評     価  

 
       
File No. 1502  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2011年11月05日  
       
製  作  国   中  国  
       
監      督   ジャッキー・チェン  
       
上 映 時 間   122分  
       
公開時コピー   1911年10月10日、辛亥革命。
歴史に残らなかった「命」の物語。
 

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   ジャッキー・チェン [as 黄興]
リー・ビンビン [as 徐宗漢]
ウィンストン・チャオ [as 孫文]
ジョアン・チェン [as 隆裕皇太后]
ジェイシー・チェン [as 張振武]
フー・ゴー [as 林覚民]
ニン・チン [as 秋瑾]
スン・チュン [as 袁世凱]
ジャン・ウー [as 黎元洪]
ユイ・シャオチュン [as 汪兆銘]
 
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あ ら す じ    清朝末期の中国。ホノルル留学中に近代思想を学んだ孫文は、衰退する祖国の現状を憂い革命を志すが、武装蜂起に失敗して日本に亡命する。そしてそこで、義に厚く実直な黄興張振武と出会い、同志の絆を結ぶ。
 1908年に溥儀が宣統帝として即位すると、1911年に張振武らの指導によって武昌で武装蜂起が発生し、それはやがて各地に飛び火して全土規模の辛亥革命へと発展していく。黄興は米国から帰国した孫文に合流し、軍司令官として孫文を支える。しかし、総督府の占拠に失敗すると、大勢の部下を失った上に黄興自身も負傷してしまう。
 悲しみに打ちのめされる黄興だったが、献身的に彼を看病する女性、徐宗漢や同志たちの勇気ある行動に励まされ、再び立ち上がる力を得る。一方、滅び行く清朝内部でも虎視眈々と権力の座を狙う軍人の袁世凱や、隆裕皇太后がそれぞれの思惑を持って動いていた・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    ジャッキー・チェンの映画出演100作目にあたり、ジャッキー自ら総監督・主演の2役をこなしているこの『1911』は、今からちょうど100年前に勃発した中国近代化の礎となった辛亥革命を描いたスペクタクルで、構想10年、制作費30億円という壮大なプロジェクトとなった。だがその内容はというと、皮肉な言い方をするならば広大な国土と13億という膨大な人口を誇る中国らしい、無味乾燥で実に大味な作品だった。
 まず文句をつけたいのは、登場人物の台詞と同時に中国語字幕で状況の解説が付されていて、その字幕の日本語字幕も付いているために、スクリーンは文字だらけで一体どの字幕を読めばいいのか迷っているうちに、結局場面が変わってしまっていずれも最後まで追い切れないのには辟易した。しかも、だ。それだけでもお手上げ状態なのに加えて、登場人物の名前までもがいちいち字幕で紹介されるという、これでもかと言わんばかりの文字責めのために、観終えた後に残るのは疲労感だけだった。そんなにひとりひとり名前を紹介されても、覚えられるわけないし(笑)。中国の国内のみならず、日本を初めとする海外での公開も当然に想定されるのだから、もう少し海外の観客に対する配慮があってしかるべきだ。字幕版と共に吹替版も同時上映されており、字幕版を選んで後悔した初めての作品だった。今後観る方には絶対に吹替版をお勧めしたい。
 さすがに三民主義を唱え辛亥革命の指導者となった孫文(ウィンストン・チャオは私の記憶にあった孫文の写真とソックリで驚いた)については若干の知識は持ち合わせていたが、残念ながら袁世凱や汪兆銘らの名前は世界史の教科書でお目にかかったような記憶はあるものの、辛亥革命においてどのような役割を演じたかなんていうディテールまで覚えているはずもない。ただ、後半に見せ場が増える袁世凱については、作品を観ただけでもどういう人物かおおよその見当はつくが、汪兆銘に関しては結局よくわからないままで終わってしまった。
 辛亥革命と一言に言っても、実は1895年から1911年にかけて合計10回もの武装蜂起が実行されており、この作品はその中でも1911年の武昌起義に焦点を絞って描かれているようだ。あたかも『レッドクリフ』が壮大な三国志の中の“赤壁の戦い”だけを描いているように。とは言うものの、その武昌起義だけを描いたにもかかわらず、駆け足でしかも脈絡を欠いた断片的なエピソードの連続になってしまっているうえに、それらのシーンが単なる情景の描写の域を出ないため、あたかもドキュメンタリーフィルムを観ているような味気ないものに感じられて仕方ない。
 また、一応主役はジャッキー演じる黄興になってはいるものの、ストーリーが展開するにつれて黄興の出番は減ってしまう。しかも、史実では黄興は孫文を押しのけて主役になり得るほどの人物であり優秀なリーダーであったようだが、その片鱗すらこの作品からは感じ取ることができない。黄興が主演であれば、孫文が行った外交などは思い切って割愛し、あくまで黄興の視点に立った作品にすべきだ。だが残念ながら、どう観てもこの作品の主役は孫文であり、準主役が朝廷と革命党の間を巧妙に浮遊する策士・袁世凱になってしまっている。脚本次第ではどのような作品にも大化けしそうな内容だけに、惜しまれて仕方ない。