評     価  

 
       
File No. 1504  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2011年11月12日  
       
製  作  国   日  本  
       
監      督   園 子温  
       
上 映 時 間   144分  
       
公開時コピー   ようこそ、愛の地獄へ  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   水野 美紀 [as 吉田和子]
冨樫 真 [as 尾沢美津子]
神楽坂 恵 [as 菊池いずみ]
児嶋 一哉 [as 正二]
二階堂 智 [as 吉田正男]
小林 竜樹 [as カオル]
五辻 真吾 [as 木村一男]
深水 元基 [as マティーニ真木]
内田 慈 [as 土居エリ]
町田 マリー [as マリー]
岩松 了 [as スーパーの店長]
大方 斐紗子 [as 尾沢志津]
津田 寛治 [as 菊池由紀夫]
 
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あ ら す じ    東京都渋谷区円山町のラブホテル街。その片隅にある一軒の廃屋から、20代後半から30代後半と思われる女性の遺体の一部が発見される。事件を担当することとなった女刑事の吉田和子が、ラブホテルでの情事を切り上げて駆けつけた廃屋の一室で見たものは、両手脚と首を切断され、代わりにマネキンの頭部と腕、脚が接合された遺体と、辺り一面に蒔かれたピンク色の蛍光塗料、そして被害者の血液で書かれた「城」という文字だった。
 人気作家菊池由紀夫を夫に持つ貞淑な妻・菊池いずみは、夫を愛しながらもその生活に息苦しさを感じており、何かやりたいが何をすればいいのかわからない、そんなジレンマに苛まれる毎日を送っていた。そして、由紀夫の許しを得たいずみはスーパーでバイトを始めるのだった。
 ある日、スーパーの売り場で土居エリから声をかけられたいずみは、彼女の誘いでモデルの仕事を始める。最初は衣服を着けた撮影だったが、次に下着姿になり、行き着く先はアダルトビデオの女優だった。けれども、このことを機にいずみの毎日は変わっていく。派手な服装で男にナンパされる目的で渋谷に出かけたいずみは、彼女をしつこくつけ回す男カオルに根負けし、2人でホテルんに入り体を交える。そしてその後、いずみの人生に決定的な転機をもたらす女性尾沢美津子との出会いを果たすのだった。
 昼はエリート大学の助教授、そして夜は円山町で立ちんぼをして客を取る美津子に感化され、以前とは別人のように変わってしまったいずみは、やがて美津子に勧められるままにカオルが働くデリヘル店・魔女っ子クラブで働くこととなる。ところが、最初の夜に客からチェンジを言い渡された美津子に代わって、いずみが訪れた部屋では、予想もしない事態が彼女を待ち受けていたのだった・・・・・。
 
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たぴおか的コメント    『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』と立て続けに衝撃的な作品を送り出してきた鬼才・園子温監督の最新作は、『恋の罪』というタイトルだけ見ると極めて平凡でありふれた作品のような印象を受けるが、中身は平凡でもなければありふれた作品でもない、相変わらずの園子温ワールド全開の作品で、当然のように「R18+」指定という視聴制限が設けられていた。
 女優としての格からか、主演は水野美紀になっているが、実質的な主演はどう観ても園子温監督との婚約を発表した神楽坂恵だ。グラドルとしてデビューした彼女は、その後グラドル卒業を公言して女優業に専念、『遠くの空に消えた』『十三人の刺客』の出演(私は両作品とも劇場で観たものの、彼女は記憶に残っていない)を経て、昨年の『冷たい熱帯魚』で一躍注目されることとなったようだ。そして、この作品での彼女の演技は、『冷たい熱帯魚』を遙かに上回る過激なものだった。大鏡の前で全裸になってスーパーの試食コーナーの呼び込みを演じたり、果ては放尿シーンまであり、ここまでやればもう怖い物はないと言わんばかりの体当たり演技だ。そのプロポーションに負けず劣らずルックスも美しい彼女だから、願わくば脱がなくても演技で魅せるような、例えて言うなら井川遥のような女優になって欲しいものだと思う(嘘じゃないよ)。その点について彼女自身は「まだ自分は演技するとか別の誰かを演じるとかいうレベルじゃない」と冷静に分析していて、その謙虚さには好感が持ててますます彼女のファンになってしまいそうだ(笑)。
 冨樫真の鬼気迫る演技は『冷たい熱帯魚』のでんでんに通じるものがある。ただでさえキツ目の顔の彼女が夜のメイクをすると、演技だけではなく見た目からして顔がコワイ(笑)。そして、美津子ほどに裏と表、光と闇の部分がのギャップが激しい人間は、得てして過去にトラウマを抱えているものだ。そして、そのトラウマの一つは間違いなく倒錯の傾向があった父親にあるが、実の母親・志津もその一因となっているのではないかと思われる。いずみら来客を前にして亡き夫を下品だと公言し、千鶴子から「死ね」と言われた言葉に対して、表情ひとつ変えずに笑顔のままで「あなたこそ死ねばいいのに、ねぇ」と返す。この母娘のやりとりはなかなか見応えがあって、私が気に入っているシーンの一つになっている。予告編にもそのシーンが盛り込まれていたが、まさか2人が実の母娘だったとは、予想もしていなかった。