時コピー   寝ているだけでいい
挑発し、誘惑し、
破滅させる
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   エミリー・ブラウニング [as ルーシー]
レイチェル・ブレイク [as クララ]
ユエン・レスリー [as バードマン]
ピーター・キャロル [as 男 1]
クリス・ヘイウッド [as 男 2]
ヒュー・キース・バーン [as 男 3]
レス・チャンテリー [as 運転手]
エデン・フォーク [as トーマス]
ミラ・フォルケス [as ソフィー]
 
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あ ら す じ    学費を稼ぐためにカフェの店員、新薬の被験者、企業の事務など様々な仕事を重ねる女子大生のルーシー。より高い収入を求めた彼女は、ある日求人情報誌に載っていたアルバイトに応募し、面接を受けることになる。募集主であるクララの事務所を訪れたルーシーは、下着姿でウェイトレスになるよう命じられる。しかしそれは“秘密の仕事”のオーディションに過ぎなかった。そして、オーディションに合格したルーシーは、その先に待っていた仕事を無謀にも引き受けてしまう。
 クララから呼び出され、迎えに来た車で田舎の邸宅に着いたルーシーは、クララから仕事の説明を受ける。それは、薬を飲んで眠らされ、意識のないままに老紳士の一夜の相手をするというものだった。眠れる美女の館、夜毎そこに訪れる紳士たちはいずれも地位もあり裕福な老紳士で、彼らが求めるものは自らの老いた体を見られないこと、そして、完全な無抵抗だった。但し、唯一挿入行為だけは禁じられていたが。
 薬を飲み眠ったルーシーが目を覚ますと、まるで何もなかったかのようで、眠っている間に男たちがしていたことを彼女は知る由もなかった。しかし、それでいて誰かにずっと監視されているような不安は、現実の生活にも影響を及ぼし始める。寝ている間の事が気になったルーシーは、部屋にカメラ小型の隠しカメラをを仕掛けるのだが・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    川端康成の小説「眠れる美女」を映画化した作品だが、実はこの作品が製作される6年前の2005年にも、ドイツが映画化して日本でも「眠れる美女」という邦題で後悔されている。ドイツ版は老紳士を主人公として客の目を通して描かれているのに対し、この作品は“眠れる美女”であるルーシーを主人公に据えて描かれているのが対照的。いずれも一人の老紳士が亡くなってしまって幕を閉じる点では共通しているが、この作品の老紳士の死因は覚悟の上の自殺だと見て取れるのに対し、私のあやふやな記憶によれば、ドイツ版では自然死かもしくは毒殺のいずれかだったように思うのだが。自殺と自然死(あるいは毒殺)では意味合いが全く違ってくるが、果たして原作はどうなっているのだろうか?
 主人公の“眠れる美女”ルーシーを演じるのがあの『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』『エンジェル ウォーズ』のエミリー・ブラウニングとは、私にはあまりに衝撃的だった。まだ10代だと思っていた彼女ももう22歳だったとはね。未だに少女の面影を残した10代でも通用しそうな彼女が大胆にも全裸になろうとは、夢にも思わなかったから。そんな彼女のヌードは顔から想像される通り肌の色が透き通るように白く、あまりにまぶし過ぎる。そして、SEXシーンが一切ないために(個人的にはその方が嬉しかった)変にエロティックに感じることがなく、あたかもミロのヴィーナス像でも観ているかのようにただただ見とれてしまった(言い過ぎ?)。
 “眠れる美女”は何をされても目が覚めないように睡眠薬を飲まされているから、自分が寝ている間に一体何が起きているのか気になるのは当然で、ルーシーは小型カメラをこっそりと部屋に設置したのだが、それがああいう皮肉な結果につながるとはねぇ。これは多分原作にはないこの作品のオリジナルだろうが、ラストをより衝撃的にする小道具としては効果的に使われていると言っていい。
 それにしても、眠っている女性に対する挿入は厳禁で、ドイツ版では「眠っている女の子の口に 指を入れようとなさったりすることもいけませんよ」なんてコピーもあるくらいなのだが、この作品では何人目かの男性が指どころか手を突っ込まんばかりの勢いで無茶をやっていたのには、不謹慎かもしれないが笑ってしまった。冗談はともかくとして、眠っている全裸の美女を前にして何もできないような状態は、健全な若者であればまさに「蛇の生殺し」状態で気が変になるかもしれない(笑)。だからこそ訪れる客は皆社会的に地位の高い高齢者なのだろうが、彼らが“眠れる美女”と一晩を過ごして一体何を思うのか、尋ねてみたい気がする。きっと、若く美しい裸体を前に、自らの老醜を思い知らされるのだろうが、それはある意味非常に自虐的な行為だと言える。彼らには一様にマゾヒストの気があるのかもしれない、なんて思ったりして(笑)。