評     価  

 
       
File No. 1505  
       
製作年 / 公開日   2011年 / 2011年11月12日  
       
製  作  国   アメリカ  
       
監      督   スティーヴン・ソダーバーグ  
       
上 映 時 間   106分  
       
公開時コピー   【恐怖】は、ウイルスより早く感染する。  

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最初に観たメディア  

Theater

Television

Video
 
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キ ャ ス ト   マリオン・コティヤール [as Dr.レオノーラ・オランテス]
マット・デイモン [as ミッチ・エムホフ]
ローレンス・フィッシュバーン [as エリス・チーヴァー博士]
ジュード・ロウ [as アラン・クラムウィディ]
グウィネス・パルトロー [as ベス・エムホフ]
ケイト・ウィンスレット [as Dr.エリン・ミアーズ]
ブライアン・クランストン [as ライル・ハガティ海軍少将]
サラ・レイサン [as オーブリー・チーヴァー]
チョイ・ティンヤウ [as リ・ファイ]
ジョシー・ホー [as リ・ファイの姉]
モニーク・ガブリエラ・カーネン [as ロラニー・ヴァスクエス]
ダリア・ストロコウス [as イリナ]
ジョン・ホークス [as ロジャー]
アルミン・ローデ [as ダミアン・レオポルド]
ラリー・クラーク [as デイヴ]
アナ・ジャコービー=ヘロン [as ジョリー・エムホフ]
ディミトリ・マーティン [as Dr.デヴィッド・アイゼンバーグ]
エリオット・グールド [as Dr.イアン・サスマン]
エンリコ・コラントーニ [as デニス・フレンチ]
ジム・オルトリーブ [as 葬儀管理士]
カーラ・ゼディカー [as エリザベス・ニガード]
チン・ハン [as スン・フェン]
 
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あ ら す じ    仕事で香港に出張していたベス・エムホフは、夫のミッチ・エムホフが待つミネソタの自宅へ真っ直ぐ帰らずに、シカゴで元恋人と密会していたのだ。ところがベスは咳と熱を発症しており、同じような症状の人間が香港、ロンドン、東京など各地で次々と亡くなっていた。
 その事件に疑惑を抱いたフリー・ジャーナリストのアラン・クラムウィディは、政府が伝染病を隠しているのではないかとブログで指摘する。さらに帰国から2日後にベスが死亡し、続けてベスの連れ子クラークも命を落とす。報告を受けたWHO(世界保健機構)のDr.レオノーラ・オランテスたちや、アトランタのCDC(疾病予防センター)が調査に乗り出す。
 エリス・チーヴァー博士の指示でミネソタに派遣されたDr.エリン・ミアーズは、感染が疑われる人々の隔離を実施する。カリフォルニア大学の医師が、コウモリと豚のウィルスが混ざった新種のウィルスであることを解明したが、現時点では治療法もワクチンもない。WHOはウィルスが48時間以内に世界主要都市に拡散すると宣告し、ワクチン開発に全力が注がれるものの、ウィルスは変異し恐るべき速度で感染拡大してゆく。
 折しもネットでは、米仏が治療薬を極秘に製造しているとの噂が広まったことから、中国衛生部のスン・フェンが故郷の村人のワクチンとの引き換えとして、オランテスが拉致されてしまう。任務途中で感染するミアーズ。恋人に極秘情報を漏らしてしまうチーヴァー。娘を家に閉じ込めるミッチ。それぞれが愛する者を守ろうとする中、アランは政府が有効な治療薬を隠していると主張。恐怖はウィルスよりも早く感染し、パニックを起こした人々によって、各地で暴動が勃発する。それぞれが選んだ決断は・・・・・?そして明かされるウィルスの発生地点とは・・・・・?
 
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たぴおか的コメント    それにしてもよくもこれだけの豪華キャストを集結させたものだと、まずはその大いなる無駄遣い(?)に敬意を表したい。クレジットではマリオン・コティヤールがトップになっているが、彼女自体は存在感が薄く、実質的な主役はローレンス・フィッシュバーンかマット・デイモン、あるいはジュード・ロウ辺りになるだろう。
 いまやひとつのジャンルを確立させたと言っていい、いわゆる「ウイルス感染パニック」を描いた作品で、“Contagion(=伝染)”という原題よりはは、むしろ“Pandemic(=感染症が世界的規模で同時に流行すること)”の方がふさわしい気がする。どちらかといえば致死率の高いウイルスの感染が引き起こすパニック映画という色合いよりも、ウイルスの感染と共に情報が社会に感染する様子が客観的に淡々と描写された社会派作品的な色彩が強い作品で、その辺りがソダーバーグらしいと言えるのかもしれない。
 今や情報伝達の手段として社会権を得たブログは、その情報伝達の速さという利便性を持つ反面、必ずしも正しい情報が伝わるワケではなく、流言飛語が飛び交う恐れがあり、さらには社会全体が誤った情報に“感染する”可能性もある、まさに「諸刃の剣」だと言える。だから、ジュード・ロウ扮する自称フリーの記者・クラムウィディがこの作品で果たす役割は大きい。パニック時につけ込んで、ブログにより大衆操作が簡単に行えるという、ある意味ウイルスの伝播よりも怖ろしい悪意に対する警鐘だと考えるべきだろう。
 ローレンス・フィッシュバーン扮するチーヴァー博士が、シカゴが封鎖されるという極秘情報を婚約者に伝えてしまい、そのことがマスコミで取り沙汰されるというエピソードは、実際にパニック時に起こりうる事態で、そこにもやはりクラムウィディが絡んでくるのだ。そして、彼の行動の根底にあるのは善意でないことが後に判明する。彼の発信する情報は大半が嘘で塗り固められていたのだ。ところが、パニック時には得てしてそういう人間がヒーローのように祭り上げられたりするもので、誤った情報に踊らされることがいかに危険なのか痛感させられる。
 『アイアンマン2』以来のグウィネス・パルトロー、随分老けた気がする。もっともこの作品では、はなからウイルスに感染していて健康体ではないから、そのメイクのせいでもあるのかもしれないが。マット・デイモンは随分とウエイトを増やしたために、最初観た時には彼と気づかなかったくらいだ。最初の感染者であるグウィネス演じるベスの夫役なのだが、彼はなぜかウイルスに感染しなかった、いや、感染しても発症しなかった。普通に考えれば、彼の血液から抗体を取り出せばワクチンができるんじゃないのかな?